二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ムントVSレンジ 2 ( No.193 )
日時: 2011/06/12 23:43
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)

特性、軽業。
これは道具を持っていたポケモンが道具を失うと、そのポケモンの素早さが2倍になるという特性だ。素早さが2倍になるというのはかなりの脅威だが、この特性は『道具を持っていたポケモン』が『道具を失う』ことでしか発生しないので、なかなか使い辛い。だが最近はジュエルと呼ばれる使い捨ての攻撃力増強道具が発見されたり、敵の攻撃を受けると発動し、なくなる道具も開発されているので、結構需要が出て来た特性である。
「ただ、アギルダーの特性は潤いボディ、又は粘着。軽業なんて特性は元より存在しないはず。もしあるとすれば……」
レンジはブツブツと呟きながら考え込んでしまう。さっきまでの活き活きとした表情はどこかへ行ってしまったようだ。
「夢特性……それ以外考えられないな。ハッ、俺の調査も無駄じゃなかったってことか」
喜べば良いのか落胆すれば良いのか分からないようにレンジは苦笑する。
「ま、今はそんなゴチャゴチャしたこと考えるより、バトルを楽しむ方が優先順位は圧倒的に上だな」
気持ちを切り替えたレンジは、バトルに集中する。
「ローブシン、ストーンエッジ!」
ローブシンは鋭く尖った岩を無数に発射する。
「アギルダー、虫のさざめき」
だがアギルダーには通用せず、虫のさざめきによる空気の振動で全て砕け散った。
「だったら、マッハパンチ!」
ローブシンは高速でアギルダーに接近、そのまま拳を振り抜く。
「アシッドボム」
しかし拳を振り抜く前にアギルダーは、酸性の毒素を含んだ爆弾をローブシンの顔面に命中させ、軌道を逸らす。
「虫のさざめき」
さらに虫のさざめきのコンボ。アシッドボムの追加効果で特防が下がっているローブシンにはかなり効くだろう。
「アームハンマー!」
だがローブシンは思いのほかタフで、アギルダーのコンボ攻撃を耐えつつ体勢を立て直し、その拳をアギルダーに叩きつける。
「避けろ、アギルダー」
やや焦り気味にムントは指示を出す。アギルダーも攻撃後すぐのことだったため、完全に避けることは出来なかった。
「浅いか。まあいい。ローブシン、なし崩し」
ローブシンはコンクリート柱を振り回してアギルダーに攻撃を仕掛けるが、勿論かわされる。
「アギルダー、ギガドレイン」
さらにアギルダーはローブシンの攻撃後の隙を狙ってギガドレインを放つ。ギガドレインは攻撃と同時に回復も出来る技なので、それでさっきのアームハンマー(掠り)のダメージを回復する。
「虫のさざめき」
そして虫のさざめきによる振動を起こし、ローブシンを内側から攻撃する。
「ローブシン、ストーンエッジ!」
だがローブシンも負けておらず、振動が治まるとすぐさま尖った岩を放つ。
「かわせ、アギルダー」
しかしアギルダーはそれを、まるで忍者のような身のこなしでかわしていく。
「一発でいいからまともに入れば、勝てるんだけどなぁ……」
レンジがぼやく。だが実際その通りで、アギルダーは素早さに特化しているが防御面は絶望的なほど低い。対するローブシンは攻撃が高く、耐久力もあるが鈍い。
しかしこの場合はアギルダーの方が有利である。何故ならローブシンは相手の攻撃を耐える。アギルダーは敵の攻撃を避ける。耐えるのであればいつかは耐え切れなくなるが、避ける場合はそうではない。確かに避けるのにもスタミナが必要だが、どっちが先に切れるかと言えば耐久型が先にやられるだろう。
なのでこれは、ローブシンが一発でもアギルダーにまともな一撃を入れられればローブシンの勝利。そうならずにローブシンがアギルダーの攻撃に耐え切れなくなればアギルダーの勝利である。
この戦いは五分五分ではなく、アギルダー対ローブシンの勝率は7分3分といったところである。
「ローブシン、マッハパンチ!」
「アギルダー、アシッドボム」
ローブシンはアギルダーに急接近して拳を叩き込もうとするが、やはりアシッドボムで軌道をずらされる。
「アームハンマー!」
「虫のさざめき」
続けざまに放つアームハンマーも、虫のさざめきによって中断。
「アギルダー、アシッドボム」
「アームハンマー!」
今度はアギルダーの放ったアシッドボムを、ローブシンがアームハンマーで潰した。
しかしローブシンの顔はかなり疲弊しているように見える。それもそのはず、最初の撒菱攻撃から始まり、アギルダーの攻撃をしこたま食らっているのだから、いつ倒れてもおかしくない。
「虫のさざめき」
だがアギルダーはそんなローブシンを倒すべく攻撃をしているのだ。
「ローブシン、ストーンエッジ!」
ここでローブシンは奇抜な行動に出る。ローブシンのストーンエッジは虫のさざめきによる空気振動で砕けてしまう。しかし虫タイプのアギルダーには効果抜群なので連用は出来る。だがそれは虫のさざめきでブロックされる。なのであまり使わなかったが、ローブシンはここで虫のさざめきを発動した後にストーンエッジを放ったのだ。
勿論ストーンエッジは砕け散り、振動はローブシンを襲う。
「マッハパンチ!」
しかしローブシンは振動を突っ切り、アギルダーに亜音速の拳を叩き込む。
「アームハンマー!」
さらにアギルダーの脳天にも拳を叩き込み、アギルダーを沈める。
「……戻れ、アギルダー」
ムントはアギルダーを戻す。元々アギルダーは下地作りのための先発だ。なので役目は十分に果たしてくれたと言えよう。
「戻れ、ローブシン」
そしてレンジもまた、ローブシンを戻す。さきほど虫のさざめきによる振動を突っ切ったところでほぼ体力は限界を超えた。その後は意地で攻撃を通したが、流石にもう戦えないようだ。
「さあて、面白くなってきやがった!」
「…………」
熱く燃えるレンジとは対照的に、ムントは静かに敵を見据える。