二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 93章 終点間近 ( No.208 )
日時: 2011/06/18 00:42
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)

デンチュラが激しい電撃を纏い突進してくる中、バチュルはじっとその場に佇むだけだった。
「デンチュラ、ワイルドボルト!」
そしてデンチュラがバチュルの体に衝突する刹那。
「バチュル、エレキネット」
バチュルは電気を帯びた網を発射する。その網はデンチュラに直撃し、体に纏わり付きはしたが、そのまま突き破られてしまう。
「これで抵抗する術は尽きましたか。とどめです、デンチュラ」
デンチュラのワイルドボルトがバチュルを捉える——ことはなかった。
「!? 後ろ……!?」
いつの間にかバチュルはデンチュラの背に乗り、その体に口を近づけている。
「このバチュルの取得は身代わりだったんですけど、それも忘れてしまいましてね。だから鍛えるついでに思い出させようとして、失敗しました」
イリスは頼まれてもいないのに、説明を始める。
「だけど代わりに、不完全ですが相手の虚を突いて攻撃をかわすことが出来るようになりましてね。言うなれば『セルフ身代わり』と言ったところですか」
つまりバチュルは、多少使い勝手が悪くなった身代わりを、技としてではなく技術として使えるようになったのだ。
「…………」
その驚愕の事実には、さしものノボリも黙るしかなかった。それほどに信じ難いことなのだ。
「さて、それじゃあもう決めるとするか。そろそろ頃合だしね」
イリスがそう言ってノボリのデンチュラと、それに乗っかっているバチュルを見遣る。ノボリもそれにつられて目線を移動させ、目を見開く。
「デンチュラ……」
デンチュラの体が、見るからに衰弱している。パッと見ただけでも分かるほどに衰えているのだ。
「バチュル、ですか」
「ええ、バチュルです」
瞬時にノボリは理解した。バチュルは電気を食べて生きるポケモン。それは家のコンセントだったり、空気中の電子だったり、ポケモンが帯びている微弱な電気だったりする。デンチュラもバチュルの進化系なのでそうやって生きているが、そのせいでバチュルに電気を根こそぎ持っていかれたのだ。もしデンチュラが体内で電気を発生させることが出来たならば、しばらくはもつだろう。しかし他のものから電気を摂取するということは、それだけ体内に溜めている電気が少ないということ。なのでノボリがそれに気付く前に、バチュルはデンチュラの電気を吸い尽くしてしまったのだ。
「とどめだバチュル、切り裂く攻撃!」
バチュルはあえて電気技を使わずにとどめを刺す。その辺りは抜け目が無い。
「……戻ってください、デンチュラ」
ノボリは静かにデンチュラをボールに戻す。
「いやはや驚きました。まさかイリス様がここまで成長しているとは、鍛えている側としては嬉しい誤算です。ですが私の3体目のポケモンはそう簡単には倒せませんよ」
「そうですかね。僕の残りポケモンはまだ3体フルにいます。バチュルとチラーミィは疲労していますが、それでもこちらの方が有利」
「まあ、見ればお分かりになりますよ。さあ、行きなさい。オノノクス!」
ノボリの最後のポケモンは、顎斧ポケモンのオノノクスだった。
「オノノクスか……いかにも強敵って感じだな。バチュル、エレキネット」
バチュルは電気を帯びた網を発射する。
この程度の攻撃、オノノクスなら簡単に対処するするだろうとイリスは考えていたが、実際はそうではなかった。
「当たった……?」
バチュルの放つエレキネットは、オノノクスに絡みつき、電気を流して動きを鈍らせる。
「単に素早さが低いだけか……? バチュル、エレキボール」
今度はバチュルに電撃の球を放たせる。雷球はオノノクスに向かって一直線に飛んでいき、またもヒットする。
「やっぱり鈍いだけか……バチュル、切り裂くだ」
オノノクスは単に鈍いだけと判断を下したイリスは、バチュルを突っ込ませる。その時だった。
「オノノクス、ドラゴンクローです」
オノノクスは両手の爪に龍の力を込め、バチュルを切り裂いた。
「バチュル!」
バチュルは吹っ飛ばされ、目を回している。戦闘不能だ。
「戻れ、バチュル」
イリスは悔しそうな顔で、バチュルをボールに戻す。
「浅はかだった……仮にもサブウェイマスター。そのエース級のポケモンがただ鈍いだけなわけなかった……!」
そう呟いてイリスはオノノクスを見遣る。その姿は何にも動じない、威厳と威圧感がある。その身も何の攻撃も受けていないような風だった。
「私のオノノクスの鱗は通常の固体の3倍は硬いのです。なので並大抵の攻撃は通用しませんよ」
「だったら……出て来い、デスマス!」
イリスはここで、最も防御に秀でたデスマスを繰り出す。
「デスマス、怪しい風!」
デスマスは妖気を含んだ風を発生させ、オノノクスを攻撃する。
「オノノクス、剣の舞いです」
しかしオノノクスは全く動じず、剣のように鋭く舞い、自らの攻撃力を高める。
「くっ……シャドーボール!」
「ドラゴンクローです」
オノノクスは向かい来る黒球2つを切り裂き、デスマスに接近する。
「鬼火——」
「アイアンテール」
イリスが技の指示を出すよりも速く、オノノクスの尻尾はデスマスを捉えていた。
デスマスは吹っ飛ばされ、それを見下すのは巨大なオノノクス。
「さて、バトルサブウェイノーマルシングルトレイン、間もなく終点に御座います。お忘れ物の無いよう、お気をつけくださいませ」



イリスVSノボリは、次くらいで決着になると思います。次回はそれだけでなく、もう1つバトルが追加されると思いますので、どちらともお楽しみに。