二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【ボカロ曲小説集】色蝶の行く先ぷらす*悪ノシリーズ連載中* ( No.377 )
- 日時: 2011/07/19 20:25
- 名前: 藍蝶 (ID: UgVNLVY0)
- 参照: 手首痛ぇ……何かこう、ジンジンする……
第6話
「また女が殺されたよーっ!」
まぁ、なんて事。
三夜連続で女が殺されるなんて。
一体犯人は、誰なのかしらね?
<コトン>
裁縫鋏を畳に置き、先程まで縫っていた着物をバッと広げる。
「やっと出来たわ!……うん、良い出来ね。満足してくれるかしら?」
縫い残しや糸を残してないか、よく確認する。
うんうん、何にも(多分、ね)やり直しはない。と、いう事は……
「終わったわ!全部、終わったわ!」
ちまちまと溜まっていた小さな仕事。
後で、後で。そう言っているうちにどんどん積み重なっていく仕事に困り果て、
期限はまだまだだけど、日は早く落ちちゃうもの。
そのまま、依頼品片手に依頼主の家片っ端から周り、家に帰れたのは真夜中。
そういえば、貴方は今日真夜中見周りをするって言ってたね?
赤い着物着て、
緑の帯しめて、
黄色い簪さして。
貴方が自分から中々会いに来てくれないというのなら、
コチラから、
会いに行きましょう……—————————
服装全て、貴方好みよ?
ねぇ、振り向いて頂戴?
その刀、地面に置いて頂戴?
「初めまして、こんにちは?」
どう、私綺麗でしょう?
私に惚れてよ?
他の女よりもずっと綺麗よ?
「君、夜の出回りは危ないよ。特に女性なんだから、家に帰りなさい」
小さい子に言い聞かせるみたいに言わないで?
それに、殺されるのは女だけじゃあないのよ?
私は帯に隠していた裁縫鋏取り出して、
貴方が地面に置いた刀踏みつけて、
貴方の黒い着物の上から裁縫鋏を思いっきり、
刺した。
今日は昨日片づけたお仕事のせいで無くなった糸と布を買いに町まで来ていた。
一度外へ出てみると町はもう大騒ぎだった。
近くにいた雪と名のる女の子に聞いてみると、今度は男の人が殺されたそうで。
人だかりの真ん中には、殺された男がいるとの事。
殺された人をよってたかって見て、何が面白いというの?
お雪ちゃんは、話を続ける。
「でねっ、でね。殺されちゃった人達って、皆家族だったんだって!怖いね」
家族全員を殺されたのか。なんて可哀想に。
「そう……可哀想ね……」
私は曖昧に答え、その場を去ろうとした。
だって、お雪ちゃんは…………
「雪様!いけませんよこんな所に来ては!危ないでしょう!?さ、早く城に戻りましょう!」
やっぱり来た。
お雪ちゃんは、この町をまとめる統領のような存在の男の愛娘。
その”殿様”が可愛がりまくるものだから、雪様はこの町では有名。
近くに世話係がいなかったから、もしやと思ったらやっぱり隠れて来ていたのだ。
「やだよー!白、離してよぉ!」
白、と言われる女の腕を逃れようと暴れまわる雪様。だけどまぁ、所詮は小さい子供。
大の大人に敵う筈が無いので、逃げる事は出来ない。
「駄目ですよ、このお白、縁臨家に仕えて十年。失敗しては駄目なのでございますよ」
雪様を軽々持ち上げて、城へと戻る彼女。
生まれつきなのか歳なのか定かではない白髪を揺らす。
まぁ、これはどうでもいいのだけれど。
今日はあの布屋で両方買う事にした。
「女将さん、この布と糸、ください」
「はいはい、これね。ざっと一貫文だよ」
「値が張りますね……はい、これで足ります?」
一貫分渡して、女将さんとちょっとした世間話。
「そういえば、すぐ近くの通りでまた人殺しがあったんだってね」
「えぇ、人だかりになってました」
「家族四人殺されるなんて物騒な人殺しもあるんだな……」
長い世間話が終わり、家に戻った。
それにしても、本当に犯人は残酷な人よね。
「初めまして、こんにちは?」なんて……
まるで、他人みたい。
他人みたいじゃない…………
だけど、まぁ引きずっていてもしょうがないわ。
帰りの途中引き受けた依頼。頑張らなきゃね。
布を左手で支え、鋏を右手に一生懸命。
血のように赤く染まった裁縫鋏、研げば研ぐほど、よく切れるのよ……————————?
第六話 終わり 完結