二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【ボカロ曲小説集】色蝶の行く先ぷらす*悪ノシリーズ連載中* ( No.402 )
- 日時: 2011/06/04 12:00
- 名前: 藍蝶 (ID: 3i70snR8)
- 参照: http://www.youtube.com/watch?v
∮第1話
「お母さ〜ん!ネムの様子がおかしいの!」
とある場所、とある時間。
一人の少女は家畜の牛の前で人を呼ぶ。
その牛は、大きな体を小さく蹲らせ寝込んでいた。
少女はというと、かなり焦っている顔をしていた。
「ラヤ!ネムがどうしたの!?」
その声を聞いて、豚小屋から飛び出してきた少女の母、ラム。
「えとね、えと、ずっと蹲っているの……」
長丈のスカートの一部をギュッと握りしめ、状況を説明し始める少女、ラヤ。
すると、しばらくネムという牛の腹をさすっていたラムが微笑んだ。
「?……なんで、笑ってるの?」
困惑の表情で、ラムに聞くラヤ。答えはすぐ返ってきた。
ラムは笑顔を崩さず、
「ネムがね、妊娠したのよ」
「ほ……ホント!?」
二人共笑顔。ネムも笑っているように、幼きラヤには見えた。
すると家から誰かが走ってきた。
「おかーさーん!ミルク温めたよぉ〜」
ティトル家の唯一の男の子、ラグ。
「そう、じゃ、ちょっと戻ろっか」
日常。
平和で、平和。
500年以上、この国は争いもなく平和。
元々小さな国な為、あまり狙われない……というのもあるが、存在自体気付かれてないという事もある。
でも、平和は永遠にある物じゃない。
そんな事にも気付かず、平和と信じファト族達はこの地に留まっている。
「…………?」
布を買おうと、おつかい途中のラヤが近道の裏路地で足を止める。
この地では見慣れない靴の足跡が何処かに続いていた。
子供ならではの好奇心が湧いたラヤは、それを辿る。
しばらく行くと、”立ち入り禁止!−ストップ−”と書かれた看板が道を阻んだ。
でも確かにこの先に足跡は続いている事に、ラヤはゾッとした。
母から聞いた、この先の秘密。それは
『あの道を通るとね、怖ぁい大蛇が出て来るのよ〜!一瞬で《ガブッ》よ!』
もう少し前の話であるが、未だにラヤはそれを信じていた。
「怖いよぉ……此処に入ってった人、食べられ……ちゃったのかなぁ?」
おつかいの籠を抱きしめて、震え上がるラヤ。結局その場を去る事にした。
その時。
≪なぁ、ホントにこの国攻めるのかよ?≫
≪はっ、知らねぇよそんな事。聞いただけだし≫
「え…………?」
看板の先から聞こえた微かな声。
振り向いてみても、誰も、何もいない。
「ふ……ぇ……怖いよぉぉぉ!」
遂にはその場から逃げ出してしまった。
∮第1話 終わり