二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 秘蜜〜黒の誓い〜 ≪ボカロ曲小説化≫ ( No.42 )
- 日時: 2011/04/22 19:49
- 名前: 夏茱萸 (ID: wJNgr93.)
第九章〜禁断の花畑〜
「ミリアム、今日はどこへ行く?」
小さな部屋に響いたのは、透き通った少年の声。
名を呼ばれた女性は、少年…レオンににこりと微笑み、答える。
「レオンと一緒にいられるのなら、どこでもいいよ」
「…ありがとう、ミリアム。…じゃあ今日は僕のとっておきの場所に連れて行ってあげる」
朝早くから昇っている太陽を見ながら、レオンはミリアムの手をとった。そして軽く口付けるとフッと微笑んで見せた。
顔をほんのりと紅潮させながらも、ミリアムはレオンに言った。
「連れて行って?見てみたいな、レオンのとっておきの場所」
二人は出会ったあの後、すぐに住んでいた村を離れた。
隣村の奥、あまり深くない森の小さな小屋で暮らすのがいいと、レオンが提案したのだ。
本当に小さな小屋だったが、ふたりで住む分には何の支障もなかった。
人目にもつかず、お互い安心してここで暮らすことにした。
住み始めてから今までの一週間の間、レオンはミリアムを色々な場所へと連れて行った。
もちろん誰もいないような場所だったが、そのどれもがとても美しい場所だった。
そして今日、レオンがミリアムを連れて行こうとしている場所は、レオンにとって本当に特別で大切な場所だ。
リアンだった頃、よくカイナやラグミナとふざけていた花畑…
どうしてもミリアムにそこを見せてやりたかった。
「じゃあ、遅くなるし、出かけようか」
「そうだね。もう準備出来てるよ!」
バッグをレオンに見せながら、ミリアムはニッコリと嬉しそうに微笑んだ。
「はは、用意が早いね。ミリアム」
「早く行きたいから、ね?」
「うん、そうだね」
扉の外に人がいないか確認をした後に、ふたりは外へさっと出る。
お互いにどちらともなく手を絡め合えば、手から体温が流れ込んできて、心地よかった。
15分ほど歩いた森の先に、明るく開けた場所が見えてくる。
「ここだよ、ミリアム。僕の、大好きなところなんだ…」
「わぁ…!!すごい!綺麗だね!」
そこは一面鮮やかな花の広がった、美しい花畑だった。
本当に天使たちが戯れているような、そんな場所だ。
「綺麗でしょ?」
「うん、レオンが大切って言うの、よく分かる!」
「えへへ、ありがとう」
ミリアムの言葉と綺麗な笑顔に照れ笑いをしながら、レオンは言った。
「ねぇミリアム。僕ちょっと向こうに行って来ていい?やりたいことがあって…」
「え?いいよ、じゃあここで待ってるね!」
「ありがとう、ここを離れないでね。絶対だよ。」
「もう、心配性なんだから〜!大丈夫、レオンを待ってるから」
おどけてみせる彼女を心配した顔で見つめると、レオンはその場を後にした。
「それにしても…レオンが帰ってくるまでの間、何をしていようかしら…。…そうだ!」
嬉しそうにニッコリと微笑んだあと、ミリアムはなるべく綺麗な花を摘み取り、茎の部分を合わせていった。
5分ほどで出来上がったそれを、ミリアムは目を輝かせながら見つめた。それは色とりどりの花で出来た、可愛らしい花冠だった。
「できたー!これレオンにあげよっと!喜んでくれるかな〜♪」
…その頃、漆黒の少女に迫るは
ふたつの黒い影…
彼女が最後に見たのは
天国か…それとも
地獄か……—————