二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブン〜心に灯る星〜 ( No.94 )
日時: 2011/06/04 13:10
名前: 夜桜 (ID: KY1ouKtv)

   三十九話 「本当の名前}

扉には息の荒い少年ー鬼道がいた
その後ろから髪の長い少年ー風丸が
そらの元へ駆け寄る
「大丈夫かっ?」
「一郎太…え、ええ」
続いてかがりが駆け出し
男の腹に膝蹴りをし、首にチョップをした
それは、ドラマのワンシーンのような…
男はその場に倒れこんだ

少女は座り込み、この光景を茫然と眺める
鬼道は少女に近づいた
「大丈夫か」
その問いに少女は…
「………」
震えていた
「…お前、名前は?」
少女は無表情のまま鬼道を見上げた
「名前?」
「あるんだろ?」
「…り。…。ゆうり…」
「ゆうり、か。ゆうり大丈夫か?」
”ゆうり”は無表情のまま涙を流した
鬼道にすがりながら。
それは迷子の子供が親を見つけて泣き出すように

「…あり、がとう。…ずっと”ゆうり”と呼んでほしかった…の」
ゆうりは泣きながりそういった


それが少女の…”ゆうり”の始まりだった



〜ゆうり視点〜

死ぬんだ…そう直感した
『怖い』という思いもあったが
『喜び』もあった
もう、ウソをつかなくていいから

もう、自分を偽らなくていいから

だけど…死ななかった

開いた目の前に映ったのは落ちた刃物
驚く父の姿
息の荒い少年
転がるボール






”私”にその少年が聞いた
「名前は」−と
それはずっと聞きたかった言葉

「ゆうり」−と
私は答えた

「ゆうりか。ゆうり、大丈夫か」
『ゆうり』
それはずっと聞きたかった
ずっと…。待ち続けた言葉
ずっと、無くしていた”私”の名前

泣いた。ものすごく泣いた
こんなに泣いたの何年ぶりだろ?
お母さんがお姉ちゃんが死んだとき
以来だったかもしれない

彼は、彼らは”私”を見てくれた
きっとこれから先も

今度会うときは少しでも違う”私”で
『ゆうり』として

とても穏やかで、温かい気持ちになれた

ありがとう

本当にありがとう

「”ゆうり”でいられて幸せだよ。ありがとう」


ここから、”ゆうり”は始まる
ここから、始めるんだ