二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【ボカロ曲小説集】色蝶の行く先ぷらす トリノコシティ連載中 ( No.450 )
- 日時: 2011/09/02 23:42
- 名前: 藍蝶 (ID: BEaTCLec)
- 参照: 高校にテストあるのって?ごめん、俺小6なんだわ^p^
∮第13話∮
かりかり小さく木霊す様に延々としたシャーペンの音が教室の音を支配する。
期末テストとして、今私は必死に机の上に乗せられた薄っぺらい紙にかじりつく。
カチカチと教室の片隅に設置された時計が時間の経過を示す。……あと30分はある。
終わったテストを裏返し、机から分厚い本を取り出した。押し売りの代物だけど読んでみるのもアリだと思う。タイトルも深く見ずバッと適当に真ん中ら辺を開いた。
次の瞬間周りの景色がぼろぼろと視界の中で崩れ落ちた。ついでに本もなくなっていたのだが、気にせず思わず周りを見渡す。
白、白、白、白……白黒の世界。あ、黒は私の髪とか服とか。
まるでペンキで塗り潰された様な……異空間とか?冗談、本を読んでる間に寝ちゃって、その間の夢じゃないかな。
にしてもまるで感覚が掴めない。浮いてる様な気もする、地についてる気もする。
試しに私の足がついてる近くを指でつついた。
「あ」
指の周りに小さな、大きな波紋が広がっていく。大きくなりすぎた波紋は、ふっと消えた。
どーゆーことなの。
そう思った矢先、床がどっかのスクリーンみたいになってやっぱり白黒の、映像が映った。反射的に後ずさってしまうけど、知ってるよ、後ずさっても映像は見えるよ。
スクリーンと化した床(?)にぺたんと座りこむ。手をついた時に広がった波紋がとても邪魔だ。
そこに映るのは、幼い女の子とお母さんぽい人ともう一人の女の子……か?
声は聞こえないけど、いかにも幸せって感じする。笑ってばっか。苦痛を知らない、みたいな。
何だかよく分からない感覚が込み上げる。何これ。
……懐、かしい?
知らないわ、知らないわ、知らないわ。頭の中で何の理由もなくぶんぶんと首を振る。なのに、奥では映像にテストの時より強くかじりついているから、目を反らす事が出来ない。どうしよう、動けない、動こうって気も起きない。
そこでぱっと画面が変わった。銃を何発も連射して、沢山の人達が無に帰す。虐殺……?
さっきの女の子達が三人揃って駆けだす。黒い水溜りに恐怖を覚えながら、映像を見る。
途中で小さな女の子とそのお母さんが撃たれた。お母さんは大丈夫っぽいけど……
「あれ?」
ここで私の思考が停止した。
懐かしいんじゃなくて、見た事、ある……?
途端に聞こえる筈のない声が脳裏に響く。
『お母さんっ!早く逃げようっ!?』
『でも、ラグがぁっ!』
『くそぉっ!』
『はぐっ!』
『お母さんっっ!!』
『お、お母さんっ!早くぅっ!』
『お母さん殺されちゃうよォォ!!』
『ラヤだけで逃げなさい!』
……ラヤ?私の、名前……?考える暇さえくれず映像は続く。
『え……!?やだ、やだよお母さん死んじゃう!』
『殺せェェェェ!』
『…げなさい!あな……け……しあ……せ……な……い!』
『で……』
『い……らっ!』
あ……映像も、声も消えていく。
いつの間にか頬には大粒の涙がつたっていた。
厳重に鍵をかけていた箱の鍵が一つ一つ外され、開けられてしまった。
要らない、イラナイよ。
真実(こたえ)なんて要らない、偽り(ねつぞう)でいい……!
いつの間にか私はまた元の教室に戻ってシャーペンを握っていた。
勿論、白黒じゃなくて色もあるし、音も鳴っていた。
第13話 終わり