二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 129章 猫の手 ( No.289 )
日時: 2011/07/11 00:37
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)
参照: http://pokegai.jp/

「僕の次のポケモンはこれだよ。出て来い、レパルダス!」
チェレンが繰り出したのは、スマートな体型に紫色の毛並み。豹のような模様のある、猫型の女性的なポケモン、レパルダスだ。
「レパルダス、切り裂く攻撃!」
レパルダスは一気にデンチュラに接近すると、その鋭い爪で切り裂く。
「速いな……デンチュラ、シザークロス!」
デンチュラはカウンター気味に爪を交差させて斬り掛かるが、レパルダスはバク宙でそれをかわす。
「身のこなしも、敏捷性も俊敏性も凄いな。このポケモンも、ケンホロウみたいに素早さ重視のポケモンみたいだな」
イリスはレパルダスの動きを見て分かった事を、独り呟く。
「レパルダス、シャドーボール!」
レパルダスは黒い影で作った球体を、デンチュラに向けて発射する。そのスピードはかなり速い。
「エレキボールで相殺だ!」
デンチュラも電撃を圧縮した球体を発射し、シャドーボールにぶつけて相殺する。
「ワイルドボルト!」
そしてデンチュラは激しい電撃をその身に纏い、物凄い勢いでレパルダスに突っ込む。
「レパルダス、辻斬り!」
対するレパルダスもデンチュラに向かって突っ込むが、レパルダスはデンチュラが突撃している時の僅かな隙を見つけ、通り間際に鋭い爪で切り裂く。
「くっ、デンチュラ、大丈夫か?」
辻斬りは相手の急所を狙う技。今ので急所を切り裂かれたデンチュラは結構なダメージを負ったが、まだやれるようだ。
「あのレパルダスは飛び抜けて攻撃が高いわけじゃない。脅威になるのは素早さ。でも、素早さならデンチュラだって負けない。デンチュラ、エレキボール!」
デンチュラは電撃を圧縮した球を、レパルダスに発射する。
「レパルダス、切り裂け」
レパルダスは襲い掛かる雷球を爪で切り裂き、デンチュラに急接近する。そして

「レパルダス、猫の手!」

突如レパルダスの手が光る。するとそこから、光線状の念波が発射される。
「サイケ光線……!?」
デンチュラはサイケ光線と思しき攻撃を受け、後ろに後ずさる。幸い当たりが浅く、大したダメージではない。
「猫の手。君は1度この技を見ているはずだよ、イリス」
チェレンがそう言い、イリスは過去を遡って記憶を探る。今までいろんな事がありすぎてなかなか掘り出せなかったが、思い出した。
「サンヨウジム……」
そう、チェレンは1度、レパルダスがチョロネコの時に猫の手を使っている。それもサンヨウジム戦という公式の場で。
「猫の手は自分の手持ちポケモンが覚えている技を1つ、ランダムに使用できる技。あの時は手持ちが少なかったから、十分に活かす事の出来ない技だったけど、今の僕の手持ちは6体フル。これなら様々な技を発動できる」
ポケモンバトルというのは、技1つで戦況が大きく変わる。ポケモンは普通、技を4つまでしか覚えられないので、トレーナーはどの技を覚えさせるのかを慎重に選ぶ。そしてこの猫の手は、ムラはあるものの、多彩な技を使う事が出来るので、バトルの展開を大きく広げる事が出来る技なのだ。
「どんどん行くよ。レパルダス、猫の手!」
レパルダスの手が光る。すると今度は、そこから無数の風の刃が飛び出す。
「エアカッターか!デンチュラ、避けろ!」
デンチュラは襲い掛かるエアカッターを避ける。猫の手は他のポケモンの技を使うので、精度はいくらか落ちる。そこがせめてもの救いだ。
「猫の手!」
レパルダスの手が光り、そこから重低音が響き、衝撃波が放たれる。
「何故肉球から音が出るのかは知らないけど、デンチュラ、耐えろ!」
音となるともう目に見えないので、避ける事は難しい。なのでデンチュラは体に電気を纏い、衝撃波を耐える。
「……デンチュラ、反撃だ。シザークロス!」
デンチュラは跳び上がり、空中で爪を交差させてレパルダスに斬り掛かる。
「猫の手だ!」
レパルダスの手が光る。しかし今度は何も起きなかった。イリスは少々戸惑うが、デンチュラはそのまま両爪を振り下ろす。
ガィン!
しかし、デンチュラの攻撃は、まるで鋼にでもなったかの如く、防がれる。
「今度は鉄壁か……狙ってやってんじゃねえの?」
正直そう言いたくなるようなタイミングの良さだった。
「レパルダス、猫の手!」
レパルダスはまたも猫の手を使う。レパルダスの手が光り、その後また光りだす。いや、光を吸収している。
「デンチュラ、よく分からないけど今がチャンスだ。シザークロス!」
デンチュラは爪を交差させ、レパルダスに特攻する。そしてその爪を振り下ろすその瞬間
「発射」
デンチュラはレパルダスの手から放たれた光線に吹っ飛ばされる。
「!?」
イリスは驚いて振り返る。そこは砂煙がもうもうと舞い上がっていて、デンチュラの姿は見えない。
「ソーラービーム。まだ君は、僕のポケモンを全て見てはいない。だから、この技には気がつかなかったようだね」
チェレンは言う。今のソーラービームの直撃を受けたデンチュラは、効果いまひとつといえど、かなり際どいところだろう。

しかし、イリスの目は勝利を確信したようだった。

「デンチュラ、ワイルドボルト!」
突如、砂煙から電撃の塊とでも表現すべき何かが飛び出し、レパルダスに激突する。レパルダスは盛大に電撃と突撃を喰らい、吹っ飛ばされ、戦闘不能となった。
「な……!?」
チェレンはさっきのイリスのような顔になる。違うところと言えば、その表情が続いている事。
「ソーラービームは確かに効いたけど、シザークロスだって効いただろ?」
一瞬わけが分からなかったが、瞬時にチェレンは理解する。つまり、ソーラービームが当たる直前、デンチュラのシザークロスもヒットしていたのだ。そうでもないと、いくらレパルダスとはいえデンチュラがワイルドボルトの一発で戦闘不能にするなんて真似は出来ない。
しかし、デンチュラもまた、ワイルドボルトの反動で倒れる。
「……これで、サシの勝負だね」
「……そうだね」
イリスの言葉に、チェレンは溜息を吐きながら返す。
「どうしたのチェレン? もしかしてこの状況は計算外だった?」
イリスはおちょくるようにチェレンにそう言うが、チェレンは首を横に振り、口を開く。

「いや、むしろ計算通りに事が運びすぎていて、逆に怖いや」

「え?」
イリスが間の抜けた感じに口を開いていると、チェレンはレパルダスをボールに戻し、最後のポケモンを繰り出す。
「僕の最後のポケモンは草タイプのジャローダ。君の残りポケモンは水タイプのダイケンキだろ? だったら、この勝負は僕が貰った」
チェレンは、勝ち誇ったようにそう言うのであった。



本編がちょっと長くなってしまいましたので、あとがきは短めで。では早くも次回予告。次回はイリスVSチェレン、決着かもです。お楽しみに。