二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 悪ノ召使〜「君の笑顔を守るためならば」〜 ( No.119 )
日時: 2012/07/23 20:03
名前: 鏡猫 (ID: vDb5uiaj)

第5話 処刑の時間

強引に歩かされて牢屋にぶちこまれる。

「ちょっと! 何するのよっ!!」

僕が、本物の王女だと言う事は、まだ誰にもばれていない。
そう信じたい。というか、ばれるはずがない。
だって、双子だし。

…リン。きっと今頃泣いてんだろうな。
どうしてあんな簡単な仕掛けにひっかかるんだろ。
でもひっかかってくれてた方が嬉しかったかな。
うん。引っかかってくれたほうが、嬉しい…よ。

あれ? どうしてだろ。なんで涙が出てくるんだろ。
ひっかかってくれて嬉しいはずなのに。
いつもの遊びにまんまと騙されてくれたリン。
こんなにうれしいことは、ないのに。
どうして。どうして。どうして。どうして。

リン…。最後にリンの顔が見たい。
顔が見たいよ。
僕と同じ年齢のくせに王女になりやがって。
僕なんか、暗殺者に殺されかけて表面上では生きてないって事になってんのに。
でもあの時のリンの顔、すっごく可愛かったなぁ。
可愛かったけど、もうあんなリンの顔なんて見たくない。
笑ってくれていた方がもっと可愛いし。
ついでに胸ももっとあれば僕的には…

…はは、僕なんて事想像してんだろ。
こんなことリンにばれたらきっとはんぱなく痛いパンチが僕の顔に当たるんだろうな。

リン…リン…リン…。
会いたいよ。もう一度。死ぬ前に、君の笑顔が見たい。
僕のたった一人の可愛いお姉ちゃんの笑顔が見たいよ。リン…


コツコツと誰かがこちらへ向かってくる足音がする。
僕は、すぐに流れている涙を拭いた。

「お前を処刑する前に一度問う。」

「……」

今、何かいったらまた涙が出てきそうだ。

「本当に“王女”なのか?」

…!
まさか、勘づかれてる?

「なんという質問を問うのかしら。私は、あの黄の国の“王女”他の誰でもない」

「そうか。ならいい。もうそろそろ時間だ。いくぞ」

なんだ。よかった。確かめただけか。
大人しくそいつについていく。

「処刑する前に一言なにかいわせてあげよう。それまで何か考えとけ」

「今更何を…」

でも、いいかもしれない。
最後に、僕は王女じゃありませんでしたぁなんてばらそうか。
いや。それじゃあ駄目だ。今までの演技が全て無駄になる。
そしたら最後の一言も王女らしい言葉をいわなきゃな。
何にしようか。
リンが、処刑前にいいそうな言葉…

時がたつのは、速い。
きづけばもうすでに処刑台にセットされていた。

「今から王女の処刑を始める!」

あぁ、始まるんだ。僕の処刑が。
ふと、周りを見渡すと一番高い建物。あれは、教会かな。
そこの時計がもうそろそろ3時を指そうとしている。
そうだ。あれにしよう。

「何か言い残すことは?」

「そうね。」




「あら、おやつの時間だわ?」


処刑される寸前にリンの泣いている顔が見えた。
もし、気のせいじゃないなら。

—君は、ずっと笑っていて下さい。