二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 66章 ネジ山 ( No.131 )
日時: 2011/05/16 23:56
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)

ネジ山。そこは、質の良い鉱石が取れることで評判が高い鉱山だ。その内部は鉱石を取るために山を掘り進めて洞窟を作り、上層・中層・下層・最下層の4層に分かれている。ネジ山の中央はカルデラの様に窪んでいて、そこから各層に移動できるようになっている。また、冬になり雪が降ると、窪みに雪が積もり、一面が銀世界になって鉱山から観光名所へと変貌する。

「偶然だねチェレン。君も今からネジ山を通り抜けるなんて」
「そうだね。まあ、バッジはとっくに手に入れてたけど、ポケモンを鍛えたりしてたからね」
「そんなことよりも早く行きましょうよ」
といったやり取りの後、3人はネジ山の内部へと歩を進める。
「あれ? あそこにいるのってヤーコンさんじゃない?」
イリスがネジ山に入って間もなく、前方にいる人物を指差す。そこにいたのは、確かにホドモエジムジムリーダーのヤーコンだった。
「おお! 誰かと思えばお前達だったか」
ヤーコンの方も気付いたらしく、イリス達の方を向く。
「お前達がここにいるって事は、フキヨセのジムリーダーに勝ったんだな」
「はい。辛勝でしたけど……」
イリスがやや複雑な顔で言う。
「それよりも、ヤーコンさんは何故こんなところに?」
「こんなところとは何だ。ここは俺様が売買している鉱物を採掘しているところだぞ」
「初耳ですよ、そんなの……」
イリスは尊敬と呆れが混ざったように言う。
「ネジ山はいいぞ。特に俺様のお気に入りは、この先にある……いや、実際に見たほうが良いな」
ヤーコンは途中まで言ったことを中断する。とても気になる。
「話は変わるが、最近ジムリーダーとポケモンリーグでプラズマ団について話し合いが行われたんだ」
「話し合い、ですか」
イリスとミキが食い付く。一応この2人はPDO隊員なので、そういう情報はきっちりと得ておくべきだろうと思ったからだ。
「とりあえずプラズマ団を壊滅させるには、奴らの拠点を叩くのが一番だという結論が出た」
「つまり、プラズマ団のアジトに攻め込むわけですね」
アバウトだが、確かにそれが一番だろう。そしてこの作戦(?)に影響する事柄が、味方の戦力、敵の戦力、そして地形と相手の拠点の在処だ。
「だが、肝心の奴らのアジトが一向に見つからねえ。奴ら、地面にでも潜ってるのか、全く尻尾が掴めねえのよ」
ヤーコンがやれやれといった風に溜息を吐く。似合わない。
「まあ、子供のお前らがそんなに気張ることはない。お前達は楽しくポケモンと旅をしていればいいんだ。それが子供というものだからな」
いつもの嫌味にも聞こえるが、とても良いことを言っているような気もするので不思議だ。
「それじゃあ俺様はそろそろ行く。お前達も頑張れよ」
とヤーコンは似合わない激励の言葉を残し、ネジ山から去っていった。
「……それじゃあイリス。僕は先に行くよ」
「うん、分かった。僕らはのんびりと歩いていくことにするよ」
と言うがチェレンも歩いて進んでいる。まあ、チェレンはかなり速足だから、あっと5回くらい言う間には姿が見えなくなっているのだけど。

「ミキちゃん。僕思ったんだ」
イリスはネジ山の内部をちょうど半分くらい過ぎた頃に、そう言い出した。
「何をですか?」
「PDOやプラズマ団のことだよ。僕達は今までPDOのリーダーやサブリーダーの存在を知らなかった。普通は入隊したら真っ先に教えてくれても良いようなことなのに」
「師匠、それは私たちが契約する時に『どこの支部にも属さない遊撃部隊のようなものでお願いします』と言ったからではないでしょうか」
「ん? そうだっけ?」
真面目に疑問符を浮かべるイリスに、呆れ顔のミキ。最近イリスの威厳は消失してきた。
「私、師匠が師匠である自信なくしてきました……」
「逆破門?」
イリスはやはり疑問符を浮かべる。
「まあいいや、そんなこと」
「全然よくないですよ!? 私にとっては大問題です!」
真面目で真剣に言うミキ。流石のイリスも少したじろぐ。
「あ、ああ、ごめん……とにかく話を変えるね。プラズマ団のことなんだけど。あいつら、何がしたいんだと思う?」
ここでイリスは、分かりきったことを聞く。ミキは答えるまでもないとは思うが、一応自分の師なので答える。
「ポケモンの解放でしょう? 実際そう言ってたじゃないですか?」
「そうなんだけど、ポケモンを解放してどうするんだろう? ポケモンが可哀想だからってポケモンと人間を仕分けするのは、まあ分かるけど。それでも大した意味を持つとは思えないんだ」
「? どういう意味ですか?」
「考えてもみなよ。ゲーチスは人間の心理を利用してポケモンと人間を分けようとしてるんだろうけど、それがいくら平和的であっても、反乱分子は必ず現れる。それにこの世界は広い。イッシュだけでなく、他の地方も同じく解放運動をするには、いささか時間が掛かりすぎると思うんだ」
「はあ……」
途中から何が何だか、ミキには理解出来なかった。見た目はともかく中身は大人びてるミキだが、それでもまだ10歳なのだ。
「ごめんね。こんな話聞かせちゃって。今のは忘れていいよ」
イリスは笑顔でそう言うが、その笑顔もどこかぎこちなかった。まるで、なにか大事な事を見落としてるような、何か重大なことが見えてきそうな、そんな顔だった。