二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- やがて世界は幕を下ろした(2) ( No.2 )
- 日時: 2011/04/04 16:19
- 名前: 奔 ◆8wd9B3Rw1c (ID: WPWjN3c4)
- 参照: 後半gdgd
にちゃ、にちゃ。
ねばついたてらてらと光る赤い体液を指で弄びながら、今にも泣きだしてしまいそうな不安定な表情でグランは座っていた。胸やけの悪くなる、蒸れた生々しい鉄の臭い。悪臭と言ってしまってもかまわないそんな臭いの中で、力をなくしたようにぺたんと膝をくずして冷たい床に座り込んでいた。
真っ赤に腫れた眼とその周囲は、何十分も泣き続けたことを如実に表している。頬にこびりつく酸化して黒くなりかけた血、ジェネシスのユニフォームに散乱する赤黒い血液。座り込んだグランの目前には、のっぺりと薄く広がるねばついた血の海。その海の中に横たわるのは、すっかり血を吸い赤く変色しべたついたダイヤモンドダストのユニフォームを着こむ、あちこちに切れ込みのあるガゼルの姿。
もともと白かった彼の肌は、今や青白くなり死人のものとなってしまっている。見開かれたうつろな瞳は、無論焦点など定まっていない。顔、耳、首、腕、脚、腹、胸——ずたずたに切り裂かれた、けれどもまだ原型は留めている白と青を基調としたユニフォーム。浅い傷から深い傷、長いものや短いもの、大量に血を溢れさせるものやかすかににじませるだけのもの。それらは様々だったが、しかしどこも一部分が切り取られていた。切り取られた部分は骨こそ見えてないものの、ピンク色をした肉が露出している。
「……なんだって、」
こんなことをしちゃったんだろう。ぽつりと落とされた、グランの枯れた喉からひねり出された呟き。それと同時に、からん、と小気味いい音を立ててグランが手に握りしめていたメスが床に落下する。銀色のよく光を反射させていたはずのそれは、今はもうすっかりと錆びついてどす黒く染まっている。
ひどく冷たい、室内の空気。隅っこにロッカーがいくつか置いてあるだけの、だだっ広い殺風景な空間。主に自主練習の時に使われる、ジェネシスの者ならだれでも自由に使うことのできるこの部屋は、ジェネシスの寮の一番奥にあった。ここ数日は天気も晴天なため、全くこの部屋は使われることはなかった。いつもの練習は室内だが、自主練習の時ぐらい外でしてもいいことになっており、気分転換や自由に必殺技を使えるということもあり天気のいい日は体外みな外で練習する。
つまり最近は全く使われておらず、こんな時に誰かがここを訪れるなどあり得ないことで。グランは外出しているとジェネシスのみなは思っているから、こんな場所でグランがガゼルを殺したということなど知る者はいるはずはなくて。
なのですっかり放心しぼんやりとしていたグランがいきなりのノックでパニックに駆られたのは、当然ことだった。