二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【ボカロ曲小説集】色蝶の行く先ぷらす*悪ノシリーズ連載中* ( No.410 )
- 日時: 2011/06/07 18:43
- 名前: 藍蝶 (ID: 3i70snR8)
∮第3話 (多分)ラヤ目線
「ラ……グ……」
こちらに向けて銃を構える兵士を無視してお母さんはラグを抱き寄せた。
地面が濡れては乾いていく。
でも、ラグから流れていく赤い液体は地面の上ですぐに乾く事はなかった。
「はっ、そんなに悲しいか?だったらもう一人の子供も楽〜にしてやるよ!」
口の悪い兵が私に重たそうな銃を向けた。
嗚呼、私は、ラグのいる所に行けるのかな?
「やめてぇぇっ!」
ほんの一瞬のうちに、お母さんが私の前へ庇うように来た。
駄目、お母さんも殺されちゃうよ!
あまりの恐怖に、私は思わず目を瞑った。
<バン!>
「……?」
血が、飛び散ってこない。
閉じた目を開けると、赤みをおびた美しい藍色の髪が宙を舞っていた。
理解は少し遅れたけど、どうも兵は口だけじゃなく腕も悪いようで、当てる箇所を間違え
銃弾は横に縛っていたお母さんの髪の少量を道連れに大木に突き刺さっていた。
さて、ここからどうしよう?
行動は考えるよりも早かった。
「お母さんっ!早く逃げようっ!?」
そう、逃げなくてはいけない。
「でも、ラグがぁっ!」
すでに息絶えて青白くなっていくラグの手を、お母さんはしっかり握っていた。
「くそぉっ!」
<バンッ!バンバンバンッ!>
「はぐっ!」
腕の悪い兵士はヤケになってでたらめに撃ち始めた。
私には当たらなかったが、弾の一つはお母さんの左肩貫通していた。
「お母さんっっ!!」
お母さんは撃たれたと同時にその場へ倒れ込んだ。
それを見て兵士は鼻でフンッと笑い、再び銃を構えコチラに向けた。
今度こそ終わる!
<バンッ!>
…………は?
撃つ音は確かに聞こえたけど、弾は、何処?
兵士の方を見てみると、銃を見て慌てたような表情と仕草をしてから
「おい!誰か銃弾……あれ?」
よく見ると此処には兵士が一人しかいなかった。
その時私は幼いながらも悟った。
あぁ、見捨てられたな、と。
というのは冗談で、女3人なら簡単に殺せるだろうという周りの判断だと思う。
「あ〜クソっ!まだ慣れてねぇのにっ!」
と言いながら不器用に弾を詰め始めた。
「お、お母さんっ!早くぅっ!」
お母さんを揺さぶるが、歩こうとも、立つこともしなかった。
「お母さん殺されちゃうよォォ!!」
そこで、やっと母が口を開いた。
「ラヤだけで逃げなさい!」
「え……!?やだ、やだよお母さん死んじゃう!」
泣きじゃくりながらまた揺さぶり始める。
それでも、それでもお母さんが動くなんてことはsなかった。
「おい!新人どうしたんだ!」
「あ!まだ二人残ってるぞ!」
「殺せぇぇぇぇ!!!」
<バンッ!バンバンッ!バンバンッ!>
兵士達がこっちに向かって走ってくる。
その時、私はお母さんに背中を強く押された。
「…………い」
「ふぇ……?」
「逃げなさい!逃げて、逃げて……貴方だけでも、幸せになりなさい!」
「でも……」
「いいからっ!」
その今までに聞いたこともないような力強い声で、私をいかせようとするお母さんの威厳に負け、
私は走りだした。
「…………っ!」
一度だけ、振り向いた。
そしたら、お母さんが地面に押さえつけられていた。
頭に、銃の先をつけられていた。
それでも私は走った。
そう、逃げたんだ。
先に起こる事が分かっているから、走っていながら耳を手で塞いでいるんだ。
<バンッ!>
「っ……いやあぁぁぁぁぁぁ!!!」
振り向いちゃいけない。
振り向いちゃいけない……———————————
何かが落ちる音がした、
何が、落ちたんだろ。
私は枯れる程涙を流して、
近くにあった大きいトラックというらしい乗り物の荷台に飛び込んだ。
——————今日、私は大切な物全て失いました————————
∮第3話 終わり