二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 88章 バトルサブウェイ ( No.196 )
日時: 2011/06/14 17:20
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)

ここは名も無き駅。
今はもう廃れているが、それでも利用するものは多からずいるので、ここに止まる電車も存在する。
そんな電車——と言っても地下鉄なのだが、この辺は地盤が沈下しているため普通の電車扱いである——の1つが、その駅に止まっている。
駅のホームは珍しく人がたくさんいた。ざっと十数人くらいだ。
「今日は人がいっぱい」
「そうですね。こんなことは滅多にないのですが、何かあったのでしょうか?」
「それを、ギギギアルたちが見て来てくれてる」
「そうでしたね。もうすぐ戻ってくる頃でしょうか」
電車の内部にいる2人の人間が、乗客の出入りの間に話をしている。見たところ車掌か何かのようだ。
1人は黒を基調とした服を着ていて、丁寧な口調で喋っている。
1人は白を基調とした服を着ていて、やや幼い口調で喋っている。
「おや? どうやら戻ってきたようですね」
黒い服の男は車窓を覗き、こちらに向かって来る歯車のようなポケモンを見て言う。
「ではそろそろ……えー、間もなくバトルサブウェイ・ノーマルトレイン、カナワタウン行きの電車が出発します」
男は手に持つ拡声器で発車の旨を伝える。
「ねえ、あれ」
白い服の男は黒い服の男の裾を引っ張り、こちらに向かって来るギギギアルを指差す。
「どうしましたか?」
それに対し黒い服の男は、言う事を言い終えてから振り向き、目を丸くする。
「これは……」
そこには2体のギギギアルが傍まで来ていた。だがそれだけではなく、そのギギギアルは驚くものを連れていた。
「誰だろう?」
白い服の男が言う。
ギギギアルが連れていたのは、どちらもビショビショに濡れた、青い服に帽子を被った少年と、年端もいかぬピンク色の髪の少女だった。

「ん……」
イリスは何かに揺れてる状態で、目を覚ました。
「うぅ……」
上体を起こして頭を抑える。軽い頭痛に見舞われたのだ。
「ここは……?」
イリスは周りを見回す。
そこは色合いが地味な直方体の部屋で、部屋の前後に扉がある。天井には輪状になっている革に吊り下がった輪。それが等間隔に吊り下がっている。部屋の両端にはふかふかのソファのようなものもある(イリスは今までこれに寝ていた)。そのソファの傍には窓もあるが、真っ暗で何も見えない。そしてこの部屋は何故だか揺れている。
「何なんだよ、この奇妙な部屋……」
イリスは軽く寒気を覚えるが、それは見たこと無い不気味な部屋に対する恐怖だけではなかった。
「ん?……濡れてる」
そう、イリスの体は濡れていた。今は乾きつつあるが、それでもまだ湿っている。
「えっと……確か僕はゲーチスのガマゲロゲにやられて……その後どうなったんだっけ?」
起きたばかりで働かない頭を使い、思い出そうとする。
だがその矢先、誰かが部屋の中に入ってくる。
「おや? 目が覚めましたか」
「良かった」
イリスは声がした方向に目を向ける。そこには黒い服を着た男と、白い服を着た男が立っていた。
「えっと、あなたたちは……?」
イリスは恐る恐る訊ねてみる。
「私はノボリ。このバトルサブウェイの車掌にしてサブウェイマスターに御座います。そしてこちらが」
そう言って黒服の男——ノボリが隣の白服の男の方を見遣る。
「僕、クダリ。ノボリと同じサブウェイマスター。よろしく」
白服の男、クダリはそう名乗る。
「僕はイリスです。えっと……」
イリスは今だ混乱している。何故自分はこんな場所にいるのか。バトルサブウェイとは何か。ミキはどこにいるのか。そんなことが瞬時に頭をよぎる。
「とりあえずは落ち着きましょう。あなた様のご友人と思われる少女は無事です。落ち着いたら、私たちのことやバトルサブウェイ、あなた方についてもお話します」
ノボリは焦り気味のイリスを宥め、話し始める。

「つまり、バトルサブウェイっていうのは地下鉄を舞台としたポケモンバトルをするための施設、ということですね」
イリスは落ち着き、ミキとも合流するとノボリの話を聞く。
「はい。バトル以外にも人々の運搬にも使用されます」
ノボリは至極丁寧な口調で言う。ちなみにクダリの方はソファで寝ている。
「それで、僕らは何故ここに?」
イリスは一番の疑問をノボリに投げ掛ける。
「それは、私たちがとある駅に停車した時のことです」
そう言ってノボリは語り始める。

「この方達は、一体……?」
「ビショビショ」
ノボリが驚く中、クダリは抑揚なく言葉を発する。
「ギギギアル、どこでこの方達を見つけたのですか?」
ノボリはギギギアルに訊ねる。
ギギギアルは歯車を微妙に加速させたり減速させたりするだけで、何も言わない。というか、これ自体がギギギアルの会話法である。
「浜辺で見つけたんだって」
クダリが言う。どうやらギギギアルの言うことが分かるようだ。
「ふむ。確かこの辺りの海は潮の流れが速く、一度その流れに乗れば浜辺まで自動的に運ばれます。そしてその流れの発信源は、リゾートデザート周辺の海」
「つまり、この子たちはリゾートデザートから来たの?」
ノボリの推理に、クダリが訊ねる。
「恐らくは。あの周辺の海に落ちるなんて、まず無いでしょうが、全く無いとは言い切れませんからね。だとすると、塩水を飲んでいる恐れがあります。早く処置をしましょう」
するとノボリは2人を車輌の1つに寝かせ、適切な処置を施す

これが、サブウェイマスター、ノボリとクダリとの出会いだった。

やっと本編来ました。今回はバトルサブウェイです。イリスとミキはリゾートデザートに落ちたのではなく、その周辺の海に落ちたんです。だから助かったのです。というわけで、次回はサブウェイマスターとバトル!という感じにしようと思います。では、お楽しみに。