二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 悪ノ召使〜「君の笑顔を守るためならば」〜 ( No.118 )
- 日時: 2012/07/16 20:21
- 名前: 鏡猫 (ID: vDb5uiaj)
第4話 燃え上がる城
レンは、すぐに城に戻るとミクの返り血がついた服をごみ袋へ入れる。
それから、いつもの奇麗な作業服を着ておやつを作り始める。
いつもの慣れた手付きでおやつを作ること数十分。
3時には、少し遅れてしまったがブリオッシュが完成する。
それを、王女の所へ持って行った。
「すみません、おまたせしました。」
「あら、今日のおやつは何?」
「今日のおやつは、ブリオッシュでございます」
そういうと、リンはレンが作ったブリオッシュを食べ始める。
少しリンの顔がしぶくなってレンがまずかったのか
と尋ねるとリンは、無邪気に笑っておいしい、と答える。
そのブリオッシュは、少ししょっぱかったのだ。
数日たった後の事だ。
「レン。何か外が騒がしいわ。最近なんだか静かねって思ってたのだけど。」
「そう…ですね」
レンが、窓に近寄り外を見る。
外の光景。城に周りに奇麗に植えた木は燃え上がり噴水も止まっている。
周りは、赤く染まっている。革命が始まったのだ。
その中には、王女を裏切り、逃げてゆく大臣や家来の姿がある。
今、城の中にいるのはリンとレンだけだった。
「………貴方は逃げないの? レン」
「まさか。僕は、王女の召使ですよ? そんなことするはずないでしょう」
「それじゃあ命令よ。これが、最後の命令になるわね。」
「一体こんな時になんでしょうか?」
「ここからすぐに逃げなさい。裏道を教えるわ。だから、レンも早くここから。」
「何を言い出すのかと思えば。…嫌です、といったらどうします?」
「貴方を今すぐに処刑するわ」
「クスッ。処刑されるのは、王女の方ですよ」
「貴方も道連れにしてやるって意味よ」
「……その手がありましたか。そうですね。」
レンは、引き出しにしまってあるはさみを手に取り、後ろで少し縛れる程度の髪を切る。
「何をしているの? レン」
「僕が、王女になったらどうなるんでしょうね?」
「え?」
「えっと、確かここらへんに」
レンがクローゼットの中身を開けてリンのお気に入りのドレスを探す。
見つけ出したのか、一着取り出してそのドレスを着る。
「どうですか? 王女。王女そっくりでしょう」
「な、何遊んでるのよ!」
「遊んでなんかいませんよ。これは立派な作戦です」
「作戦って…レン、貴方!!」
「よく馬鹿な王女が分かりましたね。そうです。僕が王女になり済まして時間を稼ぎます。なので王女は…」
「ば、馬鹿っていったことは特別に許してやるわ。でも、そんなこと無理よ! いくら私達が似てるからって血も繋がってないのよ!! すぐにばれるわ!!」
「あ、そうですよね。王女もそんな格好をしていたらばれますよね。では、ほら。この僕の服を貸してあげますから。これを着てすぐにお逃げ下さい。」
「そ、そうゆう問題じゃないのよっ!! 今の状況を分かっていってるの!?」
「はい。リンほど馬鹿ではないので、それくらい分かりますとも」
「なっ! また馬鹿って!! 何度も言わないで!!」
「いや、リンは馬鹿だよ」
「馬鹿じゃないもん! 馬鹿っていう方が馬鹿なんだよ、バカァ!!」
「じゃあ、リンも馬鹿だね。」
「あ……リンは馬鹿じゃないもん! リンは馬鹿っていっても馬鹿じゃないんだもん!」
「それじゃあ速く僕の服を着てよ、リン。そうしたら馬鹿じゃないって認めてあげる」
「わ、分かったわよ。約束よ」
「うん」
「こ、こっち見ないでね!!」
「はいはい」
リンは、レンが後ろを向いたのを確認して着替え始める。
「やっぱりリンは馬鹿だよ……リンは……前とまったく変わらない。」
レンは、一人リンに聞こえないようにぼそっと呟き、涙をこらえる。
「き、着替えたわよ!!」
「クスッ貴方に命令よ。今すぐ裏口を通ってここから逃げなさい」
「何よ! この王女に命令するの!?」
「あら? 王女はどっちかしら? 貴方の服装からしてどうみても私が王女よね?」
「———っ!! レン!!」
「レンは、貴方でしょ。レン。何をいってるの?」
「違う、違う、違う!! 私がリンよっ!!」
「違くないわ。さぁ、逃げなさい。レン。」
「ばれちゃうよ! やっぱり駄目だよ! ドレスに着替えなおす!」
「はぁ、まったく。いつまでも気づかないんだから。リンは。でも、最初に会った時は、僕だって分かってくれたしいいか。」
「え?」
「馬鹿だなぁ。すぐに頭が昇るのもリンのくせだよね。僕はリンの知っているレンだよ。だからばれない。」
「え…駄目だよ…レン!!」
その時、部屋の外で声がした。
「中を探せ! 絶対見つけるんだ!」
「「「「「はい!!」」」」」
「ほら、リン隠れて。大丈夫。僕らは双子だよ。きっと誰にもわからないさ」
レンは、暖炉の中へと押し込む。
すると、リンはその暖炉の奥にある穴に落ちてゆく。
そう、ここが誰にも見つからない裏口。
秘密の通路。
「レェェェエエエエエン!!!」
「もう、うるさいな。そんな大きな声だしたらすぐに見つかっちゃうだろ。最後まで馬鹿だったな…」
「おい、こっちから声がしたぞっ!」
急に、部屋の扉が開きそこから革命軍が入り込む。
「見つけたぞ!!」
—これで、いいんだ。これで。彼女になんの罪はない。僕が一番近くにいて止められなかった僕の責任。
リンが悪なら、僕だって悪だから。