二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【レイトン教授】英国紳士の書斎へようこそ (一話目前編up) ( No.2 )
日時: 2011/04/03 17:59
名前: 琴猫 ◆gLggJxEO.E (ID: Wx.cjsE7)
参照: http://incomplete.hanabie.com/index.html







「この部屋にはもう一人いるぞ」






……え?






【来訪者は誰?】(後編)








レイトンは壷の表面をなぞる手を止めた。何を言ったのだこの男は。
振り返ると、デスコールはソファの背もたれに頬杖をついて、こちらの反応を楽しむかのように微笑をたたえていた。
ゆるやかに弧を描く彼の唇から紡がれた言葉を、レイトンは苦笑しながら否定する。

「デスコール、科学者の君が幽霊の存在を認めるのかい?」
「誰が幽霊だと言った?」

彼はゆるゆると首を振り、乱雑に辞書や出土品が積み重ねられた部屋の一角を指差した。

「私が言っているのはあいつのことだ」

その瞬間、彼の指差した辺りから誰かが飛び出した。

「うわっ!?」

痩せた男だとレイトンが認識した時には、既にその男はドアめがけて走っていた。
あっと思う間もなく男がドアノブに手を伸ばしたまさにその時、脇から飛び出したデスコールが渾身の体当りで男をはじき飛ばす。
男は悲鳴を上げながら出土品の山へ激突した。派手な音を立てて壷や置物が崩れ落ちる。
長い間積もってきたのであろう埃が黄土色に立ちのぼる中、優雅な手つきで衣服の汚れをはらう科学者を見ながら、
レイトンは口をぽかんと開けてその場に突っ立っていた。
そんな彼の視線に気づいたデスコールは、口角を吊り上げてにやりと笑う。

「いかがでしたかな、教授」

レイトンは何も言い返す事ができなかった。





++++++





「……私が入ってきたとき、こいつが部屋の隅に隠れるのがちらりと見えた。この部屋には歴史的価値のある物がいくつも転がっているから、恐らく盗みに来たのだろう。
 気づいたときに締め上げてもよかったのだが、君の目の前であぶりだすのもなかなかに魅力的だったのでね」

気絶した男を放ったらかしのまま、デスコールは再びソファでゆったりとくつろいでいる。
レイトンはというと、男の傍らにしゃがみこみ、ポケットの中に銀貨や水晶が詰まっているのを見て衝撃を受けているところだった。盗まれていたら大変な損害を受けていたところだ。流れる額の汗を拭った。
ふと、後ろで衣擦れの音がしたので振り向くと、デスコールが窓に近づいて鍵をはずしている。

「デスコール?」
「私がヤードに突き出してもいいが、まぁそこは任せるとしよう」

そう呟いたかと思うと、彼は勢いよく窓を開け放った。
研究室に冷たい風が吹き込み、思わずレイトンは身震いする。

「それでは退場させてもらおう。今夜はそれなりに刺激的だった。礼を言うぞ、レイトン」

ドアからは絶対に退出しないと決めているのか、彼はすでに机に乗り、窓から出ようとしている。
しかし彼がどこから出ようが、今となっては関係無い。
レイトンは彼を引き止める言葉を探したが、急には出てこず、かわりに拳をぎゅっと握りしめた。

「礼だなんて、私のほうが——」
するとデスコールは彼の言葉をさえぎるようにいたずらっぽく微笑む。
「今度来たときには紅茶を存分にいただこう。それでいいな?」

レイトンが次の言葉を言う前に、彼はするりと消えてしまった。

慌てて窓に駆け寄り彼の姿を探したが、漆黒の世界が広がるばかりで、彼の姿はどこにもなかった。







 




                                       END



















(カッコイイ彼が書きたかった話)