二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【Kingdomhearts】 魂の断片 ( No.2 )
- 日時: 2011/03/23 15:29
- 名前: 弓弦 (ID: SUsN38YB)
Hearts.Ⅰ 【いつもの場所 — 夕焼け —】
学校のチャイムの音が鳴り響く校庭は、半日の終わりを告げるかのようだ。
教室からたくさんの生徒がはしゃぎながら出てくる。帰宅する者が居れば部活をする者もいる。
帰宅する者の一人、【青蓮院 奏馬】は下足室で靴を履き替えていた。何処かつまらなそうな表情。
すると、背後からポンっと肩を叩かれる。ビクっと驚く奏馬はゆっくりと振り返った。
「今日も一緒に帰るよ、奏ちゃん」
ニコっと微笑む、少女。金髪で髪の長さはショート。青い瞳が奏馬を見つめている。
その少女の姿を見て、はぁーっと溜息をつき髪の毛を掻き上げた。
「驚かすなよ…優海(ユウミ)。今日もって毎日だろ…」
「そうだね、アハハ!」
バシバシと奏馬の背中を叩く、優海と呼ばれた少女。奏馬は「痛い」と小さな声で言いながらまた溜息をつく。
そんな光景に笑いながらもう一人、近寄ってきた。少年で銀髪。深い青の瞳を奏馬と優海に向ける。
「今日は何処に行くんだ?…いつもの場所か?」
「あ、陸都(リクト)!そだよ、行こう」
ニコッと微笑んで銀髪の少年、陸都の右腕に抱きつく。
「だって、どうする?奏馬」
優海の姿を見て、奏馬を見る陸都の顔は意地悪の笑みを浮かべていた。
拒否はさせないと言う表情だと読み取った奏馬。深く深く溜息。
「分かった…行けばいいんだろ?…よく飽きないよな…」
「えへへ、ありがとう。それでは、行こう!」
優海は二人の腕を持って、歩き出す。
————
誰も居ない古びた灯台。苔が生い茂り、葉っぱの蔦が灯台の壁に絡まっている。
灯台の屋上に、三人は居た。地平線の彼方を見つめる、三人。夕焼けの色に染まる海。
キラキラと宝石のように煌き、波が打ち寄せるといっそう煌きを増した。
「綺麗だね…いつ見ても」
優海の発する言葉に両脇にいた二人は頷く。
「なぁ、今日は誰がアイスを買ってくる?」
急にポツリと呟く陸都に優海はキラリと目を輝かせたが、奏馬は「っげ」と声を漏らした。
「そりゃ、もちろん…じゃんけんでしょ!」
「今日は俺と奏馬が戦うのはどう?」
元気良く、拳を上に挙げて叫ぶ優海をスルーした陸都。
「戦う」と言う言葉に驚き、額から冷や汗が滲み出た奏馬だった。
「な、何で俺が陸都と戦わなければいけないんだよ…」
「何だ…怖いのか、奏馬?俺に負けっぱなしだものな」
鼻で笑い、「仕方がないか」と付け足す。奏馬はその言葉にムっとした表情を浮かべる。
「今日こそ、勝ってやるからな!」
「そうこなくちゃな」
「ちょっと、私をスルー?!…いいもん」
ちょっぴりいじける優海だった…。
———
灯台の下に降りて、お互い距離を置く二人。優海は灯台の上から見ていた。
「奏馬、何処かに丈夫な木の棒二本、落ちてないか?」
陸都にそう言われ、後ろを振り向きキョロキョロと探し始める。
暫くしてから、丁度いい木の棒が見つかり拾う。
「有ったぞ、ほい!」
拾った木の棒をぽいっと陸都に放り投げた。それをしっかりと受け止める陸都。
「それじゃ…行くぞ…」
ニヤっと笑みを浮かべ素早く走り出してきた陸都。そして、奏馬に振りかかった。
「いきなり、ずるいぞ!」
間一髪でヒョイッと避けて、横に転がる奏馬だが相手は容赦なく襲ってくる。
その度に、ガードし続けた。攻撃が緩む事はなく、隙もない。
「如何した、奏馬?もう終わりか?」
陸都の言葉が胸に響く。一瞬だけ、心臓が高まった。
「…まだだ!」
攻撃を弾き飛ばし、奏馬は一気に叩き込んだ。ドサっと倒れる陸都。
「…あ…ごめん!」
慌てて陸都を起こし、怪我をしてないか確認。
「…いてて…強くなったな…奏馬。んじゃ、俺の奢りだ」
苦笑を浮かべ、ふらりと立ち上がるとアイスを買いに去っていった。
灯台の屋上から下まで駆け下りてきた優海は、奏馬に駆け寄る。
「やった、奏ちゃん!初めて勝ったよ」
「…うん…大丈夫かな…陸都」
唖然としつつ、嬉しさもこみ上げてくるが陸都を心配する奏馬。
それに対し、優海はニコッと微笑み奏馬を元気付けるように——
「大丈夫、奏ちゃんと違って頑丈だから」
「何それ、ヒッデー!」
二人は顔を見合わせ、アハハっと笑いあった。
Hearts.Ⅰ 【いつもの場所 — 夕焼け —】End