二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 80章 覚悟 ( No.155 )
日時: 2011/05/30 21:56
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)

螺旋階段を駆け上がって塔の最上階に来たイリスは、心臓が強く鼓動するような、そんな感覚を感じた。
「N……!」
最上階は小部屋のようになっていて、その中央にはNと、電気を発している漆黒の龍がいた。
「来たね、イリス」
Nは振り返る。
「どうだい? 世界を導く英雄の下、その姿を現し共に戦うポケモンの美しい姿は」
Nはいつもよりもやや興奮気味に言う。
「君にはもう分かると思うけど、このポケモンがゼクロムさ」
Nは今もなお電気を放出しているポケモン——ゼクロムをチラリと見る。
対するイリスは、言葉が出なかった。威厳ある漆黒の体躯。溢れんばかりの力を見せつけているような電撃。そして、こちらを射抜くような赤い眼光。それらに圧倒されているのだ。
「これから僕はこのゼクロムと共にポケモンリーグに向かい、チャンピオンを超える。ポケモンを傷つけてしまうポケモンバトルはそれで最後。ポケモンだけの世界が、ついに実現するんだ!」
「!」
イリスはこの時悟った。Nの瞳の奥の、覚悟の炎を見て。Nは本気で、自分の全てを捧げてでも、夢を実現させるつもりだと。ポケモンと人間が隔絶された世界を実現させるつもりだと。
「イリス。僕たちを止めたいなら、君も英雄となり、ゼクロムと対をなすポケモン。そう、レシラムに認められてこそ、僕らは対等になれる。僕たちを阻止出来るんだ」
「…………」
Nの言葉を受け、イリスは沈黙する。
「さて、どうする? 君は英雄になるのかい?」
Nは執拗に言う。しかも、答えは分かりきってると言わんばかりの顔で。
「僕の予測なら、君はレシラムと出会うだろう。共に歩むポケモンに信じられている君は、世界を変えるための数式……その不確定要素。ポケモンとの絆を守りたいなら、ライトストーンを探し、レシラムに認められるんだ!」
Nが真剣に言うのに対し、イリスは俯いて沈黙を続けていた。そして、息を吸って、吐いて。吸って、吐いて。吸って
「分かったよ!」
叫んだ。今までに出したことのないような大声で。
「……!」
流石のNも、これには驚いたようだ。しかしイリスは言葉を続ける。
「そんなに言うなら、英雄になってやる! ライトストーンも探してやる! レシラムに認められてやる! そして、お前を止めて、人間とポケモンが共存するこの世界を、守ってやる!」
はあはあと、イリスは荒い呼吸をする。だがそれでも叫び続ける。
「お前が本気でこの世界を変えようとしてるなら、僕も本気でそれに対抗してやる! お前が覚悟を見せるなら、僕だって見せてやる! この世界は、何があっても絶対に、お前らには変えさせない!」
イリスは最後に、大きく息を吸い込んで、叫ぶ。
「人間とポケモンが共存するこの世界は、僕が守る!」
叫びきった後、イリスは荒い呼吸を繰り返し、その場にへたり込んでしまう。
「……君の覚悟、見させてもらったよ」
Nがそっと呟くと、ゼクロムが急に動き出し、飛び立つ。
「僕の夢はポケモンを人間から解放することだ。それが揺らぐことはない」
「だったら、僕の夢は人間とポケモンが共存する世界を保つことだ。永遠にね」
Nの言葉に、イリスも言い返す。
ゼクロムが横から飛来してくる。Nはすれ違い様に、そのゼクロムに飛び乗る。
「じゃあね、イリス。次ぎ会う時は、英雄になっていてくれよ」
Nはそういい残し、ゼクロムに乗って飛び去っていく。
「僕も、覚悟を決めたよ、N。君の理想を、僕の真実で打ち砕いてやるよ……!」
イリスはそっと呟いた。

龍螺旋の塔を下りると、そこにはミキ・チェレン・ベル・ハチク・アララギ(父)が既に集まっていた。
「師匠、無事ですか!?」
「さっき、凄い稲妻の音が聞こえたけど、上で何かあったの?」
「ああ、塔の頂上から激しい雷撃が轟いておったが、あれは何なのだ?」
ミキ、チェレン、アララギ(父)と、次々に質問されるイリス。
「そう一度に言われても困るよ。……とりあえず、僕は無事だよ」
「よかったぁ……」
ホッと胸を撫で下ろすミキ。
「それから、最上階での事だけど……ゼクロムが復活した」
イリスが静かに言うと、その場にいた全員(ベルを除く)が驚いた顔をした。
「伝説と呼ばれたポケモン、ゼクロムが……」
「復活したなんて……」
嘆くように言うアララギ(父)とチェレン。
「Nはゼクロムに乗って、ポケモンリーグに向かいました。チャンピオンを超えて、ポケモンを解放すると言ってました。そして、僕にライトストーンを探せとも言いました」
「らいとすとーん?」
ベルは何も分かっていないような顔で、復唱する。
「ベルには後で説明するとして、ライトストーンは、レシラムが封印されている石らしい。それを探し出して、僕もリーグに向かう。そして、Nを止める」
イリスの瞳には、覚悟の炎が灯っていた。それを見た全員は、イリスを止めようとは思わなかった。
「うむ、その意気だ」
突然、後から声が聞こえた。イリスは振り返ると、そこには
「アデクさん……」
イッシュのチャンピオン、アデクがいた。



今回はついにゼクロムが登場です。レシラムは話の流れ的に最後の方の登場となりますかね。では次回ですが、次回は古代の城でプラズマ団とバトルです。お楽しみに。