二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 109章 未来と過去を繋ぐ街 ( No.253 )
- 日時: 2011/07/02 16:05
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)
- 参照: http://pokegai.jp/
「…………」
バトル終了後。ベルは倒れたエンブオーをボールに戻すも、俯いて黙り込んでいる。
「ベル……?」
イリスは少し心配になって呼びかけるが、それは杞憂だった。
「うん。イリス、バトルしてくれてありがとう!」
バッと顔を上げて、満面の笑みでそう言った。
「え……?ああ、うん……」
あまりにも突然だったので、イリスは少々面食らう。
「すっごく楽しかったよ、イリスとのバトル。あたしのポケモンも、イリスのポケモンも楽しそうだった」
そう言うベルの顔も、楽しそうに笑っていた。
「あたし、まだ自分が何をやりたいかとか決まってないんだけど、何をやるにせよポケモンに詳しくないといけないと思ってバトルしたんだけど、そんなこと関係なかったよ。ただただ、楽しかった。でも、何か掴めた気がするんだ。あたしにとっての、何かを」
そこまで言うとベルはハッとして、慌てたような素振りを見せる。
「あ、えっと……ごめんね。本当はイリスをリラックスさせようと思ったんだけど、変な事言っちゃって……。こんな時に何か格好良い事言えたら良いんだけど……えーっと、お互い頑張ろうね!」
ベルはほぼ一方的に言い終えると、シリンダーブリッジとは逆方向に駆け出して行った。
「……ありがとう、ベル」
そしてイリスは、ベルが居なくなるのを見て、そう呟くのだった。
「本当に鉄道が通ってるよ……」
イリスはベルと別れた後、当初の目的地であるソウリュウシティに向かうべく、シリンダーブリッジを渡っていた。
イリスは鉄道なんぞに興味は無いが、バトルサブウェイで鍛えてもらったサブウェイマスター、ノボリがえらく熱弁していたので、少しちゃんと見ておこうと思ったのだ。
しかし、そんな気持ちもすぐに台無しになる。
ヒュン
風の吹くような音とともにイリスの前に現れたのは、3つの影——ダークトリニィだった。
「っ!?」
イリスはあまりにも突然だったので、目を開いて驚き、後ろに少し後退する。
「……何の用だよ、ダークトリニィ」
しかしそこは流石イリス。すぐに平静を保ち、ダークトリニィを睨みつける。
「我々はお前に危害を加えるつもりは無い、イリスよ。ただし、付いて来てもらうぞ」
そう言うや否や、ダークトリニィのうち2人がイリスの腕を1本ずつ掴み、もう1人が先頭に立って走り始める。
イリスは、それに無抵抗で付いて行くしかなかった。
「ゲーチス様、連れて参りました」
程無くして、ダークトリニィは足を止めた。そこはシリンダーブリッジの終わりに近い所だったが、そんな事は今はどうでも良い。
イリスの目の前には、実質的にプラズマ団を牛耳っている男、ゲーチスがいた。長く薄い緑色の髪に、右目には赤いサングラスのような物を付けている。目玉模様があしらわれた服装は、イリスからすればえらく趣味が悪い。
「ご苦労でした、ダークトリニィ」
ゲーチスは特に感情を込めず、ダークトリニィにそう言う。そしてダークトリニィはと言うと、いつの間にかゲーチスの後ろで待機していた。
「まずは、おめでとうございます。めでたくあなたはライトストーンを手にしました」
イリスは顔をしかめる。こちらの情報を相手が知っているのだ。これほど気持ちの悪いものはない。
「ですがワタクシは、あなたがストーンを持っていても、伝説のポケモンに認められ、英雄になれるとは到底思えません。確かにあなたのトレーナーとしての実力、心構えは大した物ですが、それでも英雄かどうかと問われれば——」
「そんなくだらない戯言を言いに来たのか?あんたはイッシュの各地で演説してるらしいけど、だとすればとんだ暇人でスカスカのスケジュールを持ってんのな」
イリスはゲーチスの言葉を遮り、罵る。イリスが本心から他人を罵倒するのはかなり珍しい。
「それに、僕は英雄じゃなくても構わない。僕はNと戦って証明したいだけだ。ポケモンと人間は共生すべき存在だってね。そうすることが、英雄の役目である世界を救うことに繋がるだけだろ?」
つまりイリスは、世界を救うことが目的ではなく、Nに自分の真実を知らしめる事が目的なのだ。そうすれば結果的に世界を救えるわけなんだが。
「ほう……そうですか。まあ、愛しのポケモンと別れたくなければ、精々頑張る事です……」
ゲーチスは言うべき事を言い終えると、ダークトリニィとともに去っていった。
シリンダーブリッジを抜け、9番道路を通過すると、そこはソウリュウシティだった。
ソウリュウシティは発展と歴史が共存する街と言われる。その理由は、街の半分が近代——いや未来的な構造で、とにかく便利さを追求しているから。
そして街のもう半分は、昔ながらの石造りの住居に歩道、さらには文化やしきたりなんかも今だ残っている。
対極である2つの文化が混じり合うことなく、それでいて反発する事もなく、互いが互いを尊重しあう街、それがソウリュウシティだ。
「アデクさん!」
イリスはそんなソウリュウシティに入るや否や、チャンピオンアデクを発見、声を掛ける。
「イリスか……。ちょうど良いな、いや、タイミングが悪いのか?」
「? どういう事ですか?」
「あれだ」
そう言ってアデクは、未来都市のような街並みの中にある、少し大きな広場を見る。
そこには大勢の人だかりができていて、何かをやっているようだ。
「! あいつは……!」
イリスはその広場の真ん中を陣取っている人物。ゲーチスを強く睨み付けるのだった。
なんとかソウリュウシティまでこぎつけました。ちなみにご存知だとは思いますが、ゲームでのソウリュウシティはカセットごとに街並みが変化しますが、本作品では一緒くたにしました。ではでは次回予告を。次回はついにソウリュウジム戦!お楽しみに!