二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 87章 高度300mの危機 ( No.167 )
日時: 2011/06/02 21:49
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)

ワルビアルは地面を大きく揺り動かし、フタチマルを攻撃する。
「フタチマル、ハイドロポンプ!」
「!?」
フタチマルは、猛烈な地震を3発受けたにもかかわらず、極太の超高圧水流を放つ。いや、これはフタチマルの特性、激流によるパワーだ。
ハイドロポンプには今だ致命的な弱点がいくつかある。そのうちの1つが命中精度だ。フタチマルは加減して撃つ分にはそうでもないが、全力で撃つ場合は、命中精度が著しく下がるのだ。今までの土壇場ではなんとか当たっていたが、今回も当たるとは限らない。しかしワルビアルは地面を思い切り踏み揺らしているので、動きが完全にストップしている。なので、ハイドロポンプの絶好の的である。
「ワルビアル!」
ワルビアルは後方に大きく吹っ飛ばされる。明らかに戦闘不能だ。
「ちぃ、戻れワルビアル」
レンジは悔しそうにワルビアルをボールに戻す。
「さて、これでここの大将は討ち取った——」
ドゴォン!
イリスが満足げに言うと、突然横にある石造りの壁が崩壊し、中から3つの頭を持つ黒いドラゴンポケモンが出て来た。
「レンジ、時間稼ぎご苦労でした。もうここの調査は済んだので、撤退しますよ」
3つ首のポケモンの背に乗っていたのは、ゲーチスだった。
『ゲーチス!』
イリスと誰かの声が重なった。イリスは驚いて後を振り返ると、そこにはチェレンとミキがいた。
「ゲーチス様、すいません。奴に負けてしまいました」
「良いのです、レンジ。奴は紛いなりにも英雄なのですから」
ゲーチスは穏やかに言う。だがレンジはどこか割り切れなさそうな顔をしていた。
「ルー、リン。あなたたちも早く乗りなさい」
ゲーチスがそう言うと、柱の影から2人の人間が出て来た。ルーとリンだ。
「ゲーチスさん、すみません。こっちは英雄じゃない奴らに負けてしまいました」
ゲーチスさん、すみません。こっちは英雄じゃない奴らに負けてしまいました」
ルーとリンも頭を垂れる。
「だから良いのですよ。今回の目的は調査であって、あなた方の役割は時間稼ぎなのです。十分役目を果たしてくれました」
言うとゲーチスは、3つ首のポケモンに指示を出す。
「サザンドラ、飛び立ちなさい。我らの城へ帰るのです」
すると3つ首のポケモン——サザンドラは漆黒の6枚の羽を羽ばたかせ、飛び立とうとする。
「待て、ゲーチス!」
しかしそのサザンドラに向かっていく者がいた。イリスだ。イリスは全速力で走り、崩れた岩を駆け上り、踏み台にして、サザンドラの背に飛び乗る。
「師匠!」
そしてミキも、そのイリスの後に続いて、サザンドラに飛び乗った。
「イリス!?」
チェレンは2人の行動に驚愕している。無理もない。敵の飛行するポケモンに飛び乗るなんて、無謀もいいところだ。
チェレンは2人を引き戻そうと、サザンドラに近づくが、とき既に遅く、サザンドラは古代の城を崩すように飛び立ってしまった。
「イリス————!」
チェレンの叫びは、虚空に消えていった。

リゾートデザート上空。そこにはサザンドラの背に乗るものが7人いた。プラズマ団幹部のレド、ルー&リン、レンジ。実質プラズマ団を仕切っているゲーチス。そして、イリスとミキだ。
「まさか、こんな所まで追ってくるとは、大した執念です」
ゲーチスは本当に関心したように言う。
「お前には、まだ聞きたいことがある」
イリスはビュウビュウと吹き荒れる風の中、なんとか直立しながら言う。
「ほう。ですが、ワタクシにはあなたに話すことなどありません。それに、あなたをこのまま我らプラズマ団の城に連れて行くのは、少々気が咎める。だから、ここで倒させてもらうとしましょう」
そう言うとゲーチスは、モンスターボールを取り出す。
「出て来なさい、ガマゲロゲ」
ゲーチスは振動ポケモンのガマゲロゲを繰り出す。
「……分かった。やるよ」
そう言ってイリスもボールを取り出す。
「し、師匠……」
ミキが後ろで弱々しく声を出す。ミキは吹き荒れる風の中立つことが出来ず、へたり込んでいる。
「大丈夫だよ」
イリスはそう言うが、全然大丈夫ではない。イリスの手持ちはほぼ3体。対するゲーチスはサザンドラを含めて6体フルだろう。しかもフィールドが相手のポケモンの背中と、非常に分が悪い。しかしイリスは頭に血が上っていて、冷静な判断が出来ていない。
「それじゃあ、行くぞ。出て来い——」
とそこまで言ったところで、イリスは大波に流された。
「波乗り。ワタクシはあなたに話すことなどない。あなたと戦う理由がない。なので、戦うことをしません。しかし、攻撃をしないわけでは、ありません」
屁理屈だが、そんなことを言う間もなく、イリスは波に流される。
「ししょ——」
ミキも、イリスと共に波に流される。
ここはリゾートデザート上空、サザンドラの背の上。そんなところで、波に流されれば、どうなるか。答えは1つ。
落下する。
「あ——」
イリスとミキは、リゾートデザートの空。厳密に言えば、高度約300mの高さから、落下した。
2人は、落下した。



今回はイリスがついにレンジを倒し、プラズマ団7幹部コンプリートです。しかし喜びもつかの間、イリスとミキにとんでもない危機が! この後2人がどうなったか気になる人も多いでしょうが、次回は番外編です。お楽しみに……なれないかもですね……