二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 秘蜜〜黒の誓い〜 参照200突破記念企画♪ ( No.41 )
- 日時: 2011/04/11 21:45
- 名前: 夏茱萸 (ID: wJNgr93.)
第八章〜禁断の物語〜
「見つけた。とうとう、見つけた。リアン」
そう暗い森で呟いたのは黄緑色の天使、ラグミナだった。
ラグミナはカイナと共に天界から地上へリアンを探しに来ていたのだ。
一緒に探すのは要領が悪いとのラグミナの提案で、一旦この森で二人は単独行動をはじめた。
『ラグミナ、リアンを見つけたらすぐに僕に知らせてね?』
『私、リアンすぐ見つける。絶対に、お前より先に、見つける。』
『…任務で敵対心燃やさないでよ。そしてその無感情な話し方怖いよ;』
『無感情で、悪かった』
『…えっと…ごめん、色々…』
ラグミナはカイナに宣言したとおり、単独行動をはじめてほんの数分でリアンを見つけた。
その場ですぐに声をかけようとしたが、どうにもリアンともう一人誰かがいるらしい。
(カイナ?…違う。女性の、声。人間の、声…)
リアンの小さな話し声と、それに答える女性の声が夜の森に響く。
様子を探るためにラグミナは、木の陰から二人を覗いてジッとすることにした。
暫くリアンたちの会話を聞いていたラグミナはあることに目を見開いた。
「…どうして、リアン。天使のこと、どうして、人間にバラした?」
自身が天使であることを話すリアンに、ラグミナは聞こえないようにそっと囁いた。無感情にしか話せないラグミナだったが、この時だけは悲しみの含まれた声を出していた。
女性の方はきっと、リアンが天使であるということをばらすつもりはないのだろう。彼女の様子を見て、そのようなことに鋭いラグミナはすぐに分かった。
ラグミナにとってバラされることが問題なのではなく、リアンが人間に存在を教えたということの方が重要だった。
天使たち、いや、天界に暮らす全ての者にとって、それは裏切り行為と同じものなのだ。
たとえリアンが他の者を裏切ったとしても、私やカイナを裏切ることはありえないと思っていたのに…
心で呟いた後、ラグミナは彼女が帰り、リアンも消えたのを確認して囁いた。
カイナにだけ聞こえるように、特殊な音波を出しながら。
「見つけた。とうとう、見つけた。リアン」
カイナからの返事はすぐに返ってきた。
焦りきった声が音波となり、ラグミナの耳へ届く。
「本当か!?捕まえた?これでやっとメイサさんの怒りも収まるし、リアンにも会える!待ち遠しいよ♪」
「…カイナ、すぐ、来て。森の教会の広場、鐘の下。すぐ、来い」
「どうしたんだ?」
「いいから、さっさと来い」
「はい、喜んで」
遠くにいるカイナと少しの会話を交わした後に、ラグミナは木の上にさっと飛び乗った。
足と腕を組んで、普段なんの感情も見せない顔に怒りを浮かべ、カイナを待つ。
「ラグミナ?木の上かい?」
「そう、さっさと登れ」
「珍しいな、ラグミナが怒ってるのを表に出すなんて…なにかあった?」
数分で教会に着いたカイナは、いつもと様子の違うラグミナを見て肩を竦めるフリをする。そして木の上に一気に飛び乗ると、ラグミナの隣へ腰をおろした。
「リアンが、裏切った。私たち、裏切られた」
「…どういうこと?」
「…リアンには、もう二度と、一生、会うことできない…ッ」
苦しそうに顔を歪め、頬を濡らすラグミナを見てカイナは目を見開いた。
あのラグミナが、泣いていたのだ。
数十年間一緒だったが、ラグミナが泣いたのを見た者は、カイナはおろか今まで誰一人としていない。
実際、ラグミナ自身が今日初めて涙を流したのだから。
「ラグミナ…落ち着いて、ね?」
「…リアン…ッどうしてぇ!ふぇ…ッぅあ゛ぁああ゛!!」
「…ラグミナ、大丈夫。どういう経緯なのかは分かんないけど、多分また会える。いや、絶対に会えるって!リアンに会えないんなら僕もう死ぬっ」
うまく対応できずに戸惑いながらもカイナは必死でラグミナを泣き止ませようとする。
けれどなかなか収まらなかった。
カイナはもう何も分からなくなりそうで、咄嗟にラグミナの肩を自分の方へと引き寄せた。
そしてラグミナの頭を撫でながら、幼い子をあやすように言った。
「大丈夫だよ。ほら、リアンって悪戯好きだろ?僕らを驚かせようとしているだけだって…だから、もう…泣くな…」
「…カイナは、優しい。昔からそうだ…いつも泣き虫で。…だからもう…カイナも、泣かないで」
ラグミナの肩を抱きながらカイナ自身も涙を流していた。
「…誰が、リアンを奪ったの?」
「女性。人間の、女性。緑の髪の、ツインテール。綺麗な、人」
「…そう。そうなんだ…」
「カイナ?」
「なんでもないよ」
濡れた頬を拭きながら、カイナはラグミナに微笑んでみせた。
ラグミナはそのとき、自分のことで精一杯で カイナの黒く濁った瞳に気づくことができないでいた。
仲間の裏切りを知ってしまった
ある晩の天使二人の物語。
一人の天使は 幾多の者を
傷つけてしまい
愛する人たちを
次々と悲しませていった…————