二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 秘蜜〜黒の誓い〜 ( No.49 )
- 日時: 2011/05/19 22:45
- 名前: 夏茱萸 (ID: 2qC9xcD7)
第十一章〜禁断の再会〜
「ひとりに…ッしないで!うぅ…」
「悲しい?でもね、すべてリアンが悪いんだよ…」
ミリアムの亡骸を抱き締め、泣きじゃくるレオンに
カイナは冷たい声でそう言った。
奥に隠れていたラグミナもカイナとレオンの方へ歩いてくる。
いつもの無表情な顔で三人を見た後、静かに天界へ去って行った。
「どうして…カイナがこんなこと…ッ」
「裏切ったから。他に理由がないと、リアンは納得してくれない?」
「ッぅ…あ、そうだ…!」
暗い顔から一転して明るい表情になったレオンを、カイナは不思議そうに見つめる。
「僕は堕天使。なら、もうすぐ消えるよね…禁断の果実、実はまだ少し残してたんだ…」
レオンの考えていることを察したのだろう。
カイナは大声でレオンの肩を掴み、怒鳴った。
「この期に及んでまだ僕らを裏切るつもりか!?そんなこと絶対にさせない!」
怒鳴るカイナとは反対に、レオンは落ち着いて答えた。
「…僕ね、カイナやラグミナが大好きなんだ。確かにふたりとずっと一緒にいたいと思うし、また天使に戻れたらって思うときもある。でも、ミリアムを死なせるくらいなら、天使に戻れなくてもいい。僕は、ミリアムのことを……————」
——愛してる。
レオンはその言葉を、禁断の果実と共に口に含んだ。
「リ、アン…?」
飲み込んだ途端に、醜く歪んだ悪魔がレオンの前に現れ、微笑んだ。
『望みを叶えよう。お前の人生と引き換えに…』
「僕の願い…ミリアムを…」
「リアン!お願いだ、やめろ!」
悪魔に跪き、レオンは口を開いた。
「ミリアムを、生き返らせてください」
『いいだろう。そのかわり、お前の魂は貰ってく』
「リアン!」
「…構いません。お願いします」
レオンの顔には、迷いなんてひとつもなかった。
それを見たとき、カイナはもう終わってしまったと、地面に膝から崩れ落ちる。
悪魔がなにやら呪文のような言葉を呟いた瞬間に、
ミリアムの身体全身が美しい光に包まれた。
うなだれていたカイナも、頭を下げていたレオンも、
その光景に見とれてしまった。
「ぅう…っいてて…あれ?私、なんでこんなとこで寝てたんだろう…?」
状況を察するどころか、銃で打たれた記憶すらもなくなっていたミリアムだったが、驚いているレオンを見ると、にこっと微笑んだ。
「レオン、用事は済んだの?」
「ミリ…アムッ!生きてる…!」
「フフっ、変なの〜」
どうやらミリアムにはカイナのことが見えないらしい。
生き返って微笑んでいるミリアムに、レオンはそっと告げた。
「聞いて、ミリアム」
「なぁに?」
「僕ね、ぼく…」
——もう、消えてしまうんだ…
でも本当はいやだ、消えたくなんてないよ…
僕は、ミリアムとずっと一緒にいたいんだ…
どうして?どうして…——
「…レオン?」
不思議そうに顔を覗き込むミリアムの手をとって、レオンはにこりと笑った。
「短い間、僕に愛をくれてありがとう。さようなら、ミリアム…」
『さようなら、もうひとりの僕…』
「…リアン?どうして…」
「レオンはリアン。僕は、リアン…騙してて、ごめんね————」
レオンはリアンの姿に戻っていた。
最後はやっぱり、本当の姿でさよならをしたい…
「ミリアム。貴女に逢えたから僕は、この世で一番———」
—————幸せだったよ、ありがとう、ミリアム……—————
羽堕とした堕天使は
自らの命と引き換えに
少女を救って
「…バイバイ」
消え去ったの……—————
その場に残ったのは、一枚の漆黒の羽根と
花畑に響く、カイナの絶叫だけだった。
さようなら、ミリアム。
またいつか、どこかで逢えたら————