二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 秘蜜〜黒の誓い〜 ≪ボカロ曲小説化≫ ( No.45 )
日時: 2011/04/26 23:09
名前: 夏茱萸 (ID: wJNgr93.)

第十章〜禁断の怒り〜


一生懸命、大好きな人を想いながら作った花冠を、ミリアムは大事そうに抱えた。

「レオンまだかな〜。何してるんだろ…」

十分ほど経っても帰ってこないレオンを、ミリアムは花冠を自身の頭に乗せながら心配していた。

「うん、中々の出来…う〜ん、でも乗せ心地はイマイチ…」

「ミリアム!」

「レオン?遅かったね。どうしたの?」

遠くの方から走ってくる愛しい人に、笑顔を向けながら言った。

「ミリアムに、プレゼントが…あって…ッはぁ゛!」

「だ、大丈夫?」

「平気ッ!……ちょっと手を、貸してくれるかな?ミリアム…」

息を整えて真剣な面持ちで向き合うレオンに、一瞬ビクっとしたミリアムだったが、すぐにいつものように、なぁに?と笑顔で答え、手を差し出した。

「その…高級な指輪なんて、今の僕には無理だけど…せめてもの気持ち。受け取って?ミリアム…」

ふんわりと微笑みながらレオンはミリアムの指に、何かをスッと通した。

…それは、シロツメクサで出来た、小さな可愛らしい指輪だった。

「形はすごく歪だけど、ミリアムのことを思いながら頑張ったんだ。…ミリアム…結婚しよう?一生大事にしてあげるから…」

「……え?」

いきなりのレオンからの告白に、ミリアムは戸惑ってしまった。
だがすぐにレオンの言葉を理解して、顔が熱くなっていく。




———初めて会った時から好きだったんだ。嬉しくないはずがない…!




ミリアムは今までにないくらいの満面の笑みを浮かべると、モジモジしているレオンに向き合い、答えた。


「うん…!!絶対幸せにしてね!」


シロツメクサの指輪をレオンに見せながら、ミリアムは言った。
その綺麗な顔の頬には、一筋の涙が伝っていた…

「する…絶対に幸せにする!ミリアム、ありがとうっ!」

喜びの声を上げるレオンの頭に、ミリアムは先程の冠をそっと乗せた。
きょとんとしているレオンにミリアムは説明をする。

「ッへへ!待ってる間に、作ったんだぁ♪どう?」

「花、冠?すごい…上手だね!嬉しい、ありがとう!」

「ううん、レオンの方こそ…ありがとう」

笑い合いながらお互いに両手を握り合う。
来るときに伝わってきた体温より、今の方が大分熱くなっていた。


「喜んでもらえて嬉しい!僕、向こうに綺麗な花見つけたんだ。ミリアム、もう一つ作ってくるから、ここで待ってて?」

「え?私も行くよ」

「フフ、楽しみが減るでしょ?」


レオンは笑いながらミリアムに手を振り、その場を去っていった。

(また一人になってしまったわ…どうしよう?レオンったら花冠乗せたまま向こうに行っちゃったし…)


ミリアムは立ったままレオンの走っていった方向を見つめていた。
今度は何十分後に帰ってくるんだろう…そう思いながら。






*   *   *   *   *


「やっぱり、こんなの、ダメ」

そう無機質に話すのは、黄緑天使のラグミナだった。

「ダメ?今更何を言ってるんだ、ラグミナは。その女のせいでリアンや僕たちが不幸になってもいいの?リアンを堕天使…悪魔にしたような奴を、生かしていてもいいと言うのかい?」

そうラグミナの不安そうな声に答えるのは、青天使のカイナだ。

ふたりは今、レオンとミリアムのいる花畑のすぐ隣の森にいた。


天使にとって仲間の裏切りというのは絶対に見逃してはならないものだ。それがどんなに仲のいい天使でも…

けれど天界の者たちへのむやみな殺生は避けなければならないため、カイナとラグミナはメイサに報告なしで、ミリアムやリアンの処分の方を決めてしまったのだ。



…カイナはリアンのことをいつもひいきしていた。
案の定今回もそうだ。

ラグミナの許可も得ず、ミリアムだけを殺処分すると勝手に決めてしまった。

「ダメ。リアンも、罰を受けるべき。決まりは、絶対」

「でもリアンは悪いことなんてしてないじゃないか」

「…禁断の果実を、口にした。それでもまだ、悪くないと、言い切れるか?」

睨みつけてくるラグミナに、うっと言葉を詰まらせてしまうカイナ。



一方向こうでは、レオンがミリアムから離れていくところだった。

動かずに立ったままでいるミリアムを見たカイナは、目を光らせながらラグミナの方をチラリとも見ずに、懐へ手を伸ばした。



カイナが取り出したのは、美しい模様が施された、小型の拳銃だった。







—————今なら、殺せる…!!!







カイナは、銃口を彼女へと向けると、ゆっくりと引き金に指をかけた。



「!!!??ッカイナ!!ダメッ————」

「え?今、声が———」





カイナは状況の理解できていないミリアムに向けて、引き金を静かに、ゆっくりと引いた……————




————ドォォォォォォォォォオン!!!!!!

























やけに長く響いた、銃の音。

飛び散る綺麗な、赤い液体。

そして…



ゆっくりと倒れてゆく、漆黒の少女…




心臓を貫いた、怒れる裁きの矢。

すべては、ひとりの天使によって

起こされたもの…







「…リアン。これが、お前への罰だよ?…帰っておいでよ、リアン…」







「……カイ、ナ…?」












————駆けつけたときには

もう、遅かった…

悪いのは、僕なのに……—————



ミリアム…

どうして……?

起きてよ、ミリアム…


怪我してるの?

大丈夫、帰ってすぐに治してあげるからね?


…だって、約束したもんね…?


一生幸せにするって。





…嫌だよ…


早く起きて、また手を繋いで


おうちに帰ろう?


だから…


















————死なないでよ…ミリアム…






















…ひとりにしないでよぉ……—————!!!