二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 131章 2つの風 ( No.291 )
日時: 2011/07/12 16:05
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)
参照: http://pokegai.jp/

ブリザードのような吹雪は5分以上続いていた。ジャローダは持ち前の防御力で耐えているようだが、肝心のトレーナーは寒さで参りかけている。
「面倒だな……」
チェレンは呟くが、大した意味は込められていない。口癖みたいなものだ。
とその時、ダイケンキの放っていた猛吹雪が収まる。ジャローダはとぐろを巻いていた体を伸ばす。結構ダメージを受けたようだが、戦闘不能とまではいかなかったようだ。
そしてダイケンキ。ダイケンキは足が崩れ、その場に蹲ってしまう。先ほどの吹雪で気力をほとんど使ってしまったのだろう。
「ふっ、大方吹雪を長時間放って、ジャローダを倒そうとという魂胆だったんだろうが、僕のジャローダはそれくらいじゃ倒せないよ」
チェレンは勝気にそう言うが、寒さで体が震えていた。
「これで決めてくれる。ジャローダ、叩きつける!」
ジャローダは跳び上がり、ダイケンキの頭上まで来ると、大きく尻尾を振るってダイケンキの体に叩きつける——

事は出来なかった。

「な……ジャローダ、どうした!?」
チェレンは声を荒げる。そしてジャローダは荒い息を繰り返していた。
「君のジャローダ攻撃、防御、素早さ、その3つにおいては優れているかもしれないけど、その分体力がない。だからスタミナが切れないように速攻で決めに掛かったんだ。そして今そのジャローダは、長時間吹雪を受けたことで、体力はほとんど削られている。さらに体の表面も薄く凍っているだろうしね。そしてなにより、ジャローダは太陽の光を浴びないと行動が出来ない。普段なら太陽のエネルギーを体内で増幅して蓄積する事が出来るんだろうけど、そのエネルギーも吹雪で削り取った」
つまりイリスの目的は、ジャローダの体力——スタミナを削って、動けなくさせる事。吹雪はその手段だ。
「行くよダイケンキ、シェルブレード!」
ダイケンキは頭の角と前足に仕込まれているアシガタナに水のエネルギーを纏わせ、ジャローダに特攻する。
「……ソーラービーム!」
ジャローダはそれに対し、太陽の光を吸収し、それを光線状にして発射しようとする。
だがソーラービームには溜めがあるため、ジャローダはシェルブレードで切り裂かれる。しかしそこですかさず溜まったエネルギーを太陽光線として発射する。
「ダイケンキ、避けろ!」
ダイケンキは慌てて後ろに下がる。太陽光線はほとんど地面に向けて発射したため、直撃はしなかった。だが地面に当たって散った光線がダイケンキの体を掠める。
「ジャローダ、グラスミキサー!」
ジャローダは尻尾を高速で回転させ、木の葉の渦を作る。そしてその木枯らしのような渦を、ダイケンキに向けて放つ。
「ダイケンキ、吹雪!」
それに対してダイケンキは猛烈な吹雪を発生させ、グラスミキサーにぶつける。
吹雪と木枯らしがぶつかり合い、せめぎ合う。2つの風の威力は互角だが、しだいに木枯らしが押していく。
ジャローダの特性、深緑だ。ピンチになると草タイプの技の威力が上がる特性で、今だ体力を消耗し続けているジャローダのグラスミキサーの威力は、徐々に上昇していく。
そして吹雪が押し切られる一歩手前で、吹雪はなんとか留まる。だが、それでも直突っ切られるだろう。
と、その時
「ダイケンキ!」
イリスは叫んだ。たった1つの言葉を叫んだだけだが、それだけでダイケンキの体に力が漲ってくる。そしてダイケンキもイリスのように大きく叫ぶ。すると、今にも押し切られそうだった吹雪が、どんどん木枯らしを押し戻していく。
「な、く……ジャローダ!」
ジャローダも負けまいと必死に力を振り絞るが、結局木枯らしは吹雪に押し切られ、ジャローダは凍らされて吹き飛ばされる。
「…………」
チェレンは絶句する。しかしすぐに我に返り、口を開く。
「君の勝ちだ、イリス」



「チェレン、ベル。君らはこれからどうするんだ?」
チェレンとのバトルを終えたイリスは、まず最初にそれを聞く。
「決まってるだろ。ポケモンリーグに行くんだ。僕は今まで旅して、本当の強さを知った。けれど、チャンピオンになるという夢を捨てたわけじゃない」
「あたしも行くよ、バッジも8つ手に入れたし」
と、いう事らしい。4人でポケモンリーグに行くなんて前代未聞だろうが、まあ、そこは単に行き先が同じだったの一言で済ませてしまえるから良いだろう。
「着きました。バッジチェックゲートです」
ミキのその言葉を聞き、イリスは目の前の巨大な門を見据える。
「……ここを通るのか」
イリスはそう呟くが、返答なんて気にしていない。
4人はバッジケースを取り出し、その巨大な門を潜る。
何もないシンプルな第一門。鬱蒼と草が茂る第二門。虫の形の巨大階段を上り下る第三門。電気弾ける橋を通る第四門。地層の広がる第五門。崖の下から突風が吹く第六門。一面が凍りついた第七門。龍のオブジェが2つ並んだ第八門。
4人はそれらの門を潜り、チャンピオンロードに足を踏み入れる。だがそこには
「嘘だろ……」
そこには、夥しい数のプラズマ団が待ち構えていた。



ついにここまで来ました。やっともうすぐで四天王戦ですよ。ですがその前にチャンピオンロードでプラズマ団を撃破……するかどうかは、次回分かります。ちなみにイリスのポケモンは原作よろしく、チェレンが回復しています。では、次回もお楽しみに。