二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【ボカロ曲小説集】色蝶の行く先ぷらす参照600超え!!? ( No.193 )
- 日時: 2011/05/10 21:16
- 名前: 藍蝶 (ID: 3i70snR8)
- 参照: 名前の読み方は「らんちょう」だぜ!「あおちょう」でも可←
Ж第2話
「はい!今日は皆さんお待ちかね、卒業式ですね。町長さんとかも来るから、粗相の無いようにね!」
その後一回咳払いをし、真面目な顔になった。
「もう一度いいます。今日は貴方達3年生の卒業式。9年間の小等、中等学校での生活を過ごしてきました。
『義務教育』はこれで終わりだから、このまま社会へ出る子もいるでしょう。
そこで、きっと沢山失敗をおかすと思います。そんな状況に陥ったら、思い出して。」
すると、少し間を置き、また喋り出した。
「人それぞれ、皆個性は違うものです。完璧に見える人でも少しくらい何かが欠けてる。そういうものでしょう?
だから、『自分は何も出来ない』、『役に立たない』……そんな事思わないで。
たとえ何かが欠けてても、何か出来る、得意な事はある筈。それを生かして。無い物を欲しがっても何も手に入らないけれど、手を伸ばす努力はとても良い物。だから、忘れないで」
先生は真面目な顔から一変、何時もの笑顔に戻った。
「長い話し聞いてくれてありがとね!………あら、桜!綺麗ねぇ!!」
フッと開いた窓から桜が入って来た。同時に、私達の記憶が流れ出す。
男子とがむしゃらに50メートル走を土埃上げて走りまくった校庭。
一時期太って、制服が窮屈になり着崩したり。
机の上に相合傘で私と海翔の名前を彫られたり。
全部、全部私達の思い出だ。
先生に誘導され、体育館裏に来た。
<卒業生、入場!>
体育館で響いたその声は私達を舞台へと引き寄せた。
白紙の答辞には、伝える事は出来ない。
全ての思い出が私の涙腺を狂わせ、「涙」と呼ばれる生温かい水が頬をつたう。
あの時の私は、本当に幼くて。
交通事故で死んだ彼氏の事で悩んでいるめぐちゃんに対し、私はデリカシーの無い事を言ってしまった。
自殺しかけた理由を彼女が怒りだすまでずっと「何で?」と軽いノリで言い続けた。
少しくらい今の私は大人に近付けたのかな。
<卒業生、退場>
放送が流れ、何時しか卒業式は終わってしまった。
「皆!おっかえり!卒業証書、渡すわね」
先生が言い、一人ずつ卒業証書が渡されていく。というのも、この学年人数が少ないのだ。
全員に証書が行きわたった頃、一人の生徒が声をあげた。
「わぁ!桜、教室に入ってきたぁ!!」
窓側を見ると、確かに校舎の真横にある桜の木の花弁が散り、こちらの教室に入ってきていた。しかも大量に。
「まぁ、綺麗ねぇ。こんなに入ってきたら花見気分でお酒が飲みたいわね」
皆が笑う。私も皆の笑顔を見て、口が綻びいつしか笑いだしていた。
「皆で集めようぜ!」
一人の男子生徒が言ったのをきっかけに、クラス皆が花弁を集め始めた。あろうことか先生まで参加した。
一つ、花弁を拾いじっと見つめた。
その花弁は何処か悲しげで、でも、それでも精一杯笑っている様な気がした。
「皆、ちょっと花弁貸してくれないか!?」
言いだしたのは海翔。言われるがままに皆が海翔に集めた花弁を渡し始めた。
もうそれは改めて凄い量であって、海翔の顔が見えない。
途端に海翔がその花弁を振り上げた。
教室に満遍なくそれは散り、雨の様になった。目を輝かす者も入れば、愕然とした表情の子もいた。
私はどちらでもなかった。
ただただ、ゆっくり舞い散る花弁が綺麗で、美しくて…………見惚れた。
「また集めなきゃ〜」
「もう、海翔君何するのかと思ったら!」
「すげーな海翔!豪快だったぜ〜」
「俺の頭桜の木になってる!!」
皆色々言いながら、また花弁を集め始める。
愕然とした者は居ても、怒る者はおらず不思議に思った。
と同時にこう思った。
この花弁の様に、私の事を忘れないでほしい。
私は小さな小さな存在だけど、
一人じゃないから………そう、信じたいの。
第2話 終わり