二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 28章 辻斬り ( No.65 )
- 日時: 2011/04/17 15:41
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)
- 参照: http:/ARUGRIZMU
ワンダーブリッジ。
イッシュ4大大橋の1つで、最も美しいのが特徴の橋。
断崖絶壁の崖に架かっている橋で、橋自体もさる事ながら、橋の下を見下ろした際に見える景色は絶景だという。
「すまんねえ。今、ワンダーブリッジは点検中なんだよ」
作業員らしきおじさんにそう言われ、イリスとミキはガックリとうな垂れる。
「そ、そんな……」
「あんまりです……」
イリスとミキは、最も美しいと触れ込みのワンダーブリッジを一目みたいと、ここ16番道路まで足を伸ばしてきたのだが、点検中らしくすごすご引き下がる事になった。
「はあ……見たかったなあ、ワンダーブリッジ」
「はい……」
結局ワンダーブリッジを見ることが叶わなかったイリスとミキは、ライモンシティに引き返す途中だった。
「師匠、帰ったら何しますか?」
「正直、今日はワンダーブリッジを見る予定しかなかったからね。どうしますか……」
帰ったら何するかを考えながら、イリスは向こう側から歩いて来る少女とすれ違う。その瞬間
「!」
しゃりん
金属の擦れ合うような、そんな音がした。
しかしそれは、ただの金属が擦れあったのではなく、刀と鞘が擦れ合った音、鞘走りの際に生じる音だった。
ただ、そんな音が鳴るということは、必然的に刀が抜かれたということで、その刀で何かを切ろうとしている訳である。この場合、何を切ろうとしているのかが重要である。今この場には、イリス、ミキ、少女の3人しかいない。刀を振るったのは少女。刀の軌道はイリスを切り、ミキにまで届く。
まあ、長々と語ってはいるが、要するにイリスとミキはいきなり刀で切りつけられた訳である。しかし
「あっぶねえ!死ぬかと思ったぞ!」
寸でのところで、ミキを抱えて回避した。
「ていうか何で刀!? この時代に刀振り回す人間がいるなんて夢にも思わなかったよ!」
しかしここでツッコミを入れる辺り、笑いのセンスがあるのかもしれない。
「あ、ああ。またやってしまいました……すいません。つい、癖で」
「癖で!? 僕ら癖で殺されそうになったの!? 何でそんな癖があるの!?」
錯乱状態なのか、イリスはツッコミを連発する。
「あ、あの、師匠。お、降ろしてください……」
ミキが顔を真っ赤にしてイリスにそう呼びかける。ミキは切られそうになったところで、イリスに抱えられ、無傷だったが、代わりにベクトルの違うダメージを受けたようだ。ちなみにミキはイリスに抱えられてるというより、抱き抱えられていて、イリスがミキを胸の前あたりで、横向きの形で下から支え、手はミキの膝関節の裏あたりと背中を支えるという形だった。
即ち、お姫様抱っこ。
「ん? あ、ああ、ごめん」
悪びれた感は無いがそう言って、ミキを降ろす。
しかしイリスはミキの心情を理解しておらず、いきなり抱き抱えられてびっくりしてるのだと思っていた。
「先ほどは失礼しました。私はアカリと申します。シンオウ地方のカンナギタウンという所から来ました」
「あーえっと、僕はイリス。しがないポケモントレーナーだよ。こっちはミキちゃん。僕の弟子だ」
互いに自己紹介を終えたイリス、ミキは、さっきの辻斬りについて訊ねてみた。
「実は、お恥ずかしいことながら、道端でたまに人を切ってしまう。いわゆる辻斬りの悪癖がありまして……」
「やっぱり癖なんだ、あれ」
「本当に申し訳ありません」
「いや、いいよ。別に何とも無いし……あ」
その時イリスは、自分の着ている上着の袖がざっくりと切れている事に気付いた。恐らくさっきの辻斬りでの刀傷だろう。
「あ、上着……切れてますね」
「別に大丈夫だよ。あとでポケモンセンターに戻った時にでも、縫うから」
「いえ、そういう訳にはいきません。ちょっとご拝借します」
そう言って流れるような動きでイリスの上着を手に取った。
「って、あれ? 僕今までその上着着てたような……?」
「師匠、そんな細かいこと気にしてたら何にもなりませんよ」
「細かいことかな……?」
そうこうしてるうちに、アカリはどこからか裁縫道具を取り出し、上着を縫い始めた。
「……上手いね」
「ええ、こういうのは、得意なんです……痛っ」
アカリは手元が狂ったのか、針を指に刺してしまった。
「大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
しかし、指からはドクドクと血が出ている。
この後も、アカリは何度か指に針を刺したのであった。
「泥棒ー!」
上着の裁縫が終わるや否やどこからかそんな叫び声が聞こえてきた。
「!?」
イリスが振り返ると、そこにはプラズマ団と思しき人物が数人いた。
「プラズマ団、またポケモン泥棒してるのか。追うよ、ミキちゃん!」
「はい、師匠!」
そう言うや否や、イリスとミキは走り出す。
「プラズマ団? どういう団体なのですか?」
一緒に付いて来たらしいアカリが、走りながら訊ねる。
「端的に言うと悪い奴ら!」
本当に端的だった。
今回は黒影さんのご投稿してくださったオリキャラ、アカリを出させてもらいました。なお、この話は次回も続くので、お楽しみに。