二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 65章 雨天の暴風と雷 ( No.130 )
日時: 2011/05/16 17:10
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)

スワンナは大きく翼を羽ばたかせ、猛烈な風を発生させる。
「暴風はもう見切ってますよ。バチュル、暴風が迫ってきたら回避するんだ」
イリスがそう指示したすぐ後、スワンナの放つ暴風がバチュルに当たろうとしていた。
「今だ、避けろ!」
バチュルは右に飛んで避けようとする。しかし
「!? 暴風が、大きい……!」
そう。スワンナの放った暴風は、一発目よりも遥かに巨大な風だった。大きさだけでなく、スピードも威力も段違いである。それだけ大きいと、さしものバチュルも避けきれず、大きく吹き飛ばされた。
「バチュル!」
今の暴風で、バチュルはかなりのダメージを負っただろう。
「暴風は雨天時に使うと巨大化して、命中率が上がる。さらに風が大きくなるってことは、その分威力やスピードも上がるってわけ」
フウロはそう説明する。そして、それを聞いたイリスの額には雨粒ではない、水滴が浮かんでいた。
「それは、厄介だな……」
イリスはそう言うが、実際は厄介どころではない。バチュルの武器は攻撃ではなく素早さと回避率。流石にチラーミィには劣るものの、それが効かないとなると、かなりやばい状況である。
「さあ、どんどんいくよ。スワンナ、暴風!」
今度の暴風は攻撃目当てではなく、その攻撃範囲を活かして、バチュルを吹き荒れる竜巻の様な風の中に閉じ込めた。
「バチュル!」
「スワンナ、水の波動!」
そこで間髪入れず、スワンナは水の波動を放つ。
「相手が見えない……」
暴風の壁は凄まじく、まるで周りの様子が分からない。ただでさえ素早さの高いスワンナが見えないとあれば、もう攻撃の当てようがない。
「くそ、エレキボール!」
とりあえずイリスはダメ元で暴風の壁にエレキボールを放たせてみる。エレキボールは壁を突き破ったが、それ以外の手応えはない。スワンナには当たらなかったようだ。
「スワンナ、冷凍ビーム!」
スワンナはまたも風の壁から攻撃を仕掛けてくる。それも、バチュルを正確に狙って。
「……こっちからは何も見えないのに、何でそっちからの攻撃は正確に僕のバチュルを狙えるんですか?」
もっともな質問だ。こちらから相手が見えないということは、相手もこちらが見えないはずなのだ。にもかかわらず、スワンナは的確にバチュルを狙って攻撃している。
「ふふ。それは、私が風を読むことが出来るから。暴風だけじゃない風を読んで、あなたのバチュルがどこにいるのかを把握しているの」
「それは……マジですか……」
流石に何も言い返せないイリス。風を読むとか言われたら、そりゃあそうもなる。
「って言うのは冗談。本当はスワンナの鋭い目で暴風の中をよく見てもらってるだけだよ。まあ、風を読めるってのは嘘じゃないけどね」
ズルッとイリスはずっこけそうになった。
「真面目なのかなんなのか……」
茶目っ気があると言った方が良いだろう。
「さて、それじゃあお喋りはこれくらいにしてと。スワンナ、冷凍ビーム!」
「避けろバチュル!」
どこから来るか分からない冷凍ビームを、バチュルは辛うじてかわす。
「お次は水の波動!」
「かわせ!」
さらに次々と連射される水の波動も、掠ったりしつつも直撃は免れる。
「これだけの猛攻を避け続けるなんて、随分と精神が丈夫なバチュルだね」
「ええ、まあ。このバチュルはそれが取り柄ですからね」
「なら、そろそろ決めさせてもらおうかな。スワンナ、暴風!」
スワンナは、風の壁越しから暴風を放ってきた。
「! バチュル、身代わり!」
そしてイリスは、避けられないと瞬時に理解し、回避ではなく防御の身代わりを指示する。
「もう一回暴風!」
「身代わり!」
バチュルの作り出す身代わりは、スワンナの暴風の一撃で吹き飛ばされてしまう。
「身代わりは自らの体力を削る技。無限に使えるものじゃないよ。このままじゃ、いずれ体力が底を尽きて、やられるよ?」
負けを促すようにフウロは言う。確かにこのまま身代わりを使っていても、ジリ貧だ。何か対策を打たなければやられてしまうが、イリスは何も思いつかない。
「くっ、どうすれば……」
この時イリスの頭の中には、電気石の洞窟でプラズマ団と戦っていた光景が映し出されていた。
「! そうだ、あの技なら……」
そして何か閃いたらしく、勝気な顔付きになる。
「バチュル、体中の電気を溜めるんだ。この一撃で決められなければ、僕らはやられる。だから、ありったけの電気を凝縮させるんだ」
そう言われバチュルは、余力を全て使って体の芯に電気を溜める。
「何をやるかは知らないけど、真っ向勝負なら受けて立つよ。スワンナ、全力で暴風!」
そしてスワンナもまた、羽を大きく羽ばたかせ、今まで以上の暴風を発生させる。
「バチュル、スワンナが撃つと同時にやるぞ」
そう言ってイリスはスワンナを見据える。そして、スワンナが最後の羽ばたきをしたところで、口を開く。
「バチュル、雷!」
バチュルは全身の力を一気に空に解き放ち、雷雲を発生させ、スワンナに雷を落とす。雷は雨天時に使うと必中する技。風の壁による目隠しも、意味を成さない。そして雷の直撃を受けたスワンナは、タイプ相性で4倍のダメージを受けたわけで、戦闘不能となった。

「はい。これがフキヨセジム勝利の証。ジェットバッジだよ」
「ありがとうございます」
バトルが終わり、空が晴れ渡ったところで、イリスはフウロからバッジを貰った。
「そういえば、ネジ山の方にプラズマ団……でしたっけ? とかいう人たちが向かっていったんですが、あの人たちってどういう人たちなんですか?」
「プラズマ団のこと知らないんですか!?」
イリスはプラズマ団の情報のお礼を言うよりも、ツッコミの方を優先した。これが、悲しいツッコミの習性である。



フキヨセジム戦、無事終了しました。さて、特に書くこともないので、次回予告をパパッとやっちゃいます。次回はたぶんお分かりになると思いますが、ネジ山です。特に何をしようとか、そういうのは決めてませんが、その辺は何とかしますので、お楽しみに。