二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【ボカロ曲小説集】色蝶の行く先ぷらす*悪ノシリーズ連載中* ( No.414 )
- 日時: 2011/06/08 18:08
- 名前: 藍蝶 (ID: 3i70snR8)
∮第4話
<ガタンッ……ゴトンッ……>
ずっと、ずっとトラックの中は揺れる。
積み上げられた段ボール箱が、一つ落ちてきた。
「……痛っ」
頭の上に落ちてきたのでそれなりに痛い筈なのだが、何故か、あまり痛いとは思わなかった。
積み上げてきたもの全て、一瞬で失ってきたからだろうか。
涙は枯れた。
アレ程泣けば泣きやんだ今、また絞り出す事は出来ない。
そんな涙も、2、3日したらすぐ蘇る。
そういう物だ。
先程のように今にも崩れてきそうな段ボール箱の壁に、もたれかかる。
トラックの中はホントに暗い。
隙間風が容赦なくラヤに当たり、正直寒い。
私は思い出す。
母が教えてくれた”あの国”の事。
『ラヤ、ラグ、月音って国知ってる?』
カンテラの鈍い光が照らす部屋の中、お母さんが当然言ってきた。
『え〜知らな〜い』
その”月音”という言葉に興味を持たなかった私は、積み木で遊び続ける。
『何それ?ラグに教えてぇ〜』
哺乳瓶を弄んでいたラグは、知りたがり。だから瓶を投げてお母さんに抱きついて「教えて」とねだる。
しょーがないから私もついでに聞いとこーと思っていたけど、
『ふふ、良いわよ。ただし、ラグだけ、ね?』
にこやかな顔で、お母さんはちらりと私の方を見やる。
……のには気づかず、ムカッときたので、
『ラグだけじゃダメ!私も知りたいっ!』
その時お母さんが一瞬ニマッと笑ったのを覚えてる。
ハメられたらしい。
『月音っていうのはね。この国から遠く遠く、まぁた遠くの国なの。でもね、そこはとても平和で皆幸せなんだって』
『ラグ達のお国よりも平和なの?』
『そうよ。とーっても平和』
正直信じられなかった。
自国以上に平和な国があるなんて、知らなかった。
そもそも、その頃の私はセブラティオが全てなんだって思ってた。
『行きたい!ツキネに行きたい!』
『ラ、ラグもぉ!キツネに行きたい!』
私はともかくラグは月音を並び替え狐にしていた。
『ふふ、いいわよ?お母さんね、月音語知ってるのよ。教えてあげるわ』
その日から私はお母さんから月音語を習い始めた。
発音がゆっくりなので、少々早口になる事もあった。
特に読み書きが難しく、”平仮名”というのに50文字、”片仮名”というのに50文字……
”漢字”というのもあるらしくて、それは1000文字以上あるらしい。
それを出来るだけ私は覚え、書いたり読んだり言ったりした。
いつしか私はファト語よりも月音語の方が上手になっていた。
なんでこんな事を思い出したかって?
このトラックに”月音行き”と書かれてたから。
この月音語はとっくに習った字だったので、すぐに決断できた。
お母さんが教えてくれた”月音”でお母さんが言った”幸せ”になるって。
∮第4話 終わり