二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 40章 恋する男チャールズ ( No.85 )
- 日時: 2011/04/25 16:21
- 名前: 白黒 ◆QpSaO9ekaY (ID: /LylQYeE)
- 参照: http:/ARUGRIZMU
「ん……」
イリスが目を覚ますと、そこはベッドの上だった。
「やっと起きたね、イリス」
イリスの横には、チェレンがいた。
「チェレン……ここは……?」
「ポケモンセンターだよ。にしても、君は最近よく倒れるね」
「……ごめん」
「別にいいよ、これくらい。それより、君の容態だが」
「容態?」
「そう。まあ、あんな寒いところに半袖でずっといて、ヒヒダルマの熱気やら、バトルでの疲労やらが蓄積して、風邪を引いたらしい」
「…………」
それを言われて。イリスは自分が冷凍コンテナから出たところで倒れたのを思い出す。
「あのあと、大変だったよ。君をここに運んだ後、ジム戦をしようとジムに行ったら、プラズマ団のゲーチスがいたからね」
「ゲーチスが!?」
イリスは声を荒げる。
「落ち着きなよ、過程は説明してあげるから」
そう言って、チェレンは語りだした。
ホドモエジム前。
ここには連行されたプラズマ団がいた。(もちろん見張りもいる)
「ヤーコンさん、誰か来ました」
「ああ?」
ヤーコンが眉根を寄せてそう言うと、ゲーチスを先頭に、大量のプラズマ団がジムまでやって来た。
「初めまして。ワタクシはプラズマ団のゲーチスと言います。仲間を引き取りに来ました」
「いやなに、あんたらの仲間がポケモンを盗もうとしていたんでな」
「これは心外ですね。ワタクシ達プラズマ団は、ポケモンを解放しようとしているだけですが」
「どうだかね。ワシは正直者故に言葉が乱暴だ。対するあんたの言葉はキレイだが、どうもキナ臭くてな」
「まあ良いでしょう。で、どうします? ワタクシ達はその者たちを助けに来ただけです。もし仲間の救出を邪魔するのであれば、少々乱暴な手段を行使しますが」
「……ふん、分かった。こいつらを連れてきな」
「流石鉱山王と呼ばれしホドモエのジムリーダー、状況を見る目に優れてらっしゃる」
「はん、戦わずして勝ったあんたらの方が、よっぽどすごいがね」
「それはどうも。……皆のもの、こちらに来なさい」
そう言ってゲーチスは、レドたちを招き寄せる。
「すみません、ゲーチス様。俺の失態でこんなことに……」
「良いのです。同じポケモンを解放しようとするプラズマ団の仲間ではありませんか。それでは、行ますよ」
「はい」
そうして、プラズマ団たちは町から出て行った。
「……そんなことがあったんだね」
「ああ、ヤーコンさんのお陰で、街中でのバトルを回避できた。あの人、結構凄い人だ」
「チェレンは、ジム戦したの?」
「もちろん。そして、勝ったよ」
チェレンは口元を綻ばせながら、そう言った。
「……ところでチェレン、ミキちゃんは?」
「…………」
チェレンは「聞かれてしまった」みたいな顔をし、やがて口を開く。
「正直、君の弟子の方が深刻だね」
「どういうこと? もしかして、ミキちゃんも風邪を引いたとか?」
「いいや、違う。彼女、どうも自分のせいで君が倒れたと思っているみたいで、かなり落ち込んでる」
「……そう」
イリスは納得いかなかった。あれは自分が勝手にやったことであり、ミキが責任を感じる必要はないと。
しかし実際問題、ミキは自分のせいだと思っている。
イリスはベッドから起きようとするが
「まだ起きるな。今君は、かなりの高熱のはずだ。寝て安静にしてろ」
「でも……」
「それとも君は、自分の弟子に風邪を移したいのか?」
「…………」
そう言われると、イリスは黙るしかなかった。
一方ミキは、まだ若干落ち込み気味ではあるが、次の行動をしていた。即ち、薬を買ってくることだ。
ミキは、自分のせいでイリスが風邪を引いたと思っている。なら、自分がその風邪を治すべきだと考え、薬を買って来ようと思った。幸い、ホドモエシティにはホドモエマーケットというものがあり、そこでは漢方薬なる薬も売っているらしい。それを買って、イリスの風邪を治そうというのだ。
「ごめんね、さっきチャールズって人が全部買い占めてしまったんだ」
ミキは絶望の極みみたいな顔をした。
「そんな。あ、あの、私、今すぐ薬が必要なんです!」
「と、言われてもなぁ。在庫はもうないし、次入荷するのも結構先だし……」
漢方屋のおじさんは困ったような顔をする。
「何とかなりませんか……?」
ミキは涙目で懇願する。それが効いたのか、おじさんは1つ提案する。
「なら、買い占めていったチャールズって人に分けて貰いなさい。あの量の漢方薬は正直多すぎる。あれを全て投薬すればむしろ体に悪いからね」
そう言って、ミキとおじさんはバイクに乗ってチャールズを追いかけた。
「あ、いたよ。あの男だ」
漢方屋のおじさんが、前方にいる、バイクに乗った男を指差す。
「……何であの人、平地で徐行運転してるのでしょう……?」
「さあ……?」
謎である。
おじさんは慣れた手つきで男の前に回りこみ、男の運転を中断させる。
「ちょっといいかな」
「……さっきの漢方屋の」
「ちょっと君に用事がある子がいてね、さあ下りて」
ミキはそう言われ、バイクから下りる。
「じゃ、あとは頑張って。僕は店番があるから」
そう言っておじさんはバイクで走り去っていった。
「……何の用だ?」
男、チャールズは見た感じ悪そうな感じだった。だが、ミキは勇気を振り絞り、声を出す。
「私は、薬が欲しいんです。だから、あなたの薬を分けて貰えませんか?」
ミキの勇気を振り絞った言葉に、チャールズは
「……俺は恋する男、チャールズ。惚れた女が風邪を引いて、寝込んでいる。だから俺は、薬を届ける。あんたには悪いが、これを渡すことは出来ない」
ミキの願いを断った。
「そこをなんとか!」
しかしミキは引こうとしない、そこでチャールズが条件を付けてきた。
「……だが、全くチャンスがないというのも可愛そうだ。俺とバトルして、あんたが勝てば薬を分けてやろう」
かくして、ミキ対チャールズの戦いが始まるのだった。
今回は知る人ぞ知るチャールズを出してみました。次回はミキとチャールズとのバトルです。あとがき短いですが、次回をお楽しみに。