二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 62章 ライトストーン・ダークストーン ( No.127 )
日時: 2011/05/13 00:59
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)

イリスとミキがタワーオブヘブンの頂上に着いた時には、外は嵐が吹いていた。強い雨が降り、猛烈な風が吹き、凄まじい雷が轟く。
そんな悪天候にも関わらず、1人の人間がポケモンの魂を鎮めると言われている鐘の前に立っていた。
Nだ。
「……来たね、イリス」
Nは後ろを向いたまま言う。暴風雨でもしっかりと聞こえる声で。
「まさか来るとは思わなかった」
「よく言うよ。僕を呼んだのは君だろ?」
「気付いていたのかい?」
「なんとなく、だけどね」
イリスがそこまで言うと、Nは振り返り、イリスと相対する。
「んん? おかしいな。インディには君だけを通すように言ったんだけど……?」
Nは本気で分からないというように首を傾げる。
「まだ半人前の弟子を敵対組織の幹部と戦わせるわけにはいかなんでね。それと、味方だと思っていた敵に止められた」
イリスは後半愚痴るように言う。
「ふうん。まあいいや。君、名前は?」
Nはミキの方を向いて言う。ミキは少し戸惑ったが、すぐに気を取り直して口を開く。
「PDOのミキです」
一応、イリスの弟子ではなくPDO隊員として名乗るミキ。
「ミキちゃんか、いい名前だね。ポケモンも美しき樹が必要だ」
「N、用件は何だ?」
Nが自己満足トークを始める前にイリスは先手を打つ。何事も先手必勝である。
「ああ、忘れてた。君に大事な事を話したいんだ、イリス」
大事な事なら忘れるな。とイリスは思ったが、黙る。人を振り見て我が振り直せ、だ。
「君はレシラムに選ばれ、英雄になる資格がある。英雄になれば、レシラムを従えて君の掲げる真実の世界が出来る。でも君は、レシラムと出会う方法を知らないよね?」
「ああ、知らない」
「本当はもっと早く言おうと思ってたんだけど、君との会話とバトルが楽しくてね。つい忘れてしまうんだ」
おい、プラズマ団の王のくせに何やってんだ。というよりお前はポケモンバトル反対派だろ。とイリスは言おうと思ったが、黙った。もうツッコミを入れる気力が失せたのだ。
「レシラムと出会うのに必要なもの。それは、覚悟だ」
「覚悟?」
イリスは間の抜けた声を出す。
「そう、覚悟。真実の世界を創りたいという覚悟さ」
「……いや、待って。まさかそんな抽象的なものでレシラムは現れるわけ? 覚悟さえあれば誰の元にでも光臨するようなものなの?」
かなりイリスは動揺している。ベクトルは違うが。
「まさか。覚悟だけでレシラムが呼べるものか」
だよねー。とイリスは思った。
「レシラムはとある石に封印されている。その封印を解くのに必要なのが、覚悟と資質だ。レシラムの場合は、自分の真実を貫くという覚悟と、真実の世界を創ることのできる資質」
ゼクロムの場合は真実が理想になる。とNは続ける。
「そしてそのとある石というのが、ライトストーン」
「ライト、ストーン……?」
「そう。ゼクロムが封印されているのは、ダークストーンという。これらの石は対になっているんだ」
「つまり、君は僕に、そのライトストーンを探せと言うのか?」
「その通りさ」
イリスの疑問に、Nは即答する。
「……てことは、僕がそのライトストーンの捜索を拒めば、レシラムは復活されないと」
「それもその通り。でも、君はレシラムを復活させなければならない。それは最終的には君の意思だが、それでも君は自分の真実を貫こうとするよ」
「……僕は、貫きたいと思うほどの真実なんてないよ。むしろ理想の未来を追っかける小さなトレーナーさ」
どこか遠くを見るような目でイリスは言う。
「謙遜するなよ。……ところで話は変わるが、この大嵐の原因を君は知っているかい?」
Nがいつも通り突拍子もないことを言う。勿論イリスは困惑するだけだ。
「嵐の原因? 詳しくは知らないけど、嵐は起きるから発生するんだ。原因はこの星自体にあると言ってもいい」
やや生真面目に返答するイリスだが、Nはそれに対し軽く笑う。
「その意見には大いに賛同するけどね。実際は違う。この嵐はれっきとした原因がある。この嵐は人為的なものだからね」
いや、違うか。とNは頭を振りながら言い直す。
「この嵐はポケモンによるものだ」
「……何だって?」
イリスは耳を疑う。こんな嵐を発生させる事のできるポケモンなんているわけがない、と思う。
「この嵐は、とあるポケモンが引き起こしているんだよ。その名もトルネロスとボルトロス。この2匹のポケモンはイッシュを飛び回って、大雨、暴風、落雷といった災害を起こすポケモンだ。ま、今まで被害に遭った人はいないけどね」
Nはそこまで言うと、イリスの方に歩んでくる。
「そろそろお喋りの時間は終わりだ。僕はこれでも忙しいからね。次ぎあう時も楽しみにしてるよ」
「…………」
目を閉じて笑っているNに対し、イリスの表情はやはり硬い。
「何回も言うけど、これだけは覚えておけ。君は英雄の運命からは逃れられない。何があっても、何をやっても」
すれ違いざまに、Nはイリスに囁く。イリスは階段を下りて行くNを、ただ見つめるだけだった。



頑張りました、ポケモンの登場なしで1話を乗り切りました。とまあ、どうでもいい僕の頑張りは置いといて、次回予告でも。次回はついにフキヨセジムです。フキヨセシティ編だけなんだか短くなるかもですが、そこは触れないでおきます。とにかく次はジム戦です。次回をお楽しみに。