二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】 紅瞳の少女 ( No.16 )
日時: 2011/04/11 17:55
名前: 姫梗 ◆CfaefuuTtY (ID: vLlTyC08)

『おオニィ、夜兎族は…ウチは、戦う為に生れてきた種族なんかなぁ…』

ウチはあの時、“お兄”にそう尋ねたんやったと思う。

『…』
『夜兎族は戦ってる。エイリアン、あるいは敵、あるいは同族同士…夜兎が、戦う為におるんやったら、ウチもいずれ…』
『………』

けど、目を閉じたまま…お兄は何も言うてくれへん。
ウチはどうしようもなく不安になって、お兄に向って——叫んだんや。

『———何か言ってぇな!お兄!!ウチ…戦うとか、そんなやなくて…っ…、平和に…笑って過ごしたいんや…ッ!』
『…………、…なぁ』
『…お兄?』
『…もう泣くな、お前の気持ちは分った』
『…』
『だから、もう泣くな』

その時初めて———本当に、生まれて初めてお兄が目を開いた。
綺麗な、瞳の色やった。それは覚えとるけど…何色かまではさっぱり覚えてへん。
けど、その目を見てウチは…本当ホンマに見とれてもうた。

そんなお兄は、少し困った顔で、せやけどほんの少し笑って、口を開いたんや。



『お前が泣かないように、俺は———————………』



何?聞こえへん…。声が——届かんよ。

なぁ、お兄。
あの時、お兄は何て言うた?
何て…ウチに伝えたんや————————?



「あ、目覚ましたネ」



と、不意に…何処からともなくそんな声が聞こえた。





ええと、この状況をどう説明しようか。
ウチは何故か冷静に、しかし何処か落ち着きの無い胸騒ぎを覚えつつそんな事を考えていた。
今、何故か、


———ごっついロープでグルグル巻にされてんねや!!


だからまず、ウチが目覚ました所から説明する。



———。


「あ、本当だ!銀さん、来てくださいよ!」
目の前が全て白に塗りつぶされたかと思ったら、ぼんやりと私の顔を覗き込む顔二つ。
『状況が、どうも読めない…』
…ウチはあの時、この場所で目を覚ました。


ここ…万事屋で。


「う…」

まずウチは、状況を知ろうと思い体を持ち上げようとするが、体の節々が悲鳴を上げたせいで上手く体を起こせなかった。
『ええと、何でウチ…こんな所におるんや!?』
と、まずソレだ。何でこんな所にいるか…全く覚えてない。
「やっと目ぇ覚ましたか…ったく、急に倒れられて吃驚し—————」

と、その時ある男がウチに話しかけてきたけど、ウチはそれどころじゃなかった。

…確かウチは“人探し”してて…
その旅の道中に、力尽きてもうたんや!!

「うわあああ“お兄”、本当堪忍や!!今すぐ探しにいくからなあああああぁぁぁぁあっ!!」

「…は?ちょ、待て待て!神楽、新八、ソイツ止めろ!」
「お前がやれヨ、天パ。人に甘えてんじゃねーぞ」
「そう言えば、和月に酢昆布2箱買ってくるよう言ってたか」
「グゥオルルアアァァァッ!!待たんかい小娘ェ!!」


—————…

と、言う訳で今に至る。
町に飛びだそうとした時、神楽にすごい剣幕で襲われて、あとは御縄。
そんな感じ、だ。

「で、銀さん。勢いで捕まえちゃいましたけど…どうするんですか?訴えられたら確実に僕等、御縄ですよ!?」
「俺も考えてねーよ。新八、とりあえずテメーアレだ…名前とか聞け!な?」
「そうアル、新八!男見せる時ヨ!」
「元はと言えば、神楽ちゃんが殴って蹴って、挙句の果てにロープで縛りあげたのが原因でしょ!?」

そして、今ウチの頭には大きなたんこぶができているのだが…
…ロープで縛られており、それをさする事すらできない状態だ。
とりあえずと、さっきの眼鏡の人にソファーに座らせてもらったけど、ウチの前のソファーに座った3人は、さっきからこの通り…ウチが完全に怒ってると勘違いしている状態だ。
そのせいか、さっきからウチに近づかず、ロープすら解いてくれない。

あ、本当に怒ってへんで?“今”は。


「や、あのさ…名前くらい言うで?それに怒ってへんし…」

と、言う訳でウチは3人に向かってそう言ってみた。
いい加減、コレも解いてほしいし…

「お、おう…。つーか、本当に怒ってねーのか?」

そしてウチがそう言うと、3人は顔を見合わせて、そして改めてウチの方に向き天パの人が直り言う。
…あ、そうか。思い出した…

「あ、ウチ…天パの兄ちゃんにぶつかって倒れたんやろ?迷惑かけて御免な。ウチも、“人探し”して疲れとっただけやねん」

そうだ、あの時、ウチは倒れた。
そんで、この————天パの人とぶつかったんや!

「ウチは“春蕾”!訳あって、人探ししてんねや。よろしゅうな」
「春蕾さん、ですか。僕は新八で、こっちが銀さんと、神楽ちゃん」

すると、眼鏡の少年は律儀に目の前に座る彼の仲間の自己紹介も含め、名を名乗った。
この人は、凄く話の通じる人な気がする。うん、そんな気がする。

「ところで、あの…本当に怒ってませんか?いや、怒ってますよね…神楽ちゃんに殴られて」
「と、いうと?」
「あの、実は神楽ちゃんは夜兎族で…凄く力が強いというか…普通あれだけ殴られたら死にますよ?」
「はぁ。…てゆうか、このロープさえ解いてくれへん?」
「へ?」


「別にいいんよ。久しぶりに《いとこ》と会えたから。…な、神楽」


と、何故かその瞬間———何故か空気が凍った。