二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 70章 夢 ( No.137 )
日時: 2011/05/20 22:13
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)

「ペンドラー、毒突き!」
「フタチマル、シェルブレード!」
ペンドラーの角と、フタチマルのホタチがぶつかり合う。
「ペンドラー、ハードローラー!」
ペンドラーは体を丸め、転がりながらフタチマル目掛けて突っ込んでくる。
「避けろフタチマル!」
フタチマルはそれを辛うじてかわす。
「逃がすかよ。ロッククライム!」
ペンドラーは地面を揺さぶって隆起させ、フタチマルの身動きを取れなくする。そしてそのままフタチマル目掛けて突撃する。
「フタチマル!」
フタチマルは大きく吹っ飛ばされる。
「フッ。やっぱりその程度か。それなら、ミキをお前なんかに渡すわけにはいかんな」
「……渡すとか渡さないとか、よく意味分かんないんですけど。それに、僕の旅に同行するか否かはミキちゃんが決めるべきでしょう」
「ミキはまだ子供だ。旅なんて危険かつ大事な事は、子供のうちは保護者が決めるべきだろう」
「まあ、それも一理ありますね。……フタチマル、水の誓!」
フタチマルは水柱を発生させてペンドラーに攻撃する。
「所詮は水柱。ペンドラー、ハードローラー!」
ペンドラーは回転しながら水柱を消し、フタチマルを攻撃する。
「ぐぅ、フタチマル、シェルブレード!」
「鉄壁!」
フタチマルはシェルブレードでペンドラーを攻撃するが、鉄壁で防御される。
「そして毒突きだ!」
さらにそこから毒突きでフタチマルを吹き飛ばす。
「フタチマル、ハイドロポンプ!」
フタチマルはすぐに体勢を立て直し、少し無理をして5割の力でハイドロポンプを放つ。
「ペンドラー、耐えろ!」
ペンドラーはハイドロポンプの直撃を受けたが、何とか耐え切る。
「ロッククライム!」
そしてすぐ攻撃に切り返し、フタチマルを攻撃する。
「フタチマル!」
フタチマルは瀕死ではないものの、かなりのダメージを負って、地面に倒れ伏す。
「まだだ……まだやれる……!」
イリスの思いが通じたのか、フタチマルは何とか体を起こす。
「……何でそこまでするんだ?」
ザキが真面目な顔で、イリスに問う。
「何で、とは?」
「お前らさ、出会ってまだ数ヶ月足らずってところだろ。なのに、なんでそこまで必死なんだ? 俺は旅の同行は許容しないが、流石に面会くらいはさせてやるぞ。それに、お前らもPDOなら、どこかで出会うことくらいは可能だ。なのに、何でそこまで必死になってバトルしてるんだ」
「…………」
イリスは黙り込む。
「……僕は、目標も、やりたいことも、夢もないんですよ」
「?」
「べつに不幸だとか不満だとか、そういう家庭ではないんですけど、僕はどこか自主的ではないんです」
「何の話だ?」
「ザキさんの質問の答えですよ」
イリスは少し微笑み、言葉を続ける。
「僕はこれから先どうしようとか、考えたことがなくて、今も思案中なんです。僕の幼馴染の1人にも、そういう子がいましたが、その子も目指すところを決めかけています。でも僕は、そいうのが見つからないまま、そういうのを見つけるために旅をしているんです。その途中で出会ったのがミキちゃんでした」
イリスは真剣な顔で、ザキに語りかける。
「彼女とヒウンで最初に会ったときは、特に何も感じませんでした。でも、彼女と一晩共に過ごして、僕は彼女の夢を知りました」
「夢……?」
ザキが過剰反応しそうな言葉があったが、ザキはあえて言及せず、イリスの引っ掛かる言葉を復唱する。
「ここでミキちゃんの夢を言うのは、プライバシーに関わりそうなので止めときますが、どちらにしろ彼女には夢があるんです
イリスはミキの方を向いて、またザキに視線を戻す。
「僕は弱くて、不器用で、そんなに良い奴じゃないですけど、何かを成し遂げたくて、何かを達成したくて何かに縋ろうとしている人を助けてやりたいと思いますし、そうします」
「…………」
「僕には夢はありませんけど、誰かの夢を叶える手助けくらいはしても良いと思うんです。ミキちゃんは、僕に自分の夢を教えてくれた。教えてくれたって事は、それをどうしても叶えたいという事。だったら僕は、ミキちゃんの夢を叶えて、幸せにしてやりたい。それが、僕の夢です」
「!!」
「師匠……」
「まあでも、僕の旅に同行するかどうかは、最終的にはミキちゃん自身が決めるべきだと思うけどね」
ミキちゃんの人生なんだから。とイリスは続ける。
「……なるほど、お前の言い分は分かった。俺も不本意ながらそれに共感してしまった。だが、それでもこのバトルを止める気はない」
「臨むところですよ」
イリスは勝気に言う。
「それじゃあ決めるぞ。ペンドラー、ハードローラー!」
「フタチマル、シェルブレード!」
ペンドラーは今まで以上のスピードで、回転しながらフタチマル目掛けて突撃する。フタチマルも両手にホタチを携え、ペンドラーに向かってゆく。
そして2匹のポケモンが交錯し、背中を向け合って停止する。
「……お前勝ちだよ」
ザキがぶっきらぼうにそう言った瞬間、ペンドラーは倒れた。
イリスの勝利である。



イリス対ザキ、ついに終わりました。イリスが勝ったので、ミキはこれからも旅に同行します。さて次回予告です。次回は番外編にしようかなーと考えています。それでは次回もお楽しみに。