二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【ボカロ曲小説集】色蝶の行く先ぷらす トリノコシティ連載中  ( No.442 )
日時: 2011/07/10 18:57
名前: 藍蝶 (ID: UgVNLVY0)

∮第10話


私は、結局屋根裏部屋で寝る事になった(何とか交渉して)。
蜘蛛の巣が張ってて、鼠が動いてて、煤だらけで……
早くそれを忘れたくてすぐ眠ったけれど、朝が来るのはとても早かった。
地獄は続くのだ。
バランスさえ取れない。私はどうやって生きていこう。
昨日から給食以外なんにも食べていないから、お腹が空くのは当然……だっけ。

1階に下りると、もうすでに誰もいなかった。

時計を見るともう7時で、慌てて家を出た。
近くの景色を見ると全く知らないものばかり。もの珍しげに見る私を珍しげに見るおばさん達は多かった。
それで、自分だけが取り残されてる町って気がして、涙が出そうになった。
だからってそのまま素直になっちゃいけない事くらい分かってる。
全てが造られたこの学校までの道で、一杯、一杯考えた。

学校に着いて、自分の教室に入ると七生ちゃんが待っていた。
でも七生ちゃんの様子は普通ではなく、足元からカクカクと震えていた。
その手には……泥水の入ったバケツ。

「七生、早くやんなさいよ」
「で、で、でも……」

そう言って七生の肩を叩いたのは、塔宮(とうぐう)さん。昨日私に誕生日を聞いてきた女の子。

「な、何……?」

他にも仁王立ちしてる女子や男子が沢山居て、思わず怖気づいてしまう。

「何……って、アンタ分かってないのぉ?昨日さぁ、アンタ意味不明な言葉喋ったんじゃん?で、パソコンでググってみたの」

ぐ、ぐぐる……?何それ?

「そしたらねぇ、ちゃ〜んと出てきたよ?結果が。アンタ、









                  ファト族なんですってね」

頭の中が真っ白になった。
お母さんが月音語と共に教えてくれたこの世界での”違法”。

『月音ではね、月音人以外が許可を取らないでその場に住んでると、犯罪になるのよ』

そうだ、今、私がしてる事は、”違法滞在”という犯罪。
見つかったら即座に母国へ送られるんだって聞いた。
嫌だ、あの国には……悪魔達がいる。帰ったら、死ぬ。

「で、お父様に話したら『その国はもう侵略した国だからな、今更帰る所もないなぁ』だって。アハハ、アンタの国月音に負けたのぉ?」

…………え?
セブラティオが、月音に、負けた?
何それ、どういう事?

「あれぇ、分かんないぃ?あ〜そっかぁ。キャハハ、ファト族は月音を知らないんだぁ」
「し、知ってる!」

そりゃ、少しくらい知ってる。馬鹿にしないでよ。
ただ、攻めてきた人達がこの月音人なのか測りかねてるだけで……

「じゃあこんな事も知ってる?」

塔宮さんがそれだけ言うと七生ちゃんのバケツを引っ手繰った。
あっ、と小さな声を出す七生ちゃんを尻目に、私に思いっきり泥水をかけた。

「は……」

藍色の髪から、薄汚い泥水の滴がしたたり落ちる。

「この国ではねぇ、”虐め”ってもんがあるの。国に戻れないんなら、それなりの罰でも受けとけ!」

殴られる。蹴られる。体中が、痛い。

「かはっ……」
「あはは、気持ちいい?私の事をませてるって言う奴結構いるけど、別にこれならいいわよねぇ!」

バットで、思いっきり頭を殴られた。

「……っ!!!ぁぁぁああ!!」

あまりの痛みに耐えられなかった。
木製だったのは、きっと神様の救いなんだろう。

第10話 終わり