二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 67章 シスターコンプレックス ( No.132 )
日時: 2011/05/17 23:18
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)

イリスとミキはネジ山を抜けると、セッカシティに到着した。
「ここがセッカシティか。確かこの街はイッシュ唯一の湿原地帯で、冬には雪が積もるんだよね」
イリスはどこか嬉しそうに言う。といっても、イリスは大体いつもこんな調子だが。
「さて、それじゃあポケモンセンターで宿を取って休むと——」
「師匠」
イリスが軽く予定を立てていると、ミキがそれを遮るようにイリスを呼ぶ。
「何、ミキちゃん?」
「セッカに来たなら、家に泊まっていきませんか?」
「家? ……ああ、そういえばミキちゃん。セッカ出身だっけ」
かなり古い設定だが、その通り。ミキはセッカシティ出身である。
「それじゃあ、そうさせてもらおうかな」
「はい!」
イリスが泊まるのが嬉しいのか、ミキはいつになく上機嫌だ。まるでイリスを幽霊屋敷に放り込んだように。

「ただいまー」
ミキの家は街の東側にあり、すぐ側には湿原が広がっていた。
「ミキ! 帰ってきたのか!」
ミキが家の扉を開けるなり、ドドドドドという轟音(?)が鳴り響き、イリスよりも2つ3つ年上くらいの少年が現れた。
「ただいま、兄さん」
どうやらミキの兄らしい。
「よく帰ってきたな。ところで父さんは?」
これも忘れがちな設定だが、ミキは父親とともにヒウンに行き、父親はそのまましばらく帰ってこないのだ。
「お父さんはPDOの任務でしばらく帰ってこないって」
「そうか。……それよりミキ、こいつは誰だ?」
ミキの兄がイリスを指差して訊ねる。
「ああ。この人は私の師匠の」
「イリスです」
と、イリスとミキの息がピッタリ合った自己紹介をするも、ミキの兄は何故か硬直している。
「……ルンダ」
「ん? 何か言った?」
「何で俺というものがありながら男をつくってるんだあぁぁぁ!」
鼓膜が破れるほどの大音量でミキ兄は叫ぶ。イリスにはあまりの音量に何を言っているのかすら分からない。
「男って。兄さん違うよ。この人は、私の師匠で——」
「おい」
ミキの言うことも聞かず、ミキ兄はイリスの胸倉を掴み上げる。
「俺はザキ。お前は?」
「イリスです。というか、さっき名乗ったような気が……」
「俺のミキをどう誑かしたかは知らんが」
「僕も知りませんよ」
「それ相応の覚悟は出来てるんだろうな?」
「どれに相応なんですか? そしてなんの覚悟ですか?」
イリスは全く状況を理解できていないらしい。まあ、無理もないが。
「そのすかした態度。気に入らねえな」
そう言いつつザキは拳を握る。
「ちょ、ちょっと兄さん! 暴力沙汰はダメだって約束したはずだよ!」
「お前は黙ってるんだ。そして俺のことはお兄ちゃんと呼べと言っただろう」
「それは666回ほど断ったはずだよ!」
666回って、多すぎるだろ。しかも不吉だし。とイリスは場違いながら思った。
「ふん。ならこうしよう。これから俺とバトルして、お前が勝てばミキをくれてやる。ただし、俺が勝てばミキに一生近づくな」
勝手にも程がある。
「兄さん、それは……」
「つっこみたい部分はたくさんありますが、まあいいでしょう。受けて立ちます」
「師匠!?」
こうして、ミキを賭けた(失礼な物言いだが)イリスとザキのバトルが始まるのであった。

ミキの兄、ザキは一言で言えばシスコンである。
ザキはPDOセッカ支部統括という地位を持つほどに有能な人間だが、妹であるミキを溺愛しているところが、唯一と言っていいほどの欠点だった。もし6番道路で仕方なく(?)とはいえイリスとミキが一緒に寝たことを知れば、暴力沙汰どころか流血沙汰になることであろう。
ミキはザキがシスコンだと分かっていて「兄さん」と呼んでいる。まあ、生まれたときからベタベタしてくる兄から悪影響を受けなかったミキの精神がそうさせているわけだが。
ちなみにイリスはザキのことを過保護程度にしか捉えていない。イリスはこういったことに疎いのだ。
なにはともあれ、イリス対ザキのポケモンバトルが、今まさに始まるのであった。
「勝負のルールを説明するぞ。ポケモンの数は4体のシングルバトルだ。先にどちらか一方のポケモンが全て戦闘不能になった時点でバトルを終了する」
「はい、分かりました」
現在地はセッカシティにある湿原の、比較的乾いている場所。ここでバトルを行うのだ。
「それじゃあミキ。審判を頼むぞ。俺に有利な判定を下しても構わない」
「サラッととんでもないこと言わないでよ……」
嘆息するミキ。だがそれでも審判役はやるようで、2人の中央辺りにある石に腰掛けて、手を上げる。
「それでは、バトル開始!」
「出て来い、モンメン!
「頼むぞ、チラーミィ!」
バトルが開始され、ザキはモンメン、イリスはチラーミィをそれぞれ繰り出す。
「先攻はくれてやる。俺からのハンデだ」
「それじゃ、ありがたくもらっておきます。チラーミィ、スイープビンタ!」
チラーミィは尻尾を硬化させ、モンメンに向かっていく。



ついにセッカシティまで来ました。今回はミキの兄、ザキが登場しました。いや、実はこういうキャラを登場させたいなと思っていたんですよ。次回はそのザキとのバトルです。お楽しみに。