二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【ボカロ曲小説集】色蝶の行く先ぷらす*悪ノシリーズ連載中*  ( No.320 )
日時: 2011/05/23 22:48
名前: 藍蝶 (ID: 3i70snR8)
参照: 蘭拓ハスハs(((((

第2話


「う、そ…………」


二人は、仲むつまじく手までつないで………。
どうして、どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてぇっ………—————————

二人の会話が自然と耳に入る。

「———とても———だったわ。さすが———の人。見とれちゃった」
「ふふ、そうでも————。確かにアイツは————がな」

所々抜けていた会話でも、私の中から湧いてきた感情は”嫉妬”しか無かった。


そのまま万屋にも戻らず、私は我が家、仕立屋”巡音”に戻った。

うっすらと眼に涙をためて。


  <チャリンッ>


店の裏口に入って畳に財布を落とし、私はそのまま体ごと畳に崩れ落ちた。


「何でッ………何であの人と貴方が仲良さそうに………!うわぁぁぁ!!」


思いっきり体を伸ばすと、何か柔らかく少しザラついた物が手に触れた。
顔をあげると、それは紅く鮮やかな着物。

 —————————————あの女と、同じ着物———————————

それが、どうしてこんな所に?

見渡してみると、隙間風で飛んだのか着物から少し離れた所に、文が置いてあった。

『この着物の、縫い直しを頼む   斬丸』


あぁ、そうなの。
わざわざ貴方は、自分から浮気を告発しちゃってるの。
そう、そう……………———————————————————


黙って着物を手に取ると、私は戸棚から裁縫鋏を取り出し、無造作に切り始めた。

   
        <ザクッ………ザクッ……チョキン………>


はぁ、この鋏はよく切れる。
母からの唯一の形見。
でも母はその時こう言った。
   「この……魔………触れ………いかん……」
どういう意味なのか、未ださっぱり分からない。
でも、この鋏を持っていると、不思議と快感に襲われる。
二つの意味で、手放せない、大切な鋏。


「…………あ!い、いけない、私………依頼の品に………なんて事!」

正気に戻り、無残に切られた着物を救うようにかき集める。

「どうしましょう………どんな言い分も、思いつかない………針、針、糸糸………」

着物をじっと見つめながら近くに転がっていた裁縫箱を開け、針と糸を探る。

「あら………?なんで無いのかしら………あぁ!よく思えば私、買いだしに行ってたのよね!早く行かなきゃ!」

投げ込んだ財布をパッと手にとり、走って万屋まで行った。

案の定此処のお婆さんは待ちくたびれて、座椅子に座り昼寝していた。

「す、すみませ〜ん。お婆ちゃん、お咲ですよ〜」

何回か言っていると、お婆ちゃんは目を開けて、下駄を履き、ちょこちょこコチラに向かってきた。

「お咲ちゃん、待ちくたびれたよ〜。ホイ、いつもの通り針5本、糸は3種類ね。十文だよ」
「はい、お婆ちゃん。ありがとうね」

店に戻れば静寂が保たれていて、畳の上には切り刻まれた紅い着物、放っておいたままの裁縫箱、そして鋏。

「う〜ん。これは、大変そうで………」

私は、苦笑しながら我が家に入り、戸を閉めた。


第二話 終わり