二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【ボカロ曲小説集】〜本日晴天なり〜 ( No.41 )
日時: 2011/04/20 16:51
名前: 藍蝶 (ID: 3i70snR8)
参照: http://www.youtube.com/watch?v

第1話 


トタタタタ………


小さな小道で、小さな音がする。
そこには、一人の少女が走っていた。

白い帽子にワンピース、淡い桃色のカーディガン。
地面に足がつく度、彼女の金髪が風で靡く。

手には、文字が書かれた一つの紙飛行機を持っていた。


「ハァッ……ハァッ……」


一度止まり、また走り出し、また息を切らし止まる。


彼女は無理をしているのだ。


しばらくたって、彼女は言った。


「すみませぇ〜ん……」


実に弱弱しい声であった。

でも、その声を聞き、一人の少年が緑色の壁の様に積もる雑草の山から顔を出した。

「あっ……今日も来てくれたんですね!」

彼は彼女と同じく、綺麗な金髪だが、服装もなにもかもが汚れ、「汚い」と言われても仕方のない格好だった。
それもその筈、彼は「囚人」と言われる罪人だから。
此処は、刑務所。この少年、怜はとある罪を犯し、罰せられる為に捕えられた身なのだ。

さっきの彼の言動に対し、少女、真梨亜はコクンと頷く。
そして、掌にのせた紙飛行機を笑顔で見せ、怜に向かって投げた。

何故こんな事をするのかというと、真梨亜と怜の間には高圧電流が流れている電線がある。
うかつに触ると、感電死する。囚人の脱走はこれによって阻まれていると言っても過言ではない。

それともう一つ、真梨亜は少ししか喋る事が出来ない。手紙を紙飛行機に折って飛ばした方が遥に効率がよいのだ。

紙飛行機は電線を上手く飛び越え、怜の手に落ちる。

「よし、じゃあこっちも!!」

そう言って雑草の山から紙飛行機を一つ取りだした。隠していたのだろう。

「おりゃあっ!!」

勢いよく投げた………はいいが、電線に当たって、燃え尽きた。
何回もやっていれば、少しくらいこんな事はあるだろう。
それでもまだ隠し持っていたらしく、もう一つ紙飛行機を出した。

「今度こそッ!」

願いは通じたらしく、紙飛行機は電線を超す。

ポトッと、真梨亜の手の中にそれは落ちた。


その時丁度見張りがやって来た。


怜は慣れた手つきで雑草の山に紙飛行機を隠す。


そのまましゃがんで、また雑草を抜き始めた。

あいている手で小さく手を振る。

真梨亜も見えないと分かっていながら、小さく手を振った。




これが、二人の、日常。