二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 秘蜜〜黒の誓い〜 記念短編小説執筆中☆ ( No.60 )
日時: 2011/12/04 22:31
名前: 夏茱萸 ◆2uA.rd.h2M (ID: lkF9UhzL)

参照1000記念☆小説第二弾は、ルカ姉様とがくぽにしようと思います!
前回みたいに面白くないと思いますが、楽しんでいただければ幸いです^^

今回は少し長いかも;




秘蜜〜聖夜の誓い〜
第二弾*ルカ・がくぽVer


クリスマス用のケーキが焼き上がるのを、ルミカは頬杖をついてじっと待っていた。家の中には退屈そうなルミカと気まずそうに目を泳がせているガノムの姿のみだ。

「…そういえば、リアン殿とミリアムは薪拾いに行ったのだよな。こんな季節にそれらしい薪なんてあるものなのか?」

沈黙に耐え切れずガノムが口を開くと、ルミカは一瞬だけガノムを睨み付け、そっぽを向いてしまった。

「…そんなもの知らないわよ。なくても何かしら代わりになるもん持ってくるでしょ」

相変わらず興味なさそうなルミカに苦笑すると、ガノムはあるものに気が付いた。

「ルミカ!これ、こんなに大量に薪があるではないか!何故こんなに薪が余っているのに二人を出したのだ?外は寒いのに…」

「馬鹿ね、それだからあんたはいつまでたってもミリアムをものに出来ないのよ」

「な…ッ」

からかうようなルミカの口振りにガノムは顔を真っ赤にして口をパクパクさせている。それに被せるように、今度は静かな口調でガノムに言った。

「…二人っきりにしたかったのよ、あの子たちを…雪も降って教会の近くで薪拾い。幻想的じゃない?」

「うむ、薪拾いが幻想的なのかはわからぬが、確かにいいシチュエーションかもしれぬな」

ルミカなりの気遣いか、とガノムが笑って続けると、怒ったようにルミカはガノムに怒鳴った。

「私はさっさと二人が幸せになってくれればと思ってるだけよッ!へ、変な勘違いしないで頂戴!なんで私があの子たち二人に気なんて遣わないとならないのよッたく馬鹿ガノムが!」

それを気遣いというのではと心の中で呟くが、口には出さなかった。
言い返せば自分がどんな目に合うのかわかりきっている。

オーブンからケーキ生地の焼けた香りが漂ってくると、そろそろかとルミカは鍋掴みを手にハメて焼き上がった生地を取り出した。こんがりと綺麗な焼き色のついたそれを、皿の上に火傷しないように置く。

「粗熱を取らないと…結構時間が掛かっちゃうわ」

苦笑しながらルミカが生地に布をかけていると、ガノムは席を立ち、ルミカの傍へと寄ってきた。

「あら、何か用?」

「…少し腹が減ってな、何かないか?」

「そうね、確かに少し小腹が減ったわ…夕食は二人が帰ってきてからじゃないと食べれないし…余り物だけど、お店のパンでよかったら食べていいわよ。でも食べ過ぎちゃダメよ?夕食やケーキが食べれなくなってしまうから」

早口にそう言うと、ルミカは料理の仕上げをするため再びキッチンへと入って行った。ガノムはそれを見送ると、店の方へと足を進める。

「どのパンにしようか…茄子のがいいな。…あれ?」

茄子の乗った小さめのパンを手に取ろうとして、ふと隣のパンへと目が移る。
そこには生地の上に茄子とネギの乗った、色合いのとても鮮やかなパンがあった。その隣には一つだけ、ぽつんと控えめにマグロ風味のパンとミカンやバナナの乗ったフルーツパンが置いてあった。

そしてその他には余っているパンはない。

その奇妙な光景に、ガノムは多少の違和感を覚える。

「これ…みんなの好物ばかりではないか。確かリアン殿はミカンやバナナが好きと言っていたし、ルミカはマグロでミリアムはネギ…僕は茄子…これを人物に置き換えると、随分物騒な図になりそうだが…まさか、な…」

幸せそうに寄り添うガノムとミリアムを、リアンやルミカが微笑ましそうに見つめている。そんな絵を想像したいのに、何故だかガノムには、二人が自分たちを睨んでいるようにしか見えなかった。

結局ガノムはパンを一つも食べなかった。…食べれなかったのだ。

あのようなくだらない想像で食欲が失せたのかというとそうではないが、あのパンを食べる気が失せたのかというと、頷く以外になかった。それ程にあの不自然な置き方はガノムにとってショックなものだったのだ。

(もし意図的なものだったのだとしたら、ルミカたちは僕らの結婚を…喜んでくれていないのか?リアン殿はわかるが、何故ルミカが…)

「あらガノム、少しは腹の足しになったかしら?…どうしたの、そんなに顔歪めちゃって…」

突然俯いている顔を覗かれ、ガノムはビクッと身体を震わせた。
ルミカに心配されるほど、自分の顔は歪んでいたのか…

「パンは…食べれなかったよ。ルミカ…」

「どうして?あんたの好きなパン残っていたはずよ?」

「…一つだけ、聞いてもいいか?」

いつも以上に真剣なガノムに、思わずルミカの体も強張ってしまう。

「…ルミカは、僕とミリアムの結婚を祝ってはくれぬのか?」

目を見開いてガノムを見つめるルミカに、さらに重ねてガノムは問いかける。

「くだらぬことだとはわかっているのだが…あのパンを見た時、もしかしてルミカはこの結婚に賛成してくれていないのではないかと思ったのだ。どう見てもあれは僕たちで、どういう見方をしてもあの並び方は、ルミカとリアン殿が僕たちを睨んでいる光景にしか見えぬのだよ…どうなんだ、ルミカ」

「ず、随分いい加減でくだらない妄想ねッ…私がそんな馬鹿らしいことするわけないじゃない!」

笑ってはいるがルミカがかなり動揺しているのは、普段鈍感なガノムにすらわかった。冷静さの欠片もない表情でルミカは必死に言葉を繋ぐ。

「大体!私はミリアムが幸せになってくれればそれで十分なのよ!?どうして反対なんて…ッ勘違いも甚だしいわ!」

「ルミカ!少し落ち着け!」

「ッ…とにかく、あれはたまたま偶然奇跡的に、あんな形になってしまっただけだし…そろそろ二人が帰ってくるかもしれないから、夕食の準備手伝って頂戴」

ふぅっと深呼吸を一回すると、いつものポーカーフェイスを完璧に纏ったルミカの表情が目の前にあった。



———三十分後。

「ミリアムたちはいつ帰ってくるのよ!!」

「僕に当たらないでくれ!ひ…ッ」

近くにある物を手当たり次第ガノムに投げつけるルミカ。
それを必死に避けるガノム。

食卓に美味しそうな御馳走が並んで約二十分。
そろそろ本格的に怒り始めたルミカとは対照的に冷めてゆく夕食たち。

「あぁもう!冷めちゃうじゃない!」

最後ものすごいスピードで飛んできた金属製の何かが、ガノムの額に見事にぶつかり、部屋に鈍い音が響いた。

「ッ痛!」

「避けろよ馬鹿ガノムが!」

それから五分も経たないうちに、リアンとミリアムは帰ってきた。手には二人とも小枝を持っている。遅くなってごめんなさいと俯く彼女たちを見て、二人とも怒ることが出来なかった。



その夜、ルミカの家では

賑やかな笑い声が

一晩中近所に響き渡っていた————