二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 60章 タワーオブヘブン ( No.125 )
- 日時: 2011/05/11 00:56
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)
タワーオブヘブン。
この世を去ったポケモンの墓碑が立ち並ぶ、いわばポケモンの墓地だ。
この墓地は塔になっていて、頂上には鳴らすとポケモンの魂を鎮める、と言い伝えられている鐘が設置されている。
「まさかこんなにプラズマ団がいるとは思わなかったな……」
「はい。ていうかもうこれ占拠状態ですよ」
イリスとミキは、入口にいたプラズマ団をジゲンに任せ、タワーオブヘブンに忍び込むように入ったのであった。
タワーオブヘブンは1階だけでも20人以上のプラズマ団がいる。この塔は5階建て+頂上になっているので、合計100人以上のプラズマ団がいることだろう。
「流石にこれはきついかな……」
「どうしましょう?」
イリスとミキが頭を悩ませていると、プラズマ団たちの話し声が聞こえてくる。
「おい、4階の奴らに増援しなくていいのか?」
「何言ってんだ。俺たちはあいつにやられてボロボロだろうが。それに何やら他の敵も入口の奴らと戦ってるらしい」
「ケッ、ついてねえな、今日の俺たち。変なオッサンに絡まれるし、やけに強いトレーナーにボコられるし。さんざんだぜ」
「5階にいる幹部の人たちは大丈夫なのか?」
「あいつマジで半端なく強いけど、あの人にゃ勝てないだろう。何せプラズマ団幹部のトップだからな」
「それもそうか」
「そうだよ。どうせあの人にやられるのがオチさ」
その後プラズマ団たちは快活に笑うと、その辺に座り込んで本格的に駄弁りだした。
「貴重な情報をくれて感謝するよ。味方と、敵と、戦力。まさか知りたい事をここまで教えてくれるとは思わなかったな」
近くの墓石の陰に隠れていたイリスは、そう言って立ち上がる。
「な、てめえ!」
「どこから入り込んできやがった!」
入口から。
とは言わず、イリスはプラズマ団たちを無視するようにミキの手を引いて階段に向かう。
「おい、無視すんな!」
プラズマ団の1人がそう叫び、イリスは振り返る。
「だって4階まではプラズマ団全滅してるんでしょ? トレーナーは無事でも、ポケモンがいないなら僕らは止められないよ」
そう言い残して、螺旋階段を上る。プラズマ団たちは、それを見ているしか出来なかった。
「オノノクス、ドラゴンクロー」
案の定。4階でプラズマ団を蹴散らしていたのはムントだった。どうやら今のドラゴンクローで、階段の側にいるプラズマ団を倒し、4階を制圧したようだ。
「プラズマ団なんて所詮、世間から追い出された弱者の群れ。取るに足らないな」
ムントはそう呟き、階段を上る。
イリスたちは螺旋階段を上っているうちに、面倒だと思ってしまった。それもそのはず。タワーオブヘブンの螺旋階段は結構段数がある。それに螺旋しているから走りづらいのだ。
「よし、出て来いフタチマル」
そこでイリスは頭を捻り、知恵を絞り、何か良い案を思いついたようだ。
「師匠、フタチマルで何をするんですか?」
「まあ、見てれば分かるよ」
そう言ってイリスはミキを抱き抱える。正直、大人びて見えるイリスを何も知らない人が先入観を持たず客観的に見ると、年齢よりさらに幼く見えるミキを誘拐しているように見えなくもない。ちなみにミキは顔を真っ赤に染め、脳はショートしたのか、湯気が上がっている。
「フタチマル、水の誓だ。それも強力なやつ」
ショートしているミキに気付いていないらしいイリスは、フタチマルに命令する。勿論フタチマルはその命令通りに水柱を勢いよく噴出する。イリスはそれに乗って、タワーオブヘブンの2.5階(2階と3階を繋ぐ螺旋階段)から5階まで一気に飛ぶ。螺旋階段というものは、中心が基本的に存在していない。見えない柱を中心に、螺旋状に階段があるのが特徴だ。その特徴を利用し、イリスはフタチマルの水の誓で発生させた水柱の勢いに乗って5階までの道のりをショートカットする。
「——っと」
イリスはミキを抱えたまま(これはミキでは着地に失敗するかもしれないと思っての行為であり、他意も下心もない。イリスにそんなものを求める方が無理な話だ)5階の床に着地する。
「うー足が痛い……」
あたりまえだ。
「それはともかく……ムントさんはいないのか?」
5階はこの塔が上に向かうに連れて螺旋していく構造上、かなり狭いのだが、墓石が邪魔で周りの様子が分からない。
「し、師匠……」
イリスがキョロキョロしていると、手元にいるミキが搾り出したような声で声を出す。対するイリスは今まで気付かなかったかのような素振りをしている。灯台下暗しとはよく言ったものだ、ここはほぼ最上階だが。
「ああ、ごめんごめん」
ミキの言いたいことに気付いたイリスは、ミキを地面に下ろす。
「さて、それじゃあ僕らはこの辺の捜索を——」
と言いかけたところで、イリスの後ろにある墓石が吹っ飛んだ。
「え……?」
そこにいたのは、藍色の髪にプラズマ団の制服を改造した男だった。
「俺はプラズマ団7幹部が1人。インディだ」
そして、そう名乗った。
今回はタワーオブヘブンです。そしてついに最後のプラズマ団幹部が出ました。そして次回はインディとイリスが戦う!?という感じにします。何か前にも似たようなことがあった気もしますが、まあおいておきましょう。次回の更新は早めにします。では、また次回で。