二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 23章 友情の策戦 ( No.59 )
- 日時: 2011/04/15 00:36
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)
- 参照: http:/BUENOSUAIRESU
今日はライモンジムにて、チェレンのジム戦が始まる。
チェレンはコースターに乗り込み、バトルを開始している。
一方イリスは、観覧席に座りチェレンのバトルを観ながら考えていた。
「……チェレン」
チェレンは、昔から生真面目な奴だった。
僕やベルが何か失敗する度に、文句を垂れるが、それと同時にさり気無くアドバイスもしてくれた。
ベルには全く効果が無いようだが、僕はそれに感謝していた。
チェレンは気難しいところもあるが、良い奴なのだ。
だから、昨日の様に冷たく突き放すような事は言わないはず。そういう奴なはずなんだ。
なのに……
「ハトーボー、燕返し!」
チェレンは、足場の悪いこのフィールドには、地に足を着けるポケモンより、飛行していたり浮いているポケモンの方が有利だと思い、相性では不利なハトーボーを繰り出している。
「エモンガ、ボルトチェンジ」
「ハトーボー、見切り!」
エモンガの撃ち出した電撃を、ハトーボーはかわす。
「ボルトチェンジはどんな形であれ、当たらなければ交代はしない。見切りは、カミツレさんの目まぐるしく交代するポケモンへの対抗策です」
頼んでもいないのに説明を始める。チェレンの癖だ。
「どうやらそのようね。エモンガ、スパーク」
エモンガはハトーボーに電気を纏いながら突っ込んで行く。
昨日はジムに負けたのを実力不足だとか言おうとしたが、本当は違うと自分で分かっている。
怖いのだ、ポケモンバトルが。負けるのが。
原因も分かっている。あのメイルというトレーナーに手も足も出ず、一撃も攻撃を当てられず、敵の攻撃も見えず、惨敗したからだ。
僕は旅に出てから今までポケモンバトルで負けたことは無かった。でも、これからも負けることはないと思ったことは無い。いつかは負ける時もあると思っていた。負けたら負けたで、もっと鍛えて強くなれば良いと思っていた。
でも、それはとんだ思い上がりなのかもしれない。
実際に負けを実感すると、バトルの時にどうしたら良いか、どれが最善の行動で、どうすれば勝利することが出来るのか、分からなくなる。
僕はポケモントレーナーとして、もうやっていけないのだろうか……
「エモンガ、アクロバット」
「ガントル、鉄壁!」
チェレンとカミツレのバトルは、ハトーボーがエモンガを倒し、2体目のエモンガに挑発をし、メロメロを封じてガントルと交代になった。
「ガントル、パワージェム!」
ガントルは光る宝石の様なものを無数に撃ち出した。
「エモンガ、エレキボール」
負けじとエモンガも電撃の玉を放って対抗する。
「イリス、僕のバトルを観るんだ。そうすれば、もしかしたら……」
チェレンは、イリスの方を見ながらそう呟いた。
チェレンもメイルというプラズマ団側のトレーナと戦って、負けている。チェレンは自分からそう言った。
僕も負けた。僕はそれによっていつも通りのバトルが出来なくなっている。今やポケモンを4体使ってミキちゃんと互角の状態だ。
でもチェレンは、いつも通りに策を練って戦いに臨み、いつも通りに策戦通りにバトルを行っている。
……僕は情けなさ過ぎる。
チェレンは負けても立ち直り、むしろその負けをも活用している。
僕は負けたら立つことを諦めている。たった1回負けただけで全てが終わるわけが無いのに、終わったような気になっている。
僕にはまだ、光があって、理想も掲げられて、真実を追い求めることができる。
まだ、先があるんだ。
「ジャノビー、グラスミキサー!」
「ゼブライガ、充電」
ガントル対エモンガ(♀)とのバトルは、ガントルのパワージェムとエモンガのエレキボールが同時に当たり、互いに戦闘不能となった。
「ジャノビー、叩きつける!」
「ゼブライガ、ボルトチェンジ」
ジャノビーが飛び上がって尻尾を叩きつけようとすると、ゼブライガが電撃を放った。ボルトチェンジは手持ちが1体の時は強力な攻撃技として使えるのだ。
「草の誓!」
「ニトロチャージで突っ切って」
チェレンとカミツレの戦いは長期戦になっている。だがそれは、チェレンの考案した2つの策の1つだった。
僕はチェレンのように器用じゃない。負けや失敗を成功に繋ぐことは出来ない。
でも、省みることは出来る。負けても、鍛えて強くなって、次は勝てば良いんだ。
僕はもっと強くなれるはずだ。ポケモンと、仲間がいれば。
と、イリスの顔つきが変わったところで、チェレンの1つ目の目的は達成された。
そして、2つ目の目的も、もうすぐ達成される。
「ゼブライガ、ワイルドボルト」
「ジャノビー、グラスミキサー!」
ゼブライガが弾ける電撃を全身に纏い、突進してくるのを、ジャノビーはグラスミキサーで迎え撃つ。
「ジャノビー、蔓の鞭だ」
しかし本当は、グラスミキサーは目くらましであって、本命は蔓の鞭である。
蔓で足払いを受けたゼブライガは、真っ逆さまにレールから落ちた。
「チェレン」
「イリスか」
先日とは逆に、ポケモンセンターのベンチに座っていたチェレンに、イリスが話しかけた。
「昨日と、今日はありがとう。おかげで目が覚めた」
「ありがとうって、僕は何もしてない。君を突き放して、カミツレさんとバトルしただけだよ」
ちなみにチェレンはカミツレからバッジを貰った。つまりは勝ったのだ。
「今日のバトル、僕のためにわざわざ長引かせたんだろう?」
「……君には敵わないよ」
「そんなことはないよ。僕は君に助けられた。ありがとう」
「そんなの、当たり前だろ。僕らは幼馴染で、仲間で、親友だ」
「だよね。だから、さ」
そう言ってイリスは右手を上げる。
「……こういうのは性に合わないんだけど、こういう時くらいは、いいかな」
そう言ってチェレンは立ち上がり、左手を上げる。
パシン!
2人のハイタッチが、2人の心の中に響いた。
一方ミキは
「師匠とチェレンさんが、良い感じに……」
仲間はずれになっていた(あとベルも)。
イリス、脱スランプです。イリスの心の中での独白は初めてです。バトルシーンは地味でしたね。さてさて次回はイリスのジム戦リベンジ。バトルシーンは長くなるのでたぶん2回に分けます。お楽しみに。