二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【ボカロ曲小説集】色蝶の行く先ぷらす*悪ノシリーズ連載中*  ( No.405 )
日時: 2011/06/05 16:06
名前: 藍蝶 (ID: 3i70snR8)
参照: まだパジャマっす。

∮第2話


「ふえぇ……お母さん……こ……怖……かっ……」

あの後全力で逃げてきたラヤはネムの世話をしていたラムに思い切り抱きついた。

「あらぁ……どうしたの?ラヤ」

ラヤの頭を撫でながら、優しく聞く母。

「あのねぇ……あのね……ヒック、グシュッ、立っ……入……禁止のとこ……ヒック、からぁ……声ぇ……!」

泣きじゃくりながら必死に状況説明するも、あまり母には伝わらない。

「?声?……聞き間違いじゃないかしら?」

そう言ってラヤを離し、ネムの世話に戻って戻ってしまった。

「でっ……で……も」

反論を試みるが、ラヤはシュンとなって家へ入っていった。


一ヶ月後の夜。

「にしても、最近物騒……ねぇ。立ち入り禁止の場所へ近づいた人が銃弾の音と共に、死んじゃうなんて……」

丸太で組まれた壁に掛けられた小さなカレンダーの7日目に赤いマジックで「×」と書き、
その横に「16人目」と小さく書いた。
ふぅ、と溜息をつくとロッキングチェアにストン、と座った。

「あの森に、誰かがいるのかしら。銃弾なんて……この国では見かけないし」

肘をつき、眉を顰める。

「(もしかしたら、500年の平和が、途切れるのかもしれない)」



次の日。



東の空が、真っ赤に燃えていた。


朝日なんかじゃない。燃える炎。

何者かが、セブラティオの首都レーゼントに火を点けたのだ。


        <カンカンカンカン!>

「大変だぁー!何者かが攻めてきたぁぁーーーー!!」

村の鐘が、激しく鳴り響くと同時に色んな人の悲鳴が聞こえる。

《キャアァァ!》《逃げろぉぉー!》《そこをどけぇっ!》《おぎゃあぁぁぁ!》

「お母さんっ!ラグっ!私達も逃げよう!」

ラムとラグの手を引くラヤ。その頬には、一滴汗がつたっていた。




それから、何時間経っただろうか?

セブラティオは、何処かの兵達によって完全に包囲された。

通る道には沢山の死体が積み上げられ、

赤いカーペットが所々に敷かれていた。


「お母さん……ラグ、怖い」
「大丈夫よラグ。ラヤも大丈夫?」

少し火傷を負ったラグは母に抱かれて蹲っていた。

「お母さんも、大丈夫?ずっとラグ持って走ってるのに……」

そう、ずっと3人は死体の山を掻きわけながら走っている。
赤い水溜りを踏んで、それが頬に飛び散っても何も言わずに。

「大丈夫よ。ラヤこそ、大丈夫じゃないんじゃない?」
「ん、だいじょぶ。見つかって……ないから……その分、楽」

そう言いながらも息を切らしている。

「あ」

ラムがそう言って、近くにあった大木を指差す。

「少し、休みましょ?疲れてるんでしょう?」 

そのまま3人は大木にもたれ、切れた息を整え始める。


                <バンッ!>

横で、紅い鮮血が飛び散った。

「!ラグ!!」

ラグが、腹から血を流し横に倒れこんだ。

「まだ、ファト族が残ってたとはなぁ」

軍服をまとった数人の男たちが大木と私達を囲む。


頭の中が、真っ白になった。

∮第2話 終わり