二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 143章 尊き気持ち ( No.305 )
- 日時: 2011/07/18 01:28
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)
- 参照: http://pokegai.jp/
「ジャローダ、グラスミキサーだ!」
ジャローダは尻尾を高速回転させ、木の葉の渦を作り出す。そしてその竜巻を横倒しにしたような渦を、ローブシンに向けて放つ。
「ローブシン、気合パンチで吹き飛ばすのだ!」
ローブシンは拳を構え、気合を溜める。そしてグラスミキサーが当たる直前に、拳を振り抜く。
「! 嘘だろ……」
するとローブシンの目の前にまで迫っていた渦は消え去った。気合パンチの拳圧で吹き飛ばしたのだろうが、規格外の威力だ。
「ローブシン、マッハパンチ!」
ローブシンは再度ジャローダに急接近し、高速の拳を放つ。
「かわせジャローダ!」
ジャローダは地面を滑るように移動し、その拳をかわす。しかしローブシンの目的は放ったコンクリート柱を回収する事なので、その目的を達成させてしまったのには違いない。
「くっ……だったら一か八か。ソーラービーム!」
ジャローダは体中に光を集め、それを凝縮させる。今は割かしライトの光が強いので、比較的早く溜まる。
「発射!」
そしてジャローダは極太の太陽光線を発射する。光線はまっすぐにローブシンに向かって行き、当たれば大ダメージか、戦闘不能になるだろう。しかし
「ローブシン、防御だ」
ローブシンはコンクリート柱を壁のようにしてソーラービームを防ぐ。しかも防御中も微動だにしないため、チェレンは驚愕する。
「どうした少年。お前の力はこんなものか?」
「くっ……」
チェレンは何も言い返せない。それほどに今の状況は切望的である。
「燕返しと叩きつけるは効果が薄い。グラスミキサーは通用しない。ソーラービームは防御される。となると、もう勝ち目は……」
チェレンの思考は絶望に沈みかける。しかし、一瞬だけ親友の顔が浮かび、思い留まる。
「……イリスなら、こういう時どうするかな……」
チェレンは考える。もしあの幼馴染なら、この状況をどう打開するかを。
「きっと、奇跡みたいな事を、起こすよな……」
チェレンは1つだけ思いついた。しかしそれが出来る見込みはほとんどない。ほぼゼロだ。しかし
「イリスに出来るなら、僕だって出来るはずだ。僕だって、伊達にイッシュを旅してきたわけじゃない」
チェレンはとりあえず様子を見る。ローブシンは傷は多少負っているものの、ほとんどダメージはなさそうだ。対するジャローダは、ほとんど満身創痍で、あと一撃でも入れば倒されてしまうだろう。
「ローブシン、投げつける!」
それを悟ったのか、ローブシンは硬くて重いコンクリート柱を2つ、ジャローダに向かって投げつける。
やるなら、今だ。
チェレンがそう思った時、彼の口は自然と動いていた。
「ジャローダ、ハードプラント!」
ジャローダはその指示を受け、甲高い叫び声をあげる。すると地面や壁から巨大な根っこや木の幹、蔦などが生え、急速に成長する。
また投げつけられたコンクリート柱は、太い根っこに衝突し、リングの床に落ちる。そして蔦が絡みつき、地面に落とされた。
「な、なんだ!?」
流石のレンブもこの光景には驚き、冷静さを失っている。
成長し終えた木々は一斉にローブシンに標準を定め、一斉に襲い掛かる。
「ぐっ……ローブシン、気合パンチだ!」
ローブシンは気合を溜め、強烈な拳の一撃を放つが、極太の木々には傷1つ付かない。
「なんだと……」
レンブは自慢のローブシンの気合パンチが通じず、絶句する。そうしている間にも、木々はローブシンを襲う。
「ぐぅ、もう一度気合パンチだ!」
ローブシンは再度気合を溜め、拳を放とうとするが、蔦が腕に絡みつき、拳を振り抜く事が出来ない。
「凄い……」
そしてチェレンはというと、壮大な光景に目を奪われている。
「ローブシン!」
木々は意思を持っているかのように自らの体をローブシンの体に叩きつける。根っこはローブシンの胴体を絞め、蔦は腕や足を絞めつける。
「ジャローダ、とどめのハードプラント!」
ジャローダは再び叫び、さらに植物を発現させる。出て来た木々はローブシンの体を叩きつけ、ついに戦闘不能にする。
「終わった……」
そしてチェレンは、満足そうに溜息を吐いた。
「最後のハードプラント、見事だったぞ、少年——いや、チェレン」
「それはどうも、ありがとうございます」
レンブはバトルが終わると、チェレンに称賛の言葉を投げ掛ける。それに対してチェレンはクールに言葉を返す。
「最強のポケモンなどいないし、ベストの組み合わせもない。それ故に勝ち続けることは難しい。これは師匠の教えだ」
「そうでしょうね。完璧で完全なものなんて、この世の中には存在しません」
レンブの言葉に、チェレンは同意する。この2人、意外なところで馬が合うようだ。
「だが強さを求める心、最強を知りたい気持ち。それをわたしは尊いと思う」
「…………」
次の言葉には、チェレンは返答に詰まる。だが、悪い意味ではない。
そしてレンブは最後に、今までで一番の清々しい表情で、口を開く。
「そしてわたしは、それを持っているお前を尊敬する。また拳を交える事を、待ち詫びていよう」
チェレンVSレンブ、終わりました。イリス時はダイケンキがハイドロカノンを会得したので、それと同じように今回はジャローダにハードプラントを覚えさせました。まあ、正直ゲームではあまり使う機会ないですけどね。では次回はお分かりになると思いますが、ベルVS四天王です。誰になるかは見てからのお楽しみに。