二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【銀魂】 紅瞳の少女 一話②&③うp! ( No.25 )
日時: 2011/04/19 18:01
名前: 姫梗 ◆CfaefuuTtY (ID: vLlTyC08)




日は落ちて夜。
歌舞伎町は昼に負けず劣らず騒がしい…その光景からフイと視線をずらすのは、春蕾だった。

「また…怒ってもたなぁ」

春蕾は拗ねたようにそう囁くと、近くにあった小石を川に向かって蹴った。
コロコロポチャリと、虚しく音を立てて沈んでいく小石。

「——御兄………何処におるんや…?」

春蕾の口からこぼれたその声は、えらく弱々しく響いた。


———————、


『かぁーぐぅーらっ!』


だがその時…突然春蕾の脳裏にある記憶が廻った。




『どないしたんや?そない一人で』
『…別に何もないヨ』

雨笠をさしたまま、プイと幼い神楽は目を背けた。

…、
嗚呼、また…待ってんのか…。

『神楽、待ってんやろ?』
『………、違うネ…』
『じゃあ行こう?一緒に遊ぼうな!神威君は———』
『五月蠅い!ワタシの事は放っててヨ!』

神楽は…“神威”という言葉を聞いた瞬間———声を荒げた。
ふるふると肩を震わせながら、涙を浮かべて泣いていた。

けど、幼かった春蕾は…声を荒げられた事についてイラッとしてしまった。
———何で怒るんや?
———神楽、もう分ってるやろ?神威君は…もう、帰ってけぇへんねん…!
———ウチかて、悲しいねん…


『神楽、いい加減にしぃや!待ってても、帰ってけぇへんねん!』
『…!』

神楽はその時、驚愕して目を見開いたと同時に、怒りに顔を歪めた。

『何が…』
『はぁ?』



『春蕾に…兄貴のいる春蕾なんかに、ワタシの気持ちなんか分らないネ!』



———!!

何かがその時、私の中で湧き上がってきたのが分った。
頭の中が白く塗りつぶされ、その次に感じたのは———怒り。

『神楽っ…!絶対許さへん!!何なんや、アンタ!』

その時、ウチは思いっきり腕を振り上げた。
持っていた傘を投げ出して、神楽の頬に向かって。

殴る、つもりだった。

妙に許せなくて…神楽にそう言われた事が悔しくて。
幼い頃のウチにその理由は分らなくて、とにかく神楽をブン殴ってやりたかった。



———パシッ

だけどとの時、後方から誰かがウチの腕を掴んだ。
グンッと強い力でその腕を掴まれ、ウチは神楽を殴れなかった。

だが、気が付くと神楽は…神楽の瞳には、ハッキリと恐怖の色がうつっていた。

『あ…』

初めて、そこで気が付いた。
自分が今、とんでも無い事をしようとしていた事を。


『………春蕾、神楽…』


そしてウチがゆっくり振り上げていた腕を下げると、その腕を掴む手は外れ…
代わりに、自分たちを呼ぶ声がした。

『そう…れん…?』
『お兄…!』

それは———寂しそうに笑う、“双煉”…お兄の声だった。

お兄は私達より低く姿勢を落とし、二人の肩を優しく掴んだ。
そしてゆっくりとウチ達を抱き寄せ、お兄は神楽の涙を拭いた。

『……神楽、もう泣かなくていい』

そして一言だけ神楽にそう言うと、神楽は『ん…』と小さく頷き、自分で涙を拭った。
次に、お兄はウチの方に向き直った。
ウチは神楽を殴ろうとしたした事を怒られると思って、目をつむった。
…お兄には正直、怒られた事が無いから怖かった。

けど、お兄はウチに向かって…こう言ったんだ。

『……春蕾、俺はお前を怒る気はないよ…』
『…え…?』
『…怒る事を我慢しなくていい。



 ———本当に怒りたいときにだけ、本気で怒ればいい』



…その後、お兄に『なにそれっ』って言ったっけ。
その後神楽にもちゃんと謝って、3人で神楽の家に向かった。

幼いウチは、お兄がウチに何を伝えたかったのか…分らなかった。


だからウチは、あの時からお兄のその言いつけを…ただただ守ってた。
お兄のいう事だから…素直にその言いつけを守ってたんだ。

ずっと。




「けど…その約束、破ってもうたなぁ…」

あの日から7年後の今…お兄も神楽もいなくなって、一人取り残されたウチ。
突然…3年前にいなくなったお兄を探して、ようやく辿り着いたここで、神楽と出会った。

本当ホンマに嬉しかった筈やのに…何で怒ってもうたんやろうなぁ…』


何でだろう、本当に…。