二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ムントVSレンジ ( No.192 )
日時: 2011/06/12 22:01
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)

セッカの湿原。
他の地域より降水量が高いため、地面が常にぬかるんでいる。起伏が激しく、そこに雨水が溜まっていて、いわば大きな水溜りといったところである。
「こんな所か」
そんなセッカの湿原に、1人の人間がいた。
ムントである。
ムントは強いポケモンを探すためにセッカの湿原を訪れており、あらかた目ぼしいポケモンはゲットした。あらかたといっても1匹だけだが。
「それじゃあ、もうここに用は——」
ない、と言ってムントは立ち去ろうとしたが、何者かの気配を察知し振り向く。
「お前、ムントか?」
振り向いた先にいたのは、橙色の髪に改造されたプラズマ団の制服を着た男。
「俺はレンジ。プラズマ団幹部の1人だ」
「プラズマ団……」
ムントは顔をしかめる。
「世間から追放された弱者の群れであるプラズマ団が、俺に何の用だ?」
「ハッ、酷い言われ様だな。だがまあ、確かに俺たちの思想は世間とは食い違っているな。だから追放されたとか言われても、否定はできねー」
レンジは乱暴ながらも、落ち着いた口調で話し続ける。
「けど俺たちは弱くなんかないぜ。お前だって知ってんだろ?」
「…………」
ムントは口を閉じる。以前、ムントはタワーオブヘブンという場所で、レンジと同じプラズマ団幹部と戦ったことがある。勝負自体は流れてしまったが、あのまま続行していても辛勝か、負ける恐れも少なからずあった。
「インディから聞いてるぜ、お前のこと。あの冷めた野郎が珍しく熱く語ってるもんだからよ、話を聞いた時からお前と戦ってみたいと思ってたんだ」
そう言ってレンジはモンスターボールを取り出す。
「俺と勝負しようぜ。プラズマ団としてじゃなく、1人のトレーナーとしてな!」
ムントはそれを聞いて、小さく溜息を漏らす。
「まあ、捕まえたポケモンが実践でどの程度使えるかを知っておくには、ちょうどいいか」
そう言ってムントもまた、ボールを取り出す。
「ハッ、湿原の調査だとかつまんねえ任務に転がってきた大物だ。ここはバトっておかねえと損だよなぁ! 出て来い、シュバルゴ!」
レンジは至極楽しそうにポケモンを繰り出す。
「出て来い、アギルダー」
対するムントは冷めた感じでポケモンを繰り出す。
「ハッ、シュバルゴ対アギルダーか。なかなか面白いバトルになりそうだな。シュバルゴ、アイアンヘッド!」
シュバルゴは頭を突き出してアギルダーに突撃する。
「避けろアギルダー」
アギルダーはヒラリとアイアンヘッドをかわす。
「撒菱」
そしてシュバルゴの足(?)元——を中心とした広範囲に何かを撒き散らす。
「撒菱か、ちょこざいなことしてくれるぜ。シュバルゴ、切り裂く!」
シュバルゴは意外なスピードでアギルダーに接近し、手と一体化した槍のようなものの先端で斬りかかる。
「かわせ」
しかしアギルダーの素早さの方が数段速く、簡単にかわされる。
「アギルダー、撒菱」
そしてまた撒菱を撒く。
「補助技で下地作りってか。気に入らねえ戦い方だな。ラスターカノン!」
今度は両槍の先端の間に光を集め、それ発射する。
「避けろ」
だがそれも簡単に回避される。
「撒菱だ」
さらにアギルダーは湿原に撒菱を撒く。これでこの湿原はトラップの巣窟のようになった。
「シュバルゴ、メガホーン!」
シュバルゴは槍に全体重を乗せ、それをアギルダーに突き刺す。
「アギルダー」
ムントがそう言うと、アギルダーはその高速で突き出される突きを回避しようとする。
しかし回避は不完全で、ギリギリのところで避けきれずに掠めてしまう。
「ハッ、ようやく当たったぜ。そんじゃ次は——」
レンジがようやく攻撃を当てて調子付いてきたところで、シュバルゴに異変が起きる。
「!? シュバルゴ!?」
シュバルゴはボールへと戻ってしまったのだ。
「これは一体……?」
「レッドカードだ」
ムントは静かに口を開く。
「レッドカード。攻撃を当てた敵を、強制的退場させる道具だ」
ムントがそこまで説明すると、レンジの腰にあるボールが独りでに開き、ポケモンが飛び出す。
「ローブシン……」
出て来たのは筋骨ポケモンのローブシンだ。見るからに厳つい体格をしている。
「ハッ、なかなか味な真似してくれるじゃねえか。これは、結構燃えてきたぜ」
良い意味でヒートアップするレンジ。正直暑苦しい、とムントは思った。
「ローブシン、なし崩し!」
ローブシンは決して速いとは言えない動きで、アギルダーに攻撃を仕掛ける。
「避けろアギルダー」
シュバルゴでも捉えることの出来ないアギルダーが、ローブシンに攻撃を受けるはずもなく、あっさりとかわされてしまう。
「アシッドボム」
さらにアギルダーは酸性の毒素が含まれた爆弾をローブシンに投擲する。
「また下地作りかよ。さっさと決めるが吉か……マッハパンチ!」
今度のローブシンの動きはかなり速く、あっと言う間にアギルダーに接近して、拳を構える。しかし
「アギルダー、虫のさざめき」
アギルダーはいつの間にかローブシンの背後にいて、強力な振動波で攻撃する。
「速い、速すぎる……いくらアギルダーといえど、ここまで速い固体など——」
「特性、軽業」
レンジの呟きを遮り、ムントが口を開く。
「俺のアギルダーの特性は軽業だ。道具を失った今、アギルダーの素早さは倍速だ」