二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- やがて世界は幕を下ろした(1) ( No.1 )
- 日時: 2011/04/04 15:45
- 名前: 奔 ◆8wd9B3Rw1c (ID: WPWjN3c4)
※流血、カニバリズム、タヒネタ有
「涼野が、消えた?」
「今はガゼルだっつってんだろ」
目を丸くしてきょとんとし自らの言葉に疑問符を乗せ復唱したレーゼに、諦め半分呆れ半分といった様子でバーンが釘をさした。細かいことは気にしないでよ、とあっけらかんとした笑みを浮かべたレーゼに軽い苛立ちを感じたようで、眉ねをきつくひそめてバーンが返す。
「んなことはどうでもいい。三日前からいねーんだよ、アイツ」
困惑と苛立ち、かすかな不安の込められた刺々しいバーンの声。さすがにそれにはレーゼも笑みを消して、居心地悪そうに表情を引きつらせる。
レーゼ率いるセカンドクラスのジェミニストームならまだしも、ガゼルやバーンの所属するチームはマスターランクだ。中途半端な練習は許されず、やむを得ない事情があるならまだしも、なんの練習もなしに不在したキャプテンを置いて何日間も練習を続けるわけにはいかない。ランクが上がるにつれ自由は少なくなり——とはいえ練習がない日もあり、外を出歩くなどの自由時間はそれなりにある——それにつれ、練習を無断欠席した時などの罰も大きくなる。
こう何日も練習を休まれると、昔から仲のよかったバーンや、ガゼルがキャプテンであるダイヤモンドダストのみなもさすがに心配するのだ。それでも表だって捜索などをしないのは、ガゼルは無事だということが明確に証明されているからである。
「グランも一緒に、な」
グラン——元ガイヤのキャプテン、今となってはジェネシスのキャプテンであるグラン。そのグランから、今ガゼルと一緒にどこどこにいるだとか、そういう連絡が入っている。ジェネシスだからといって贔屓されることはないが、ただグランがひどくお父様に気に入られ依怙贔屓されているのは事実だ。レーゼならあっという間に追放、ガゼルやバーンならキャプテンの座を下されるようなことをしでかしても、グランにはなんの罰も与えられない。現にそういうことは何度もあったし、そんなグランをジェネシスの連中も含め疎ましく思っている者は何人もいる。
もしかするとグランが頼み込めば、あっという間にガゼルの無断欠席の罰はなくなるかもしれない。それを承知してグランも何日間も外出しているのか——色々とバーンも思考してみたが、元より考えることより行動するタイプの彼にはそんなこと性に合わない。なんの解決にもいたらずヒントすら得られないであろうことはわかっていたが、愚痴程度にレーゼにもガゼルのことを尋ねてみようと思っていたのだ。
「……俺は、知らないけど」
やはり、なんの収穫も得られない。落胆に似た感情を抱えるバーンは、レーゼがそう答えるまでに躊躇したような間があったことには気づかなかった。