二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

決意と向上 ( No.2 )
日時: 2011/04/02 18:18
名前: にょーん ◆ylmP.BhXlQ (ID: miRX51tZ)

 ゴルバットは、トレーナーに懐いている状態でレベルアップしなければ進化しない。だから進化した時は、この目を疑った。懐いているなんて、そんなわけないのだから。何度も酷い言葉をぶつけたし、無茶な命令だっていくらもした。ポケモンは言葉は喋れないものの、言葉自体は理解できるということは経験上なんとなくわかっていた。
 純粋に、驚いた。俺の育て方には、懐かれる要素などきっと全くないと思っていたのに。いや、ヒビキと何度か対戦して、こんなやり方では駄目だと思ったことは何度もある。それでもそれはごく最近のことで、しかも大して変わってはいない。力任せ以外にポケモンを強くする方法など、正直全く知らなかった。それでも、ポケモンが傷つくからと強くなるのをやめるわけにもいかなくて。結果、強くなるための方法は、俺はなにも変えることはできなかった。
 無論、ポケモン達がそれで楽になるわけがない。それなのに、懐いた、だって? ありえない。実際にこの眼で見ていなければ、きっと笑って一蹴していたに違いない。
 それでも目の前にいるクロバットは、紛れもない俺のゴルバットだったポケモンだ。嬉しいとか、そんな感情は湧いてこなかったけれど。戸惑いや面映さ、そんなものが次々とあふれ出しては消えていった。どちらにしろ強くなったのだ、文句なんてない。

「どうしたの? 早く、次のポケモン出しなよ」

 純粋に疑問符を浮かべて、こちらを見るヒビキ。コイツのバクフーンに、先程ゲンガーがやられたばかりだ。まだ、ゲンガーをボールに戻してさえいない。俺が勝負の途中にぼんやりとしていることなんて今までなかったから、どうしたのかと不思議に思っているのかもしれない。
 バクフーンは、強い。旅の初めからコイツと旅をしているせいもあってか、コイツの持つどのポケモンよりも、はるかに——ずば抜けて、というほどではないが——強かった。このバクフーンに、いったい何匹倒されてきたのだろうか。でもそんなことは、もう関係ない。
 俺は今日、クロバットでバクフーンを打ち破ってみせるのだから。

「……言われなくてもわかってるさ。ヒビキ、俺はお前に必ず勝つ」

 何度目かもわからない、そんな宣言。けれど今回だけは、負ける気などしなかった。
 俺は小さく謝罪の言葉を呟いて——ほとんど無意識だったから、これには自分も驚いた——ゲンガーを戻し、半ばねめつけるようにしてヒビキを見据えた。