二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜心に灯る星〜 ( No.548 )
日時: 2011/10/08 07:17
名前: 夜桜 (ID: KY1ouKtv)

 <明日のための物語>

 「凍える心に」

ずっと、ずっと貴方の事を見てきた
貴方の背中を見ていた
貴方の背中を追いかけていた

貴方の“幸せ”が私の“幸せ”だった
だから、貴方が私を見てくれなくても良かった
ずっと、貴方が憧れだった

ずっと、貴方が--------------------好きだった



「………」
負けた。正確に言えば引き分け
だけど、それは私達にとっては負けと同じ
皆、部屋に閉じこもったりしている
部屋から出ていても何も映っていないような虚ろな目
彼は皆の前には出てこなかった

私の目の前には
座り込み泣き崩れる仲間

「グス…何でっ!?私達はアイツ等より強い!なのにっ何でぇ!!!」
「…もう、ジェネシスの候補から…私達、ダイアモンドダストの名は消えた」
「仕方が…ない…。引き分け…は負けと同じ…だもの」
「クララは悔しくないのっ!!!!私達にはもうっ!」
アイシーが力を籠めて言う
「…悔しいわよっ!でも…どうしろっていいの?私達は…」

負けた-----------私達にもう、チャンスなどない

彼も落ち込んでしまったのだろうか
彼が一番苦しんでいるのではないのか?

私達は二度目の敗北を味わった
ダイアモンドダストとプロミネンスの混合チーム
『カオス』として挑んだが
試合途中グラン様に止められた

途中で止めるなんて負けと同じ。点数なんか関係ない

また、あの時の光景が目に映る



私は一人で星の見える場所にいた
はっきり言ってベランダ
夜は寒いからめったに人は現れない
今は私だけだ
私は誰にも泣く顔を見られたくなかった
だから、ここで

「…なんで…どうして……。」
泣きながら呟いた

「!」
足音が聞こえ、慌てて隠れた
そこに現れたのは私がもっとも尊敬し、私の憧れ
ガゼル様だった

ガゼル様が泣くところなど見たことがない
昔ならともかく、エイリア学園となってからは…一度も
「…クソ。私達は----------------」
暗くて周りは見えないがガゼル様の頬に流れる雫はよく見えた

「どうしたのですか?ここは冷えますよ」
私はガゼル様に話しかけた
隠れてガゼル様を見るのが辛かった
一番辛くて苦しいのはガゼル様なのに…
ガゼル様は驚いたようにこちらを見る
「クララ…どうして、ここに」
私は出てきそうになる涙を堪えて微笑んだ
「ここから見る星空は綺麗ですから」
「…そうか」
「ガゼル様はどうしてですか?」
少し『ビクッ』として答えた
「わ、私もだ」
「そうですか、一緒ですね」
絶対に違う。泣くためにいたんだ

私は試合の敗北を隠すように笑っていた

二人して星を眺めていると
「どうしてだ」
「…何がです」
ガゼル様の顔が険しくなった
「どうして笑っていられる?悔しくないのか?」

私からさっきまでの『笑顔』は消え
自分でもわかるぐらいに氷のような冷たい表情になった
「…悔しいですよ。だって私達は負けたのですから」
私は感情の籠っていない声で言う
「でも、悔しがっても何も始まらない。だから、ですよ」
最後は作り上げた笑顔で言った
「いい加減にしろ!!!」
さっきまでとは違う、声に顔に驚いた
「…無理して、笑うな。泣きたいなら泣け…泣いてもいいんだ」
その言葉を言いた途端に今まで我慢していた雫が溢れだした
「あ、アレっ?おかしい…あれ?」
不思議だった。いくらぬぐっても、止めようとしても
とめどなく溢れてきた
ガゼル様は私の頭を撫でた
「私は今までこんなにも“弱い”少女に守られていたのか」
“弱い”その意味が強さの事でないのはすぐに分かった
「グスッ…ご、ごめんなさい…!!私は、あっ」
ガゼル様が私を抱きしめた
「すまなかった。今まで我慢させて、無理させて」

「弱さを見せてもいい。否、見せてくれ」
今まで見てきたガゼル様の中で、一番優しい顔をしていた
「…あ、ありがとう…ございますっ…」
「泣きたいだけ泣け。私がお前を受け止める」
一瞬驚いたが自然な笑顔を作る事ができた
「…はい」

「ガゼル様。ガゼル様も弱さを見せてもいいんですよ」
「っ…!!」
「ガゼル様が一番辛くて、苦しんでることは分かっています。だから」
「…私、は」
「大丈夫です。見せてください。私はガゼル様の力になりたい」



たくさんの星が流れた
私達の心にも
凍えた心に暖かなモノが広がるのが分かった
今まで感じたことのない優しくて暖かなモノ