二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 106章 秘儀 技いなし ( No.246 )
日時: 2011/07/01 21:17
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)
参照: http://pokegai.jp/

「ズルズキン、諸刃の頭突きだ!」
ムーランドの攻撃力、耐久力は確かに脅威だが、それでもただボケッと突っ立っているわけにはいかないので、ズルズキンは頭を突き出し、猛烈な勢いで突撃する。
「ムーランド、波乗り!」
ムーランドは最初の時のように大波を発生させ、ズルズキンを迎撃しようとする。
「ズルズキン、止まれ!防御だ!」
ズルズキンはムーランドが波乗りをするや否や諸刃の頭突きを中止し、その場で防御の体勢を取る。
お陰でズルズキンは波に飲まれて体勢を崩さずに済んだ。まあ、波で後退はしたが。
「もう一度諸刃の頭突き!」
そしてズルズキンは再度諸刃の頭突きを繰り出す。
「ムーランド、岩砕き!」
対しムーランドは焦った風もなく、諸刃の頭突きに岩砕きをぶつける。しかし流石に諸刃の頭突きの威力は相殺し切れなかったのか、後ろに少し後退する。
「ズルズキン、一気に畳み掛けるよ!飛び膝蹴り!」
ズルズキンは後退したムーランドに追い討ちをかけるように、その顔面に飛び膝蹴りを打ち込む。
「決まった!」
「いや、まだだよ」
イリスの言葉を、ベルが否定する。ムーランドを見ると、飛び膝蹴りが今だ顔面にめり込んでいるが、重心がが全くぶれていない。
「ムーランド、噛み砕く!」
そしてムーランドは顔面から膝がどけられた瞬間に、ズルズキンの胴体にかぶりつく。
「ズルズキン!」
効果は4分の1なのに、その威力は文字通り桁違いだった。防御も高いズルズキンの顔は、苦痛に歪んでいる。
「引き剥がせ、炎のパンチ!」
流石にまずいと思ったズルズキンは、ムーランドの頬を炎を纏った拳で殴りつける。
「剥がれない……!」
しかしムーランドの表情は全く変わらず、ズルズキンを噛み続ける。
「ムーランドは極寒の雪山でも活動できるくらい丈夫な毛皮を持っているんだよ。そして寒さに強ければ、熱にも強い。だからムーランドに炎のパンチは効かないよ」
ベルは自分のポケモンの手の内を晒すほど余裕だ。
「だったら、飛び膝蹴り!」
ズルズキンは最初に噛み砕くを脱出した時のように、ムーランドの顎に膝蹴りを食らわせ、ムーランドの強靭な顎から解放される。
「ムーランド、波乗り!」
ムーランドはズルズキンを解放してしまったが、それでも猛攻は続く。大波を発生させ、ズルズキンを飲み込んだ。
「耐えろ、ズルズキン……!」
波が引くと、後ろに後退したもののズルズキンは立っていた。
しかし

「決めるよムーランド。ギガインパクト!」

イリスの最も恐れていた事が起こった。
通常、トレーナーがポケモンに技を覚えさせる際、そのポケモンと同じタイプの技を1つは覚えさせる。これはタイプが同じ技を使うと、その技の威力が上昇ずるという、全ポケモン共通の性質があるからだ。
さしあたってイリスは、ムーランドの最後の技が何かをいくつか予想していた。
その中の最も最悪で、最も恐怖するのが、ギガインパクト。
ギガインパクトはノーマルタイプの物理技で、自爆と大爆発を除けば最強の技だ。そしてベルのムーランドは恐るべき攻撃力を備えている。
イリスは以前、ムーランドの進化前であるハーデリアのギガインパクトを、ミジュマルのホタチでいなすという離れ業を行った事があるが、あれはミジュマルのホタチあっての技だし、そもそも今突撃してくるムーランドのギガインパクトの攻撃力は、いなせるほど低くはない。
だが、イリスは、腹を括る。
「ズルズキン、ムーランドの動きをよく見るんだ。攻撃が当たる直前に、受け流せ」
ズルズキンではまず不可能なことを、イリスは言う。しかしズルズキンは、静かに頷いた。
そうこうしているうちに、ムーランドがズルズキンに迫ってきた。
「今だズルズキン!」
イリスが叫ぶと同時に、ムーランドの巨体はズルズキンに接触していた。
ズルズキンは両手でムーランドの突撃を止める素振りを見せ、すぐさま斜め前に出していた前足を軸としてその場で半回転する。
この間は、コンマ1秒にも満たない。
ムーランドはズルズキンを完全に捉えられず、近くの木に激突。その木をへし折って停止する。
ギガインパクトは相手に当てなければ反動がないが、この場合はズルズキンが最小のダメージに抑えただけなので、反動がある。
そして勿論、イリスはその反動で出来た隙を逃さない。
「ズルズキン、諸刃の頭突き!」
ズルズキンはすぐさまムーランドの方を向き、頭を突き出して突撃する。勿論ムーランドは反動で動けないため、直撃する。
「炎のパンチで打ち上げろ!」
さらにズルズキンは軽くしゃがみ、ムーランドの腹の部分——比較的毛皮の薄い部分に炎のパンチを叩き込み、60kg以上あるムーランドを上空に打ち上げる。
「とどめだ。飛び膝蹴り!」
最後にズルズキンは飛び上がり、ムーランドの顔面に思い切りその膝を叩き込み、そのまま地面へと蹴り飛ばす(蹴り下ろす?)。
地面に落下したムーランドを見ると、完全に目を回している。
「ムーランド……ありがとう……」
ベルは戦闘不能となったムーランドをボールに戻し、次のボールを出す。
「何度も言うけど、やっぱりイリスは強いよ。でも、あたしだってまだ切り札が残ってる」
ベルは今までイリスが見てきた中で、最も真剣な顔つきになる。
「さあ、出て来て、エンブオー!」



結局、御三家対決は次の章となってしまいました。いやでも、一応前のあとがきで『期待しない程度に〜』と付けていますから。……どう考えても屁理屈ですよね。まあ、切り替えて。ついにムーランドを倒し、エンブオーを出させました。そして次回こそ、御三家同士のバトルを行いますので、お楽しみに。