二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 21章 黒星 ( No.54 )
日時: 2011/04/13 23:58
名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)
参照: http:/BUENOSUAIRESU

4番道路。
そこは、砂嵐の吹きつける砂漠だった。
「砂嵐が酷いな、これ。ミキちゃん、大丈夫かい?」
「はい。大丈夫です、師匠」
運が悪い事に、今日の砂嵐は特に酷く、この辺りに住みついているだろうポケモンすら出て来ない。
「やれやれ、こんなことなら引き返しておけば良かった」
「そんなこと言っても後の祭りですよう。同意はしますけど」
同意はするらしかった。
「どこかに民家とかないかな。あれば砂嵐が弱くなるまで休ませて欲しいよ」
「ここまでの道中に1軒ありましたけど、たぶんこのまま進んだほうが早いです」
「なら、そうするとしよう」
それから、2人は黙々と砂嵐の吹き荒れる砂漠を進んでいった。

「参ったな……もう方向感覚も狂ってきた……」
「ですね……」
重ねて運が悪い事に、砂嵐は強くなる一方で、もう一寸先も見えない状態だ。
「ふう、こうなったら仕方ない。出て来い、ワシボン」
イリスはボールからワシボンを出した。
「ワシボンを出してどうするんですか?」
もっともだった。
「僕のワシボンの特性は鋭い目。用途は違う気がするけど、ワシボンならこの砂嵐の中でも十全に周りが見渡せると思うよ」
「なるほど」
そう言ってミキはメモを取ろうとしたが、砂嵐でどこかに飛んでいってしまった。
「さあ、行くよ」
飛んでいったメモを追おうとしているミキの首根っこを掴んでイリスは先に進んでいく。

イリスとミキは、ワシボンの特性、鋭い目によって砂嵐の中でもスイスイと進むことができた。
「師匠の発想も凄いですが、ワシボンの鋭い目はもっと凄いですね!」
「いや、ワシボンが居てこその発想なんだけど……」
イリスは軽く傷ついた。
と、その時。ワシボンが鳴き声を上げた。
「ワシボン、どうしたの?」
するとワシボンは、翼を前方に向ける。イリスは目を凝らして前方を注視すると、人影が見えた。
「お前がイリスか?」
その人影はいつの間にか近くに寄って来て、開口一番にそう言った。
「そうですけど、あなたは……!?」
イリスは近づいてきた人物をよく見ると、左腕が無いことに気がつき、目を剥く。
「私はメイルだ。……出て来い、アーケオス」
メイルは、手短にそう名乗ると、ポケモンを繰り出してきた。
「アクロバットだ」
イリスは再び目を剥く。いや、目を疑った。アクロバットならサンヨウジムのデントのヤナッキーが使用していたから知っている。目で追うのがやっとなくらい高速で動いて攻撃する技だ。しかし
「!? ワシボン!」
メイルのアーケオスは、その場から動かず、否、視認できないほどのスピードでワシボンを倒し、もとの位置に寸分違わず戻ったのだ。
「何だ今の……? 全く見えなかった……」
イリスは呆然と立ち尽くし、ミキは本能的な恐怖心で固まっている。
「こんなものか……」
まるで死んでいるような、そんな目でイリスを見据え、そう吐き捨てる。
「! まだだ、出て来いデスマス!」
イリスは怒りに任せてポケモンを繰り出す。
「アーケオス、アクロバット」
だがやはり、デスマスはアーケオスのアクロバットで瞬殺された。
「ズルッグ!」
冷静な判断力も失っているのか、アーケオスと相性の悪いズルッグを繰り出す。
「アクロバット」
ズルッグはワシボン、デスマスの様に高速、もしくは光速のアクロバットで倒される。
「ゲーチスが油断なら無いと言うからどんな奴かと思いきや、とんだ雑魚だったな」
「ゲーチス!? お前、プラズマ団か!」
「いや、私はプラズマ団ではない。時々ゲーチスに頼まれて動くだけだ」
「プラズマ団の加担者ってことか……フタチマル!」
イリスは最後の望みにフタチマルを繰り出す。逆転してくれると、勝利へ導いてくれると信じて。
「アーケオス、アクロバット」
「フタチマル、シェルブレード!」
アーケオスは一瞬消え、フタチマルは居合い抜きのようにホタチで薙ぐ。
バタリ
倒れたのは
「フタチマル!」
フタチマルだった。
「戻れ、アーケオス。……ゲーチスが危険視し、Nが興味を持ったトレーナー。この程度だったか」
メイルはアーケオスをボールに戻すしそう言うと、長い銀髪をなびかせながら砂嵐の中に消えていった。
「フタチマル……みんな……」
バタリ
先ほどのフタチマルの様に、イリスは倒れた。
「師匠ー!」
硬直から解放されたミキが、倒れたイリスに駆け寄る。

このメイルという少女との一戦で、イリスのこれまでの戦歴に初めて、黒星が刻まれたのだった。



まず最初に。不思議のプレートさん、1番最初にオリキャラを投稿してくださったのに、出すのが遅れてすいません。これからはなるべく出していくつもりです(もちろん他の方々のオリキャラも出させて頂きます)。さて、お詫び申し上げたところで、軽く本編の説明です(今回は本編が短いからあとがきがたくさん書けます)。今回はイリスが負けるお話です。初めて負けます、ボロ負けです。……イリスに誹謗中傷をするのはやめて、次回予告です。次回はジム戦ですが、イリスがスランプに陥ります。お楽しみに。