二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 最終章 離別 ( No.349 )
日時: 2011/07/28 11:52
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: GSdZuDdd)
参照: http://pokegai.jp/

「ゲーチス様!」
ゲーチスがサザンドラに乗り、飛び立ったその時だった。部屋にプラズマ団7幹部総員が流れ込んできたのだ。イリスは一瞬PDOの面々がやられたのか、と思ったが、そのPDOたちもすぐに部屋に入ってきた所を見るとそうではないようだ。
「レンジ、どうしました? 他の者もそんなに慌てて」
「ゲーチス様、俺たちはどうするんですか!?」
確かに、ゲーチスがここから逃げるという事は、他のプラズマ団は見捨てるという事。下っ端勿論、力を持つ幹部までも置き去りにされる。
「安心してください。ちゃんと考えてあります」
ゲーチスの言葉に安堵の溜息を漏らす幹部達。ゲーチスはそれを見つつ携帯端末を取り出し、そこからホログラムで何かを映す。
それを見た瞬間、その場にいる全員は驚きの顔となる。

映し出されたのは、7人の人間だった。それも……プラズマ団の紋章が付いた服装をしている。

「あなたがたはもう必要ありません。これからはこの7人が幹部となってもらいます。あなたがたよりもずっと強力な力を持つこの7人が。……そうですね、7P(セヴンプラズマ)とでも呼ぶとしましょうか」
「そんな……」
ゲーチスの言葉を聞き、幹部達——元幹部達は絶望と虚無に満ちた顔となる。
「では皆さん、御機嫌よう。ワタクシはプランΩの準備を進めて参ります。なに、安心してください。プランΩは準備も大変ですから、その間ワタクシは何も仕掛けません。それまで、残りの人生を有意義に生きる事です」
そしてゲーチスは、飛び去ってしまった。残った元幹部達は、ゲーチスに見捨てられた事を信じたくないのか、口々にこの事象を否定している。
「……いろいろあったけど、一番まずいのはゲーチスの野望がまだ潰えていない事だね」
チェレンはいつも通りの冷静な口調で言うが、覇気が感じられなかった。
「それに、あんなに強い7幹部のさらに上がいるなんて……私たち、大丈夫なんでしょうか」
ミキの顔も。かなり沈んでいる。
「大丈夫だよ。イリスがいればなんとかなるって」
唯一ベルだけがマイペースに言うが、やはり少し表情が強張っている。
「ところで、リオさんたちはどうしてここへ?」
イリスは気になっていた事を訊ねてみる。
「たまたま私が壊した壁際で戦ってたんだけど、そこからトルネロス、ボルトロス、ランドロスの三体が見えて、なにかまずい状況になってるのかと思って分断していた壁を燃やして皆を連れて上に上がったの。……まあ、その前に勘の良い元幹部が駆け出していったけどね」
つまり、リオたちはダークトリニィが出て行った辺りでバトルを中断し、ここへ来たようだ。
「……イリス君」
キリハが、イリスに呼びかける。
「それよりも、彼を」
そしてキリハはNの方を見る。Nはじっと、イリスを見つめていた。
「君の役目は、まだ終わってないよ」
キリハに押され、イリスはNの方へと歩み寄る。
そしてその場にいたイリスとN以外の者は、退室する。



「N……」
「イリス。君に話したいことがある」
Nは何かを決心したような表情でイリスに言う。イリスも頷き、二人は玉座のあったところへと歩いていく。
「君と初めて出会った、カラクサタウンでの事だ」
Nの声は、静かで落ち着いていた。
「君のポケモンから聞こえてきた声が、僕には衝撃だった……」
しかしどこか痛んでいるような、傷ついているようでもあった。
「何故ならあのポケモンは、君の事を『好き』と言っていた……一緒に居たい、と言っていたから」
Nはそれでも、痛み傷ついても、無理をして振舞っているように見える。
「……僕には理解できなかった。世界に人の事を好きなポケモンがいるなんて……僕はそれまで、そんなポケモンを知らなかったからね……」
イリスはその言葉を聞き、平和の女神の言葉を思い出す。

『Nは幼い頃から、たくさんのポケモンと触れ合ってきました。ですが、そのポケモンたちは全てゲーチスが集めたもの。それも、トレーナーに裏切られ、酷い傷を負ったポケモンだけを、Nに与えていました』

「それからも旅を続けるほどに、僕の気持ちは揺らいでいった……心を通い合わせ、助け合うポケモンを人ばっかりだったから……だからこそ自分の信じていた物が何かを確かめるために君と闘いたい……同じ英雄として向き合いたい。……そう願った」
そしてNは玉座のあった場所、今はもう破壊された壁だけが残る場所へと歩む。
「ポケモンの事しか……いや、そのポケモンの事すら理解してなかった僕が、多くのポケモンと出会い、仲間に囲まれていた」
Nの顔は沈んでいるようにも、喜んでいるようにも見える。
「君に敵うはずがなかった……」
そしてNは、何もない空へと向かう。
「僕は考えたんだ、僕に何ができるか。僕はプラズマ団という組織に属し、悪行を行ってきたと言っても過言ではない。……ゼクロム」
Nはゼクロムを呼び、空へと向かわせる。
「僕は自分の罪を償いたい。清算し切れるものじゃないだろうけど、僕は僕にできる精一杯の事をしたい。だから……君とはお別れだ」
「N……!」
イリスは手を伸ばすが、Nはそれを拒む。
「イリス!君は夢があると言った」
そしてNは、静かに弾ける雷のような声で、言った。

「その夢……叶えろ!その夢を実現し、君の真実とするんだ!イリス!君ならできる!」

「N……!N!」
イリスは叫び、手を伸ばすが、Nはゼクロムに乗り、イリスの手は届かない。
「それじゃ……」
Nは覚悟を決めた顔で、イリスに言う。

「サヨナラ」

「N!」
イリスは叫ぶが、Nは行ってしまう。遥か遠くへと。



今回は礼のラストシーンでしたが、その前にいろいろありました。ゲーチスの言う新たな7幹部、7Pとかですね。では、これにてポケットモンスターBW 真実と理想の英雄は終了です、無事完結いたしました。え?これだけ振っといて終わらすな?分かっていますとも。真実と理想の英雄は終了しましたが、僕は次回作でゲーチスとの、プラズマ団との最終決戦をするつもりなのです。では、次はエピローグですが、次回作もお楽しみに……。