二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: めだかボックス -奇特な存在- ( No.49 )
- 日時: 2011/04/04 13:58
- 名前: Neon ◆kaIJiHXrg2 (ID: MlJjY9/z)
「プラスとかマイナスとか、そんなのはどうでもいい。 ボクの中では、都城君が一番その真理に近かったと思うよ」
鬼無里がそう呟くとほぼ同時。 善吉は廊下を猛スピードで駆け抜けていた。 もちろん、生徒会室へ向かってまっしぐら。 庶務とはいえ、生徒会の人間が廊下を走るなどあってはならないことだが、この際そんなことを言ってなど居られない。
コン、コン。
生徒会室にノックする人影が一人。 そう、それは球磨川禊。
「今日は来客が多いな、球磨川。 もう怪我が治ったのか」
躊躇無く黒神めだかは扉を開く。 それとほぼ同時。
「めだかちゃん! そいつ偽者だ!」
善吉が廊下を駆け抜け、球磨川にドロップキックをお見舞いする! すると、どうだろう。 球磨川の体は弧を描き、見事に吹っ飛んだではないか。
ドンッ!
という鈍い音と、
「善吉ちゃん、何するんだよ」
という、括弧つけていない球磨川の声……。
「カッ! 堪忍しろ球磨川(偽)! お前は鬼無里が……」
「そんなわけ無いよ、ついさっき完治したってまぐろちゃんから教えてもらってここに来ただけだぜ? このままじゃなんか理事長の変な策略に使われるかもしれない……てさ。 酷いよ、まったく。 僕はまだ直って日が浅いのに」
まさか……騙された!?
まさか……鬼無里が嘘を? いや、それ以前に何故……鬼無里を問答無用で信じた? 信じたことが、信じられない!
「どうしちまったんだよ……」
<いや、どうもこうも、そうなったんだ。 ボクがキミから常識を引っこ抜いた>
不意に、頭の中にあの声が響く。 鬼無里……お前か!
「何だよ、こんなテレパシーまで使えるのか?」
<うん、使えるよ。 ボクは、学んで適応して応用するニンゲンだからね>
「善吉、なにをしている!」
扉が開くとともに、黒神めだかが顔を覗かせる。 もちろん、今の一連の動作は見なくとも、ある程度の状態は知ることが出来る。
「善吉、貴様一体……」
「いや、俺は鬼無里に騙されて」
「何?」
「だから、何かしらねえけど妙な能力であいつの言葉を信じ込まされたんだよ。 それこそ、めだかちゃんが喋っているかのような感じだ」
<いや、ボクの言葉はボクが発した言葉だよ。 他人の言葉と混同しないでくれるかな?>
「馬鹿な、そんなわけ——」
「五月蝿い!」
鬼無里の言葉に、まるで黒神めだかに怒鳴りつけるかのように返す。 怒鳴りつけてしまった。 そんな自己嫌悪と言う憎悪の感情が湧き上がる。
「しばらく……一人にさせてくれ。 めだかちゃん、頼む。 球磨川先輩、スイマセンでした。 それとこれ、鬼無里の持っていた本だ、確かに渡したからな。 鬼無里の奴に変な能力掛けられて渡されて無いなんていわないでくれよ」
<あれ? 何か大変なことになったみたいだね。 ごめんね、善吉ちゃん。 もう少し気の利いた嘘でからかうべきだったよ>
あいつの能力は使いようによってはいい奴だけど、使い方によっては逆に悪い奴なんだ。 今みたいに、ちょっとのからかいがここまでの誤解を招く。
それに、何でだ?
「何で俺なんだよ? 何で俺にこんなことをした?」
<何でって、それは君が好きだからだよ。 善吉ちゃん。 好きな子に意地悪をしちゃう奴の典型的タイプでさ、ボクって。 直さなきゃとは思ってるんだけど、中々——」「直そうにも直せなくてね。 まあ、ニンゲンってそんなモンでしょ? ほら、仲直りしよ」
鬼無里はどこで買ってきたのか、スポーツドリンクを学校の屋上に座り込んでいる善吉の横に置くと、自分も座り込んで自分は缶入りのミルクティーを口にした。
「走ったからね、ちゃんと水分補給はしなきゃ。 で、ボクってさ、友達が少なくてね。 今までたった一人で生きてきたからどうやって人と馴れ合えばいいのかわからないんだよ。 そうだな、唯一仲良くしてくれたのは、中学時代の安心院さんかな。 違うクラスだったけど、良くしてくれて感謝しても感謝し切れない。 同じ能力あるボクとしては、唯一同類と思えたけど、それでもボクと安心院さんは別物だった。 彼女は≠(ノットイコール)ボクはプラスとマイナスをつなぐそれとはまた別。 ゼロだった、普通だった。 それでもさ、ボク安心院さんはとても近い。 近くて離れてて、とても仲がいいけど仲良く出来なかった。 ボクと一般が近くて遠いようなものだよ。 善吉ちゃん、キミは普通なのに普通な能力を持って普通に欲視力【パラサイトシーイング】が使える。 普通とは少し違う普通。 それこそ、ボクの求めていた同類なんだ」
その頃、生徒会室には再び珍客が訪れていた。 その姿、背格好は完全に善吉の複写と言っても過言ではない。 だが、決定的にその表情は面倒くさいと言わんばかりの無表情……。
「生徒会長、黒神めだかか? 今しがた転校してきた亜鬼崎 鬼矢だ。 鬼無里 皇に会いたいんだが、今どこに居る?」