二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナイレ〜俺達だって恋はする〜 シチュエーション募集中! ( No.15 )
- 日時: 2011/05/01 16:38
- 名前: 琴葉 (ID: mYaacdZq)
第4話 涙
「お待たせしましたー! スポーツドリンクですよー!」
春奈の声を聞き、選手達がベンチに群がった。ダンボールいっぱいに入っていたペットボトルは瞬く間に空となった。
「ふう。間に合ってよかったね、悠里」
『冬花さんが 手伝ってくれたお陰』
有利と冬花が笑いあうのを尻目に、風丸は迷っていた。悠里の過去を聞きだすことが、悪い方に作用したりしないかどうか。
そんな迷いを見透かすかのように、守が声を掛けてきた。
「風丸」
「んぁ?」
「行ってこいよ。いっそ今聞いちまったほうが、スッキリするだろ?」
「……そう、だな」
風丸は苦笑して、ペットボトルをベンチに置いた。そして悠里のもとへ歩み寄り、「ちょっと来てくれ」と言った。
悠里は戸惑っていたが、風丸の表情を見て小さく頷き、風丸に手を引かれて歩き出した。
「悠里、教えてくれ。前の学校で何があったんだ?」
体育館裏の桜の下。ベンチに座ってすぐに風丸は悠里に尋ねた。風丸の問いに悠里は表情を曇らせたが、やがて短い文を書いた。
『始めは いじめられていた友達を庇っただけ
いじめのターゲットが私に移ってしまった それだけのこと』
「お前……前の中学でいじめを?」
悠里は小さく頷いて、次のページに長い文を書いた。
『毎日暴力も受けたし 一日体育館倉庫に閉じ込められたりもした
だけど 迷惑はかけたくなくて 誰にも相談しなかった
すると ある日 私は名簿から消された 先生もいじめをする側に巻き込んでの事だった』
風丸は息を呑んだ。名簿から消されるということは、その学校の生徒として存在できなくなるということだ。そんなことがあるとは、夢にも思わない。
「それで……お前は」
『学校には毎日行った だけど その度に担任に追い出された
「お前はこの学校の生徒じゃないから」と
そんな事が毎日続いていたからかもしれない 私の声が出なくなったのは』
メモを見ると、途中から字が歪み、滲んでいる。見ると、いつも無表情の悠里が大粒の涙をこぼしていた。
『本当は 二度と学校になんて通いたくなかった
だけど ここなら 雷門中なら 風丸君が居てくれるから 来ようと思った
風丸君が きっと支えてくれると思ったから』
そう書いた後、悠里は涙を拭った。が、涙は後から後から流れてきて止まらない。小さな肩が、震えていた。
風丸は始め、何を言おうかまよっていたが——何も言わず、悠里の頭を撫でた。
「大丈夫だ。俺が、守ってやるから。だから——もう、泣くなよ。な?」
悠里は小さく頷いた。風丸の肩にもたれ掛かって泣いている悠里の頭を、風丸は何度も何度も撫でた。
「大丈夫。大丈夫だから……」
風丸は、悠里をあやすように言い続けた。
その後に目撃されたことだった。
練習を再開しても戻らない二人を心配した守が駆けつけたとき、二人が肩を寄せ合って眠っていたのは———。
うわー、長くなりましたな。この駄文を読んで下さった皆さん、ありがとうございました!^^